転生したらドラゴンに拾われた

hiro

文字の大きさ
上 下
14 / 115
最果ての森編

13. お昼ご飯

しおりを挟む
「ジル、昼メシはなんだ?やっぱ動くと腹減るなー!」

「ぺこぺこだねー」

 これはツッコんでいいのかな?
 いいんだよね?
 君達、寝てたよね?

「サラダと肉とスープとパンだ」

 ジルが律儀に答える。すごくざっくりしているが。

「おおー!···おお?それだけじゃよく分からんな。ま、ジルが作るメシは何でも美味いからいいか!」

「そうそう、いつも美味しいよねー。体が伸びちゃうくらい美味しいー」

 スライムは美味しいと伸びるのか。

「そ、そうか。早く席につけ」

 喜んでる僕の父親、可愛い。
 身長二十センチでどう席につくのだろう。

「ふふ、じゃあ私はウィル君を抱えておこうかな」

「!」

 ジルがたっぷり数拍の間を置いて、僕をライの膝に乗せる。

「ふふふ、ウィル君、ふわふわだねえ。小さいねえ。可愛いねえ」

 さっき出来なかったからか、ここぞとばかりにライが僕の頭を撫でる。

「すぐ準備する」

 それを見てジルがものすごいスピードで動き始めた。目で追うのは早々に諦めた。

「おお、ジル急いでんなあ。珍しいな。そんなに腹減ってんのか?」

「違うよー、テム。ジルはね、早くウィルくんをかわいがりたいんだよー」

 ファムの解説が恥ずかしい。

 二人はどこからかクッションを集め、きちんと椅子にスタンバイしている。

「出来たぞ」

 早い。テーブルにどんどん料理が置かれていく。

 おお、美味しそう。
 ジルのイケメンスキルが料理の分野にも遺憾無く発揮されているのは、昨日食べたスープでも十分に分かっている。期待が高まる。

 全員揃ったところで、

「おいで」

 とジルに手を伸ばされた。

 『おいで』が頭の中でエコーする。
 な、なんだこの破壊力は。

「ふふふ、ジル、すっかりお父さんだねえ」

 満足したのか、ツヤツヤした顔でライがジルの膝に僕を乗せる。
 ふむ。僕の定位置だ。

「食べよう」

 ジルの言葉で、各々が食べ始める。

 サラダは、青々とした葉野菜が数種類に、細かく砕いた木の実のようなものが散らされている。横に置いてあるボトルは、ドレッシングだろうか。
 そういえば、家の周りに畑があったな。自分で育てているのだろうか。

「サラダ、食べてみるか?」

「あうあう」

 ジルに聞かれて頷く。

 細かくちぎった野菜にドレッシングをかけ、食べさせれくれる。
 野菜がシャキシャキだ。噛むとほんのり甘いから、糖度が高いのだろう。木の実はローストしてあるのか、香りが立っている。野菜と木の実がフルーティーなドレッシングと合わされば、何とも言えない上品な味になる。

「んー!あむあむ!」

 美味しくてもぐもぐ食べる。

「ふふ、ウィル君、美味しそうに食べるねえ」

 だって美味しいんだもん。

「本当だな!笑顔で食ってるの見ると、こっちまで嬉しくなるぜ!」

 テム、それは作った人のセリフでは?

「美味しいー。伸びそうだよー」

 おおう。ファムの高さが半分ほどになってる。クッションもう一つ必要なんじゃない?

