81 / 105
81,三人より一人の方がお得
しおりを挟む
「よ、ロクロのちびちゃん」
モヤモヤ男。
しゃべり方はきっと男。
「無事にあちらへ送り届けてね」
「承知いたしました。総ギルド長」
隣にはローラさん。
モヤモヤ男は御者席。
受け渡しの付き添い。
「ラオシン、がんばってね。居心地良ければ長居しても構わないけど。はは」
「……売りやがった」
今から子爵の屋敷に送られる。
子爵本人が来ると踏んでたら今度はもっと家各の高い貴族から手紙が届いた。
“寄越せ”ってね。
今は外門でユニコーンの馬車に乗車するところ。
ギルドの失態に足元を見られたと言ってた。
これ以上貴族から寄ってたかって非難を受けると親父達を庇えなくなるからって。
「あの三人を天秤にかけるなら君だよ。それとも家族を危険に晒したいかい?」
「……いえ」
それなら俺が行く。
「だよね」
じゃあ、いってらっしゃいと軽く手を振って見送られた。
「……俺は向こうで何するんですか?」
隣に座ったローラさんに問いかけた。
「好きにすればいいのよ」
「好きにですか……」
「親子の再会をしてから考えれば?」
あっさりした返答に黙った。
俺は行きたくない。
今の暮らしで満足していた。
親父と姉二人、仕事を変えたけど楽しい友達も増えた。
チイネェの髪の手入れをして飯食わせて、気ままにモンスター狩りして。
またあの借り家でみんなと騒ぎたい。
「もとの暮らしがいいです。楽しかったから」
「そうすればいいわ。そのためにギルドがあるの。上級ランカーのラオシン。後押しは私達ギルドの仕事よ」
「……そうですか」
「私達もやられてばかりじゃないのよ?」
分かった?と横から頭をつつかれた。
貴族とどうやるのか分からないけど腹黒そうなギルドの面々を思い浮かべて静かに頷いた。
「……ありがとうございます」
「ロクロ達の安全が確実になったらすぐに知らせてあげる。特別に貸すわ」
少し痛いわよ、と言うと俺の耳たぶを軽く摘まんだ。
「いで!」
また針の刺さった感覚で飛び上がった。
「いてて、何ですか?」
「良いものを貸したの」
ぱちんとウインク。
痛かったそこに触れるけど何もない。
手のひらの印みたいに目に見えない何かを刻んだらしい。
モヤモヤ男。
しゃべり方はきっと男。
「無事にあちらへ送り届けてね」
「承知いたしました。総ギルド長」
隣にはローラさん。
モヤモヤ男は御者席。
受け渡しの付き添い。
「ラオシン、がんばってね。居心地良ければ長居しても構わないけど。はは」
「……売りやがった」
今から子爵の屋敷に送られる。
子爵本人が来ると踏んでたら今度はもっと家各の高い貴族から手紙が届いた。
“寄越せ”ってね。
今は外門でユニコーンの馬車に乗車するところ。
ギルドの失態に足元を見られたと言ってた。
これ以上貴族から寄ってたかって非難を受けると親父達を庇えなくなるからって。
「あの三人を天秤にかけるなら君だよ。それとも家族を危険に晒したいかい?」
「……いえ」
それなら俺が行く。
「だよね」
じゃあ、いってらっしゃいと軽く手を振って見送られた。
「……俺は向こうで何するんですか?」
隣に座ったローラさんに問いかけた。
「好きにすればいいのよ」
「好きにですか……」
「親子の再会をしてから考えれば?」
あっさりした返答に黙った。
俺は行きたくない。
今の暮らしで満足していた。
親父と姉二人、仕事を変えたけど楽しい友達も増えた。
チイネェの髪の手入れをして飯食わせて、気ままにモンスター狩りして。
またあの借り家でみんなと騒ぎたい。
「もとの暮らしがいいです。楽しかったから」
「そうすればいいわ。そのためにギルドがあるの。上級ランカーのラオシン。後押しは私達ギルドの仕事よ」
「……そうですか」
「私達もやられてばかりじゃないのよ?」
