君の記憶に残るのはきっと自分じゃないけれど

桜月 翠恋

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3日目 朝



目が覚めると遅刻ギリギリの時間だった。
慌てて出る準備をして、外に出る

母の声が聞こえなかったということは、多分仕事に出てるのだろう
朝ごはんがないし、お弁当もなかったので今日は食べないことにした

学校につくとスマホを忘れていたことに気がついた


「しまった……」


鬱陶しくはあるが、葵茨さんからのメッセージは、和紀先輩の帰る時間を教えてくれたりする

仕方ない。早めに下校して先輩を待つしかないか……

先輩との連絡先を交換してないのは交換してしまえば忘れたあとにまた交換することになったら登録済みが出てしまうことを警戒してのことだ


「……悪手だったかな」


1日でも先輩に会えない日があるのが苦しかった…

授業が始まることになり、私は席についた
さぁ、また退屈な時間が始まる……






✗✗✗✗✗✗












「おかしいなぁ……」

「ん?」


大学へ向かう中、葵茨が呟いた
気になって葵茨の横からスマホを覗き込む

そこには【妹ちゃん】と書かれている人へのチャット欄が開かれていた


「あれ、葵茨って妹いたっけ?」

「あ!?あぁ、妹みたいな子だよ。僕のある意味特別ちゃん」


葵茨の表情はその【妹ちゃん】への愛おしさが溢れていた

そんなふうに思える人が俺にはいたかな……
仮にも【葉月】と付き合っているのにそんなことを考えるのは失礼か
そう思い、自分に失笑する


「特別ねー。で、その子がどうしたんだよ」

「いやさー。連絡取れなくて困ってるんだよね」

「………連絡、ね」


そういえば葉月と連絡先を交換してないことに気がつく

スマホを探るが、色んな知らない女の名前は入っているが葉月の名前はやっぱり無い

知らない女の名前を消していく


「あれ?和紀珍しいね、連絡先整理?」

「いや、葉月の連絡先知らないなーって思ってたら知らねぇ女の名前ばかりあるからさ」

「な、なるほどねー……」

葵茨が微妙そうな顔をするがそんなこと気にしてる暇はない


「そういやぁ、葵茨は葉月の高校の先輩なんだろ?」

「あー……そうだね」

「連絡先知らねーの?」

「……うーん、知らないねぇ」


ニコニコと何を考えてるかわからない笑みを浮かべている

まぁいいか


「……次あった時でも聞いてみるか」

「そうだね、それがいいと思うよ~」


空を見るとグレーの雲が空を覆い始めていた

これは雨が降るかな……


「なぁ、葵茨」

「なーに?」

「雨、降りそうだな」

「そうだねぇ、傘あったかなぁー」


何か嫌な予感がしながら俺は大学まで走った


どうせ放課後にはやむだろう。

なんて気楽に考えながら
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