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1日目

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公園では子ども達が騒ぐ声が響きわたっている
そんな公園の近くにある一軒家

その一軒家は公園の近くにあるにもかかわらず、どこか不気味な雰囲気を放っていた

そんな家に一人の少年がいた
年は五歳くらいだろうか

外で元気に遊んでる子どもたちと対して年齢は変わらないようだが、少年は一人、布団にくるまっていた

何をするでもなく、ただぼんやりと天井を見つめていた


ピンポーン


静寂を切り裂くように玄関のチャイムがなった
少年はため息を漏らす

あぁ、また今日も来たのか

なんてありきたりなことを思いながら更に布団に潜る


「祈織くーん。いるー?」


女性の声が響く
けれど呼ばれたであろう少年……もとい祈織は無視を決め込む

ガチャ…


扉を開ける音と共に聞こえるのは廊下の軋む音とビニール袋の擦れる音

祈織は

また来たよ

と呆れ半分でそのまま布団に潜っていた


「祈織くん、居た」


障子を開けて顔を覗かせたのは黒髪の女性だった
年は20くらいだろうか?

整った顔立ちで、世間一般的には美人と呼ばれる部類だろう


「…また来たのかよ」

「来るって言ったじゃん」


苦笑いをしながら祈織の布団を剥がし、座らせた彼女は本田祈李。
新聞記者をやってるらしい彼女に祈織は少し不信感を持っていた

が…彼女のビニール袋から出されたものを見ると祈織の表情は無邪気な子どものような顔に変わる


「プリン!」


嬉しそうな声に祈李はクスッと笑い、袋から大きなプリンを出した
勿論コンビニなどで貰えるプラスチック製のスプーンと共に


「食べていいのか?」


待ちきれないと言わんばかりの祈織に彼女は頷いて
どうぞ、と促した


お預けをされていた犬の様に彼はプリンの上にかぶっている蓋をペリペリとめくり、すぐさまスプーンを突っ込む
プルプルと揺れるプリンをすくえば、口へと運んでいく

それを数回繰り返しただけで、通常より大きめだったプリンは無くなってしまった


「相変わらず早いねぇ」

「いや、このプリンが悪い。うますぎる」


ぺろりと唇に残った味を味わうように舐めとり、満足そうな顔で祈織は彼女へ向き直った


「で、またインタビューってやつ?」

「正解。祈織君だけがこのを知ってるからね」

「何度も言うけどさ、俺はそんなに覚えてないんだって」

「それでもだよ。覚えてることだけでいいの」

「……」


祈織は少し悩んでから小さくうなずき、彼女へ向き直った


「この前も言ったけどさ、やっぱり家族…俺の下の奴が死んだとこしか覚えてないんだよ」

「下の子って弟?妹?」

「んーー…覚えてねぇ」

「そっか…」


祈李は少し悲しげに俯いたが、咳払いをし、話を続けた


「じゃあ、事件の日、誰がそれをしたのか、覚えてる?」

「いや…全然…」


そう、祈織は一家惨殺事件の被害者の一人だった
けれど彼は見た目は5歳ほど…

そう、彼は成長が止まっていた
あの事件の日と同じ見た目のままこの家にいるのだった


これは本田祈李が祈織の家に起きた事件の真相を見つける物語だ








彼女は自分の人生が変わることをまだ知らない…
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