君の記憶に残るのはきっと自分じゃないけれど

桜月 翠恋

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2日目 夜


体調は落ち着いてはいたが、やっぱりいつもより体がだるい

晩御飯も食べずに部屋に引きこもってしまう
お母さんには少し嫌そうな目で見られてしまったがしょうがない

布団に埋もれながらスマホを見る

待ち受けは和紀先輩と2人で撮った写真……


先輩との時間はあと12日
今までは体調なんて崩したことなかったから今回のは誤算だった


「体調を崩すなら治ってから告白すればよかった……」


そう呟いて、自分の言葉に笑ってしまう

先輩と私が離れた途端、多分先輩は他の人の彼氏になる
2週間だけの彼氏

先輩はイケメンだから……


私は近くの鏡を見る
私も見た目はなかなかだと思う

流石……の血が流れてるだけある……


先輩が茶髪に染めたから私は金髪に染めた
先輩が髪の長い子が好きって言うから髪も伸ばした
前髪は切るの失敗して眉上だし、パッツンになっちゃったけど……


「……早く体調治さなきゃ」


寝返りをうち、布団にくるまる

私の感情は少しおかしい
それは私の父親のせいだと母親は言った

私の感情は先輩への愛だけでできていると思う

私の世界には先輩しかいなくて………


「……和紀…………ぃ」


かすれた声で名前を呼ぶ
今日はねよう。そう考え、私は目を閉じた





スマホが震えてるのに気づかずに……












✗✗✗✗





「でないなぁ…」

「なにしてんだよ?」

「あー、いやね?可愛い女の子に電話をかけてたんだけど」

「お前の言うかわいいはわかんねぇよ」

「酷いなぁ~あの子は可愛いよ。一途だしね」


僕はメッセージアプリを開き、彼女にメッセージを送っておく



『明日はアイツは遅くなるから、のんびりでいいよ。体調気をつけなよ』


よりすぐりの顔文字で飾り付け、送信する


「よっし、ねぇねぇー、和紀ー」

「なんだよ」

「…今回の子は和紀にとってはどうなの?」


和紀は考え込むような仕草をしたあとに、僕に笑いかける


「どうだろーな。ってか、この話前もしなかったか?」

「……したかもね」

「んー……まぁ、葉月ちゃんは俺の死んだ妹に似てるし…守ってあげたい感じかな」


そう言って笑った

和紀の脳は妹の死から、辛いことや心の負担になる事を忘れるようになってしまった

僕は和紀に寄り添うことしかできないけれど
和紀に言えない秘密も持っている


いつか、和紀が誰かと幸せになれるまで僕は二人を守る

そう………







誰かを傷つけたとしても……




「何してんだよ」

「あ、ごめんごめん、今行くよー」


目を細め、今日も笑う

二人のために
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