転生したらドラゴンに拾われた

hiro

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最果ての森編

9. 光

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 ここは、最果ての森。
 広大なこの森の深部に来る者はほとんどいない。森の奥へ行くほど、魔物が強くなるからだ。弱い者はたちまち狙われ命を落とす。

 俺は長いことここで暮らしているが、魔物が俺の拠点に近づくことはない。自分たちが狩られる側だと理解しているのだろう。
 日々の生活は静かなものだ。

 俺は今朝も、いつも通りの時間を過ごしていた。

 朝食を済ませ、畑の様子を見ていた。

 その時、少し離れたところで突然大きな魔力が発生したのを感じた。これまで変化のなかった森に突然現れたそれに警戒しながらも、未知の現象に好奇心を抱く。

 魔力の発生地まで飛ぶと、そこでは膨大な魔力が光を発し、渦を巻いていた。そしてその光の渦は一箇所に収束しているようだった。

 眩いまでの光が収まったとき、そこにいたのは小さな赤ん坊だった。
 黒髪だ。珍しい。
 自分と同じ色に親近感が湧く。

 目を閉じている。呼吸はあるようだ。
 ···眠っている?

「おい」

 反応がない。

「おい」

 瞼がピクリと動いた。

「おい」

 ようやくうっすらと目を開けた。
 黒い瞳。男の子だろうか。

「おい、大丈夫か?」

 ぼーっとした表情を浮かべている。

「おい、聞こえているのか?」

 目が合っていると思うのだが、反応がない。

「おい、どこか悪いのか?」

 半開きだった目がようやくぱちりと開いた。
 黒い瞳に反射する光が綺麗だ。
 キョロキョロしていて、どうやら自分の周りを確認しているらしい。可愛らしい仕草に庇護欲が掻き立てられる。

「あえ?···あう!?」

 声が出た。怪我なども無さそうだ。

「声は出るか。良かった···」

 急に現れた赤ん坊に訊ねて答えが返ってくるとは思わないが、一応聞いてみる。

「お前、家は?」

「あう?」

「···」

 純粋な顔でキョトンとされる。

 多分俺はこの子を保護する理由をつけたかったのだろう。

「お前、かなり弱っているようだから、俺の家に連れて行く。回復するまでいて構わない」

 不思議と知性を感じる瞳に、そう説明した。
 赤ん坊を腕に抱えると少しバタついたが、すぐに大人しくなった。

 赤ん坊はふわふわしていて、少しでも力を入れたらすぐに壊れてしまいそうだ。
 だがこんな小さな体に、膨大な魔力が渦巻いている。使い方を誤れば、周囲だけでなくこの子自身をも危険に晒すほどに。

 だから俺が近くで見ていよう。

「ここだ」

 赤ん坊を抱えて、家まで飛んだ。

「あうああうー」

 何と言ったのだろうか。急に連れてこられて不安になっていないだろうか。

「俺はここで暮らしている。ちゃんと面倒を見るから、心配するな」

 少しでもいいから安心して欲しい。

 先程無理に起こしてしまったからだろうか。また眠そうな顔をしている。

「しばらく寝ておけ。起きたら飯にしよう」

 あどけない寝顔を見ながら、この子の食事をどうしようかと考えた。

 変わらない日常が一変する予感に、心が踊った。
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