分かった?と横から頭をつつかれた。
貴族とどうやるのか分からないけど腹黒そうなギルドの面々を思い浮かべて静かに頷いた。
「……ありがとうございます」
「ロクロ達の安全が確実になったらすぐに知らせてあげる。特別に貸すわ」
少し痛いわよ、と言うと俺の耳たぶを軽く摘まんだ。
「いで!」
また針の刺さった感覚で飛び上がった。
「いてて、何ですか?」
「良いものを貸したの」
ぱちんとウインク。
痛かったそこに触れるけど何もない。
手のひらの印みたいに目に見えない何かを刻んだらしい。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
『「我慢しないで、いっぱい甘えて」男女比ちょいバグな転生先で、みんな私と番になりたいらしい。』
白 牡丹
恋愛
『仕事のご依頼は所属ギルド、その他ご相談は事務所(実家)窓口よりどうぞ』
今のとこ逆ハーに見せかけた、純愛。混沌なる世界にて、混迷極めし我が身かな。
合算年齢30↑のお姉チャンに、お猫様を被せたイメージ。
上にいくほど女旱りであろうと関係ない、何より可愛い我が身を始め、お家も私が守るもん('ω')!
いつの世も弱肉強食、時は絶対王政と金権の激動、地獄の沙汰も『金』なので……文武両道、質実剛健を目指し、心にメメントモリを抱くも。
「(暗黒微笑)」
今生の私———『オフィーリア・アストライヤ』による、Dom公爵令嬢への道のりは止まらない。デスワ……。
※本作はDom希少を主軸とした、溺愛、お世話、開拓、冒険、青春、筋肉、♡表記、男性受け等の健全~R~弱ホラーまで、多方に渡る癖を詰め込んだ作品となります※
<2024/06/20 追記>
本作の更新速度について、ここ最近多忙により、ブレます。でも、更新自体『モブ令』ともども続ける故、どうか更新を理由に、見捨てないでください。
見捨てるのは一瞬、然しご縁は一生。ただ、例えネタが見つかっても、執筆できないだなんて……いつの世であろうと金、世知辛いですね。
以上、敬礼!
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
雨上がりに僕らは駆けていく Part1
平木明日香
恋愛
「隕石衝突の日(ジャイアント・インパクト)」
そう呼ばれた日から、世界は雲に覆われた。
明日は来る
誰もが、そう思っていた。
ごくありふれた日常の真後ろで、穏やかな陽に照らされた世界の輪郭を見るように。
風は時の流れに身を任せていた。
時は風の音の中に流れていた。
空は青く、どこまでも広かった。
それはまるで、雨の降る予感さえ、消し去るようで
世界が滅ぶのは、運命だった。
それは、偶然の産物に等しいものだったが、逃れられない「時間」でもあった。
未来。
——数えきれないほどの膨大な「明日」が、世界にはあった。
けれども、その「時間」は来なかった。
秒速12kmという隕石の落下が、成層圏を越え、地上へと降ってきた。
明日へと流れる「空」を、越えて。
あの日から、決して止むことがない雨が降った。
隕石衝突で大気中に巻き上げられた塵や煤が、巨大な雲になったからだ。
その雲は空を覆い、世界を暗闇に包んだ。
明けることのない夜を、もたらしたのだ。
もう、空を飛ぶ鳥はいない。
翼を広げられる場所はない。
「未来」は、手の届かないところまで消え去った。
ずっと遠く、光さえも追いつけない、距離の果てに。
…けれども「今日」は、まだ残されていた。
それは「明日」に届き得るものではなかったが、“そうなれるかもしれない可能性“を秘めていた。
1995年、——1月。
世界の運命が揺らいだ、あの場所で。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる