鬼人の姉と弓使いの俺

うめまつ

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「これでお前の所有は私か。ふふ」

きっしょ。

顎持つな。

「上級を小飼にできるとは。ステータスだ。だがギルドの所属だと煩わしい。細工が知られるのも。除名手続きさせねば」

「いっ、」

この怪我がちょうどいいと折れた腕を捕まれた。

「その後は我が家の専属にすればいい」

「俺は弓使いです。利き手の怪我は致命的です。雇う意味がありますか?」

弓使いが利き手を怪我した。

何の役に立つんだ。

「別に弓使いなど不要だ。いらん。それなら魔法使いか剣士を雇う。お前の仕事は別だ。鬼に買われていたのだから」

顔とその仕込みがあると笑った。

こういう顔を好む友人達がいると言う。

「……分かりました」

最悪。

本当に俺の見かけは最悪だ。

こんな奴にばっかり。

「父を見舞いたいのですが、よろしいでしょうか」

「構わん」

屋敷が汚れるから外の小屋にいると教えられた。

行くと前の部屋より粗末な部屋だった。

狭く暗い部屋に一人寝かされてる。

「……父さん」

この大怪我で呼び掛けても返事なんかない。

分かってるけどなぜかそう呼び掛けたかった。

火が喉を通ってひゅーひゅーと音が鳴るだけ。

真っ黒に肌が焼けてただれた肌から汁が流れてる。

生きてることが不思議だ。

どう考えても長くないよな。

「う、……ウ、」

もぞもぞと口が動くので顔を寄せる。

最後の言葉なら聞きたかった。

「……何?」




おまえの、オマエノ、せいだ、しね、おまえが、しね




口の動き、微かな音。

自分を呪っていると気づいて泣きそうなのを堪えた。

そして3日目に父親は死んだ。

最後だと思うと想うことが多すぎて、片手が不自由なまま世話をした。

意味なんかない。

あいつは最後まで俺を呪ってたから。

俺の手当てをした魔法使い達も思うところがあったようで世話の手伝いをしてくれた。

伯爵に死を知らせると腐る前に埋めろと言っただけだ。

この雇われパーティーの男達は手が不便だからと俺の代わりに敷地の端に穴を掘っている。

「よかったな。お宅の父親」

何がだよ。

疑問に暗い眼差しを向けた。

「魔力がない男だったから言霊が生まれない。あいつは意味のない言葉を言ってただけだ」

「あぁ、……そういう意味ですか」

「ああ」

「やっぱり空耳じゃなかったんですよねぇ。だいぶ精神的に抉られてます」

「……それは俺らも。……見ててエグかった」

三人のため息に釣られて俺も深く息を吐いた。

「手伝いを、ありがとうございます。最後まで父がお世話になりました」

「……父親って無理に言わなくてもいいんじゃないか?」

「……最後ですから」

もう会うこともないと思えば言ってもいい気がした。

あいつの死に安堵より寂しさがある。

思ったより実の父親に会えて嬉しかったのかもしれない。

それだけじゃなく俺には本当の意味での親父がいるからこの人の死に特別な痛みはなかった。

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