君の記憶に残るのはきっと自分じゃないけれど

桜月 翠恋

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初日 夜


私は自室で日記を書いていた
私が日記をつけるのは、私の体質の問題だ

特に何というわけではない

今日の日記にも昨日の日記にも和紀先輩に対しての愛が書かれている

私は本当に和紀先輩が大好きなんだ

自分の日記には和紀先輩にしてもらったこと。
和紀先輩と話したこと
和紀先輩の好きなところ
など、和紀先輩のことしか書かれていない

今日は初めて先輩の照れた顔を見た
本当に嬉しかった

ぎゅっと日記を抱きしめ、ベットに倒れ込む
布団にゆっくりと体が沈む
心地いい

まどろみに身を委ねてしまおうか

そう思っているとスマホに通知が来たのだろう。スマホが震えた


「誰だろ……」


スマホに手を伸ばし、サイドのボタンを押して電源をいれる

そこに表示されていたのは【葵茨】。

メッセージアプリの通知だったらしく、開いてみる


『一ノ瀬ちゃん。和紀どうだった?やっぱり完璧に一ノ瀬ちゃんのこと覚えてない?』


葵茨さんは和紀先輩のクラスメイトらしい
和紀先輩の記憶が飛ぶことも納得したうえで友達付き合いをしているらしい

大学生の先輩たちと高校生の私。

葵茨さんは何度か留年しているとかしてないとか……

葵茨さん、はやと先輩の二人は和紀先輩の親友らしい

私はずっと二人に協力してもらっている


そう、ずっと……


葵茨さんのチャットに返事をする


『先輩覚えてませんでした。残念ですけどまた一から頑張ります』


そして泣いてる顔文字を打ち込み、スマホを布団に投げて置いた


私は報われない恋をしている
それはずっと昔から

そして、恋をしている

はやと先輩だけはその秘密を知っている
誰にも言えないし、期間限定の恋

和紀先輩の記憶。を優先的に忘れてしまう

だからこそ毎回サヨナラの日は先輩に言っちゃいけない【秘密】を告げて私との記憶を忘れてもらっている

そんなずるい期間限定の恋をしてるのは…

私の親にも、和紀先輩の親にもこの恋を言えないからだ
だからこそ私は少しの間の逢瀬で幸福を覚えている


「和紀………」


名前を呼べは更に愛おしくて苦しくて
胸が熱くなる
ぎゅっとぬいぐるみを抱きしめる

うさぎの様な、くまの様な歪なぬいぐるみ
先輩の作ってくれたぬいぐるみだ

先輩がもう覚えていなくてもそれでもいい
私の胸には先輩の愛がちゃんと残っているから


「ごめんなさい、お母さん……」


私はきっとこれからも先輩にちゃんとした彼女ができるまでこの恋を続ける

親不孝な自分勝手な恋を……


明日はどうしよう。今までしたことないことがいいな


そう考えながら私は眠りについた
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