君の記憶に残るのはきっと自分じゃないけれど

桜月 翠恋

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2日目 朝


ピピピッ…

アラームの音で意識が夢から引き戻される
体を起こし、スマホに手を伸ばす

身体のだるさに少し眉間にシワが寄ってしまう

机の上にある薬をとり、隣のペットボトルの水と共に飲み込む


「……あと何回」


自分でつぶやいて苦笑してしまう
何回でも彼のそばにいると決めている
そう、終わりが来るその日まで


「……あれ、チャット?」


さっきは気づかなかったが、チャット欄に新規メッセージがきていた

メッセージを開くとまた【葵茨】と書かれていた

ため息をつきながらメッセージを読む


『おーい、今日はアイツ、早く帰るらしいから放課後はまっすぐこっちに来たら会えると思うよ~』


と書かれていた

その下に小さく

『そろそろ連絡先交換しなさい。お母さんは心配です、なんちゃって』

とうざったい顔文字とともに書かれていた

決めた。先輩だとしても関係ない
葵茨は一度殴る

そう心に決め、私は学校へ向かう準備を始めた





台所に行くと母親がご飯の準備をしていた


「おはようこざいます。お母さん」

「あぁ……朝ごはん出来てるから食べてから行きなさい」

「はい」


そっと定位置に座り、できている朝食に口をつける
ゆっくりと噛み、飲み込む

食事が私の身体に栄養として染み渡る

また明日、生きるために私は今日も好きでもないご飯を食べる

お腹が空かないのに食べる
人と同じように同じ時間に食べる

億劫な朝のご飯を食べ終わると、今日はお弁当を作ってもらってないのでそのまま学校に行こうと立ち上がる


「ごちそうさまでした」

「葉月、今日もしないのよ」

「わかっています。では、行ってきます。お母さん」


私は愛想笑いを浮かべ、そっと家を出る
放課後まではつまらない学校を作り笑顔で誤魔化す

私にはきっと時間がない


だからこそ私は先輩との時間を大切にしたい


「早く、学校終わらないかな」


誰に言うでもなく、私は呟いた

登校中に先輩に会うには色々あるので諦めている
先輩と私の家は逆方向。
向かう学校も逆方向なのだ

だから私は先輩に会うのを諦めている


「おはよう、一ノ瀬さん」


背後からの声に振り返るとクラスメイトの神崎ほろびさんだった


「あ、おはよう、神崎さん」

「今日は日直でしょう?私もなの。よろしくね」

「うん、よろしく」


そして他愛もない会話をしながら教室へ向かう
神崎さんは飾らなくていいから一緒にいてとても安心する…

彼女とはクラスメイト以上友人以下ではあるけどお互いにお互いを都合のいいように使っている

そして日直の仕事が終わると授業の時間になる

私は放課後に思いを馳せながら授業を聞くのだった
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