蔑まれた令嬢の幸せ -少女は幸せを探して旅をする-

桜月 翠恋

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冒険の始まり

いざ出発!

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準備も終わり、ダイさんに頭を下げ、シアンとともにあの家をあとにする

ほんの少しの間だったけど、ダイさんは私のことを本当の娘のように扱ってくれた

家では受けられなかった無償の愛、と言うやつだろうか?
とても心地が良かった


旅立ちにはもってこいの晴天
少しだけ浮足立ってしまう


「アリア、とりあえず最初はビードリール向かうけどいいか?」

「ビードリールですか?」


たしかビードリールは音楽が栄えている街だったはず…
この街から近いし、確かに最初の目的地にはいいかもしれない


「そうですね、そうしましょう」

「じゃあ決まり。道はこっちだ」


二人して他愛もない話をしてビードリールまでの道のりを歩く


「アリア、下がれ」


急に声色の変わったシアンに少し身構える
草かげからプルプルとした水のようなものが這ってくる

スライムだ


「こいつはまだ低級だとは思う。アリア、できるか?」

「やってみます…」


きゅっと短剣を握り、魔法の詠唱を唱える
じわじわと短剣に魔力が集まるのを感じる
瞳も少し熱くなる

風を刃にするイメージを頭に浮かべ、そして放つ


「スラッシュっ」


イメージよりは小さいものの風の刃がスライムを切り裂く

そしてスライムはサラサラと砂のようになり、消えていった…


「やったな。アリア」

「シアンがギルドから出たあと魔法の使い方を教えてくれたおかげですよ」

「アリアは魔石は錬成できるくせに魔法知らなかったからな」


ケラケラと笑いながらも私の頭をワシャワシャ撫でるシアン
本当にダイさんにそっくりだと思う


「ほら、アリアこれ」


砂の中から拾った結晶を私に渡す


「これが、魔獣結晶…」


魔獣結晶は、魔物を倒したときに現れるもので魔物の魔力の塊らしい
これをギルドに渡すことで換金してもらえるらしい

他にも自作の武器、魔石なども買い取ってるらしいけれど…


「そういや、どこのギルドの受付もうちのとこみたいにエルフがしてるのかね」

「らしいですね。主に記述、鑑定に秀でたエルフが選ばれるらしいです」

「ギルドの事あんま知らなかったわりには詳しいじゃん」

「…昔、お友達に教わったんです」


そう、彼女と出会わなければ私は
きっと旅にすら出なかっただろう

あの子が私の全てだったから


「いい友達じゃん」

「自慢の友達です」


自然と笑みが溢れてたらしい
あの子の話をしているときだけは笑顔になれる
昔は、そうだった


「今日中につけるかな」

「速度上昇の魔法かけます?」

「あ、それいいじゃん!二人分かけれるの?」

「た、たぶん…」

「頼りにならない後方支援だなぁ」

「こ、これからなんです!」


バカみたいに笑えて話せる人がいるとは思わなかった
これが幸せ?

そんなことを思いながら私達はビードリールへの道のりを歩いた
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