 喋れるようになったら、僕はツッコミ係になるのだろうか。

「肉、食べるか?」

「あう!」

 食べたい!
 お肉からすごくいい匂いがしていて、それだけでも幸せな気持ちになる。

 これも細かく切り分けて、食べやすくしてくれる。
 僕も習得したい、このイケメンスキル。

「んー!」

 美味い!
 デミグラスソースのような複雑な味がする。お肉の味は牛肉に似ている。じっくり煮込んであったのかな?口に入れると繊維がほろりと解けて柔らかく、噛むとお肉に染み込んだ味がふわっと出てくる。
 ああ、幸せとはまさにこのことか。

「あー!あうあう!」

 スープは?スープも欲しい!
 目がギラギラしてるかもしれないが仕方ない。

 スープはあっさり目の味付けだ。数種類の野菜の旨みが感じられ、優しい味わいに飲むとほっとする。
 胃の容量を無視すれば、お肉とスープで無限ループが出来そうだ。
 そしてそこに穀物の香ばしい香りがするパンが追加されると、食欲が更に加速する。

 だが残念なことに僕は一歳児。お腹一杯になってしまった。

 ふー、食べた食べた。
 ぽんと膨れたお腹をさすっていると、眠気がやってきた。

「部屋で寝るか?」

 ジルが訊ねる。
 うーん、眠たいけど、もう少し皆んなと一緒にいたい。

 もぞもぞと体を反対に向けて、ジルのお腹にしがみつく。
 うん。この向きもいいフィット感。

 満足していると、優しく頭を撫でられ、すうっと眠りに落ちていった。



 その後の会話。

「ふふ、ジル、顔が赤くないかい?」

「あはは、ぷるぷるしてるー」

「なんだあ?腹でも痛いのか?」

「テム、違うよー。ジルはね、ウィルくんがかわいくて悶えてるんだよー」

「ほほう、そうなのか。ま、確かにウィルはちっこくて可愛いな!」

「お、お前ら、うるさい。ウィルが起きるだろう」

「ふふ、そうだね。静かに可愛がろうね」

「あはは、そうだねー。ジル、かわいいねー」

「ブハッ。可愛いのはウィルだろ」

「えー、どっちもかわいいよー」

「ふふふ、そうだね、どっちも可愛いね」

「お前ら···」

しおりを挟む
感想 380

あなたにおすすめの小説

Go to the Frontier(new)

鼓太朗
ファンタジー
「Go to the Frontier」改訂版 運命の渦に導かれて、さぁ行こう。 神秘の世界へ♪ 第一章~ アラベスク王国編 第三章~ ラプラドル島編

【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです

ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。 女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。 前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る! そんな変わった公爵令嬢の物語。 アルファポリスOnly 2019/4/21 完結しました。 沢山のお気に入り、本当に感謝します。 7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。 2021年9月。 ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。 10月、再び完結に戻します。 御声援御愛読ありがとうございました。

王女の夢見た世界への旅路

ライ
ファンタジー
侍女を助けるために幼い王女は、己が全てをかけて回復魔術を使用した。 無茶な魔術の使用による代償で魔力の成長が阻害されるが、代わりに前世の記憶を思い出す。 王族でありながら貴族の中でも少ない魔力しか持てず、王族の中で孤立した王女は、理想と夢をかなえるために行動を起こしていく。 これは、彼女が夢と理想を求めて自由に生きる旅路の物語。 ※小説家になろう様にも投稿しています。

世の中は意外と魔術で何とかなる

ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。 神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。 『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』 平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

選ばれたのはケモナーでした

竹端景
ファンタジー
 魔法やスキルが当たり前に使われる世界。その世界でも異質な才能は神と同格であった。  この世で一番目にするものはなんだろうか?文字?人?動物?いや、それらを構成している『円』と『線』に気づいている人はどのくらいいるだろうか。  円と線の神から、彼が管理する星へと転生することになった一つの魂。記憶はないが、知識と、神に匹敵する一つの号を掲げて、世界を一つの言葉に染め上げる。 『みんなまとめてフルモッフ』 これは、ケモナーな神(見た目棒人間)と知識とかなり天然な少年の物語。  神と同格なケモナーが色んな人と仲良く、やりたいことをやっていくお話。 ※ほぼ毎日、更新しています。ちらりとのぞいてみてください。

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

処理中です...