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目を覚ますと保健室だった

まだぼーっとするが重い頭を起こし、時計を確認する

下校時刻になる頃だった

たまに俺はこうやって倒れることが増えた

それは多分…嵐、もとい黒谷に振られてから酷くなったように思う


弱かった俺は嵐への恋心と一緒に捨ててきたんだ


なのに……



自分の喋り方が昔に戻っていたことが一番悔しい


「なんで……」


小さく呟くとカーテンがシャッと音を立てて開く

黒谷かと思い、気を張るが、そこに居たのは予想外の人物だった


「やっと目が覚めましたか」

「伊野?」

「何故疑問系なんですか」

「いや、お前がいるのが一番意外だったってか……」


ふぅ、とため息を吐き、伊野は荷物を俺に渡してくれた


「彼なりの気遣いでしょう」

「え」

「……嵐と何かあったのでしょう?彼が私に任せてくるのはいつも、たくみと何かあった時ばかりだ」


その言葉に俺は何も言えなくなってしまう


「……3年ほど前の件も私でしたしね、頼ってきたのは」

「……そうなんだ、ゴメンな」

「…いえ、幼馴染のさだめ、と言うやつでしょう。受け入れています」


ふぅ、とため息を漏らしながらも伊野は冗談じみて笑ってくれた

少しだけ気が楽になる


「少し、歩きましょう。下校しながら、寄り道?でもしませんか?」

「ははっ、喜んで」


エスコートするように手を差し出す伊野に笑いが溢れる
そしてその手をとり、ベットから出て…伊野と下校することにした




にしても珍しい組み合わせ…


「ところで、たくみはどこがいいですか?」

「なにが?」

「寄り道、です」


どこが、とは!?

そこまでこいつは真面目なのか……?


「こういった寄り道は…その、いつも嵐が連れて行ってくれるもので……たくみは今はどんな気分でしょうか?」

「……なるほどな…。んー…なら腹減ったし、軽くなんか食いたいかも」

「なるほど、少々お待ちください」


そう言うと伊野はスマホで何かを調べ始めた

そこまでしなくてもハンバーガーとかでいいんだけどなー

そう思っていると、伊野は何かいいとこを見つけたのか、少し頬を緩ませていた

微笑み、とでも言うのか

こいつも笑ってりゃあモテるだろうに

なぜこうも俺の周りには顔の整った女と男が集まるのやら……


「こっちです」

「おう」


くっ、と繋いだままの手を引かれ、なんだか中学の時に迷子になったときのことを思い出した

あのときもこうやって伊野が手を引いてくれたっけ

それで、二人でたどり着いたあと大泣きして、嵐と百合に慰められてたっけ…


懐かしさで俺は小さく笑いを溢したのだった
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