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2章 新生活と義兄の真意

慣れてきた頃の平穏

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新生活がスタートしてから数日がたった

案外快適で、暮らしやすい

学業も問題ないし、生活だって…
そう、義兄が予想外にハイスペックなのだ
私が宿題の途中寝てしまったときは、一番簡単な解き方が書かれた殆ど回答のような紙と、私の好きな冷たいカフェオレが置いてあったり

何かがなくなる前に補充されてたり、とにかくハイスペックすぎるのだ

イケ男も細かいことに気づいてたなぁ
なんて感心しながら、朝ごはんのトーストを咥え、久々のまともな休日に幸福感を覚える

「平穏が一番、だねぇ…」

ほのぼのと優雅な?朝食を済ませていると、雪愛が目の前に座る

「海愛さぁ、好きな奴いんの?」

ブフッ!!と食べかけのトーストを吹き出しそうになり抑え、結果むせ込む私

「げほっ!げふっ、な、な、なっ!」

「いるわけ、ないか。居たらこんな契約しないわな」

「し、失礼な!!居ますとも!」

つい、口からでまかせを言ってしまう
いや、全部が出任せなわけではないし、それにイケ男と言う(前世の)恋人がいるわけだし!?

「誰?」

心なしか、雪愛が不機嫌そうに見えた
気のせいだろうか?

「え、えっと!か、仮名でいい!?」

「まぁ、いいけど」

「い、イケ男」

私がそういった瞬間今度は雪愛が吹き出した
心底可笑しそうに

「っは、おまっ、センスの欠片もねぇっっ」

そう言って笑う雪愛はやはり私の好きなイケ男と重なる

「うるさいなぁ!いいじゃん!別に!」

「でも、イケ男ってっふふっ、あはは」

「もう!」

少し昔に戻ったと錯覚してしまうくらいに
私達は笑った

そして少し後悔した

近づき過ぎた、と


「逆に、雪愛はいるんですかー?」

すねたように言えば、雪愛は愛おしい人を思い浮かべたのか、とても優しい表情になる

「いるよ、とても大切な人」

刺さった。
刺さってしまった
わかっていた言葉、そうなるように応援しようとまで言ってたのに

少し苦しくなる

「そっか…いるんだー?人のこと言えないじゃん!だれ?」

聞きたくなかった、本当は
誰なんて答えられても笑顔で応援しなきゃいけないのに

辛かった…チクチクと胸が痛む
泣くな、そんな思いで、笑顔をはりつけた

「んー、可愛い人」

「そうなんだ?」

「うん、俺がずっと片思いしてる人」

嬉しそうに笑う雪愛に胸がさらに締め付けられる

 
「応援するよ!妹として!」

なんて


「ありがとな、海愛」

そっと撫でられながら、雪愛にバレないように私は泣いた…

いっそ、枯れて無くなればいい
涙なんて

そう思いながら




その日の夢は

私達が死んだあの日のことだった…。

悪夢なんて何年ぶりだろうか、そう思いながら、身を委ねた…
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