魔女の生まれた屋敷

桜月 翠恋

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【嫌い】



【私はすべてが嫌いです】


【妹が…妹に似た母が】



【嫌いです】










私は夢を見ていた

黒く長い髪の少女が外を走り出してる夢を


その少女はヘレニにそっくりだった


幼い私の夢、とでも言うのだろうか?
健康なキレイな足で走り回る自分に嫌悪感が生まれる


「お姉ちゃん、だぁれ?」


少女は不思議そうに私を見つめ、問いかけた


「私は……ローズよ」


その言葉に少女は首を傾げる
そして不思議なものを見るよう見てくる


「変なの」

「変?」

「うん、変」


薄水色の瞳で、少女は私を見つめていた

そして少女の言葉が少しずつ遠ざかる

「私……な……え……は」



名前が聞こえない
そのまま夢の世界は虚しく崩れる


真っ暗な空間に一人、私は座り込む

膝から下はうつらない、みえない


夢の中でも歩けないのか、と皮肉じみた夢に苦笑する

ふと、目の前に光が灯った

手の力だけで光へ向かうとそこには幸せそうな光景がうつっていた

三人の子供……


きっと、私と妹と……弟なのだろう

三人が楽しそうに遊んでいる


「お姉ちゃん、待ってよぉー」


懐かしい妹の声。

でも、妹は私にこんな声を、こんな笑顔を向けてくれただろうか?


「×××姉ちゃん、まってー」


私の横を男の子が通り過ぎる


「もー…あっくん、大丈夫?」


少女は少年を撫でる

そこに歩いてきたのはヘレニ?

でもヘレニとは少し雰囲気が違う気がする

そう考えた瞬間


また視界が歪んだ














「っは!!!」


私は飛び起きた
ぎゅうっとシーツを握りしめていたらしく、シーツはヨレヨレになっていた

全身から汗が吹き出ている


思ったより大きな声を出したのか部屋の外からバタバタと音が響く

時計を見ると深夜だった


「ヘレニを起こしたかしら…」


そうつぶやいた瞬間ドアが開く


「ローズ様、何かありましたか!?」

「大丈夫よ」

「怖い夢でも見ましたか…?」


ヘレニは私を抱きしめ、子供をあやすように背中をトントンとしてくれた

幼い頃、覚えてもいない昔…母にされたような…そんな気分だった


「私……幼い頃を覚えていないの…」

「えぇ…ローズ様の思い出話はいつもこの屋敷に来てからのことでしたから。存じております」

「私は……何を忘れているのかしら、ヘレニ……」


私の言葉にヘレニの腕に力がこもる


「大丈夫、大丈夫です。アオイがなんとかしてくれます。だからローズ様は……」

「えぇ、私、もう少し眠るわ。起こしてしまってごめんなさい」

「大丈夫です、ゆっくりお眠りください」


ヘレニは私の額に口づけ、部屋を出ていった


ヘレニが出ていったあとの部屋で私はぼんやりと扉を見つめ、涙を流した


「私にまだ、何か隠してるの?ヘレニ……」


そう呟き、私は布団に潜った


「いたっ……」


足の痛みに首をかしげた

気にしないようにして、目を閉じるのだった







【裏切らないで】


【裏切らないで……お願い】
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