鬼人の姉と弓使いの俺

うめまつ

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69,意外と乙女思考

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「うおおおっ!バ、バニー!?」

「無防備だねぇ?あはは。皿の上のご馳走って感じ」

皆に見られてたよって言われたけど、皆って誰だよ?!

「おりろっ!」

「えー?やだぁ、あは」

暴れてベンチから落ちたけど寝技が上手い。

全く抜け出せない。

オルカさんといい、こいつといい悔しくなる。

「うおっ!いってぇ!」

「あれ?硬い。普段しないの?まさか初物じゃないよね?」

つぷっと指が。

ナニがとは言いたくない。

「あれー?お尻、ピンクなの?こっちも色薄い。童貞?」

べらっと腰に巻いた手拭いも捲って股間を眺めてる。

この変態やろう!

必死で足で蹴るのに足首を捕まれてぶら下げられた開脚だ。

とんでもねぇ格好に赤いのか青いのか自分の顔色が分かんねぇ。

「ねえ、処女?童貞?未経験?」

「うるさい!だったらなんだよ?!悪いかよ?!」

しつこく聞いてくるバニーにムカつく。

肯定したらいきなり、ぽいっと俺の足首を放り投げた。

「いて!」

宙吊りに近かった俺の尻がどすっと石畳に落ちた。

「あー、残念。童貞と処女は遊ばない主義。やーめた」

「……はあ?」

助かった安堵とバニーの意外な反応に目を丸くした。

「初めてって大事じゃん?」

好きな奴とヤってこいよと笑ってる。

意外と乙女な思考で驚いた。

「……意外」

「ん?よく言われる」

さっきまでの興奮は落ち着いて生暖かい眼差し。

「可愛いねぇ、小尻ちゃんは。ちょっとマゾっけあるし」

「ね、ねぇよ!」

「半勃ち。恥ずかしい格好は気に入った?」

「ち、が、うっ」

「えー、そう?」

「あっ、」

するっと手を伸ばして胸を触られた。

尻を引きずって逃げたけど間に合わなかった。

尖端をきゅっとつねられた。

「乳首の開発、すんでんの?なし?それでこの反応なら才能あるよー」

「んんっ、くっ、」

腕を押し返すと逆に引っ張られて苦しい。

じくじくする。

半泣きで拳を振った。

「や、めろ」

「うわぁ、そそる。何よ?この抵抗。なあ、個室に行かね?太もも貸してよ。最後まではしないからさぁ?手でいいし。いい子だから行こ?ちょっとだけ遊ぼうよ?ね?か、ぷ」

耳を噛みながら囁くけど、ぞわっとするわ。

嫌な意味で。

縮こまって嫌だと首を振ったら含み笑いが耳に響く。

「小さい子にイタズラしてるみてぇ。あは、楽しい。れ、ろ、ちゅく、いでえ!なんだぁ?!」

「わ!」

いきなりドスンと衝撃。

バニーが前のめりに倒れて俺が下敷きになった。

「おい、そいつから離れろ。どけ」

ごっ、ごっとまだバニーの背中を蹴りあげてる。

「ホッパーさん?!」

這いつくばってバニーから逃げた。

「いねぇと思って探したら食われてんじゃねぇよ、くそチビ。それともウェルカムなの?誘ったの?邪魔したか?」

「違う!」

助かったわい!

見下したせせら笑いに必死で首を振る。

「誰?お前。下が上に歯向かうなよ」

「どーも、階級よりも万年発情期のちんかすで有名なバニーさん。ドリアドスさん預かりの者でホッパーと言います」

丁寧に頭を下げたけど会話はひどい。

「ドリアドスの?あぁ、やっぱり下っぱ。新人のくせに舐めてるぅ」

「うす。こんなん見たら舐めたくもなります。健全な湯屋でバカじゃね?噂以上のユルユルな下半身。最悪」

「……お前、これ以上ふざけるなら口に突っ込んで舐めさせっぞ。その狭そうな喉で遊んでやるよ。糞を黙らすのも好きだからね」

「っ、」

さすがにやれるもんならやってみろと言えない。

バニーが本気だから。

「差が分からないバカじゃないのね。まともな勘してるけど、お前がやったことは覚えとくよ。名前も覚えとこう。ホッパーね?了解」

「……ちっ」

しくじったと顔を歪めた。

「俺って優しいから仕事の邪魔はしないよ。思い出したけど舐めた態度で仕事の依頼が少ない奴。ドリアドスの今季新人の最下位ってお前だろ?」

「……」

苦々しい顔つきを見ればまた図星と分かる。

「糞みてぇにふてぇ態度。でも名乗りをした度胸は気に入った」

「ふん、叩き潰す気でしょう。負けねぇし」

「あれ?本当に気に入ったんだけど?」

「何でもいいっす。こいつ貰っていきます。行くぞ、くそチビ」

「お、おう」

へたりこむ俺の二の腕を掴んで引きずる。

でも反応した下半身が歩きづらい。

前のめりになる俺に察して驚いてるし、恥ずかしくていたまれない。

「この、変態」

ホッパーさんの冷たい罵りにガツンとへこむ。

「くそチビが」

「うお、」

脇に抱えてどこか連れていかれたと思ったらすぐに風呂に放り込まれた。

「つめてぇ!」

「冷やせ!ばーか!」

出ようとするのにホッパーさんに頭と肩を捕まれて水に漬け込まれた。

「冷たい!冷たい!出たいぃ!寒いぃ!」

「そのバカ顔をどうにかしろ!」

「わー、乱暴だね」

後ろからバニーもついてきてる。

「あんた、なんで来てんすか?!まだこのくそチビに構う気かよ?!」

「行き先被っただけ」

「無理ぃ!風邪引くから!俺引きやすいんだってば!出してぇ!」

「もう少し入ってろ、くそチビ」

「なんでよぉ!寒いよぉ!」

「あは、お前が入れよ」

「うお!」

バニーがホッパーさんを水風呂に突き落とした。

頭を掴んで沈めてる。

がぼがぼ暴れるのに簡単に腕をひねってやがる。

「バニー!殺す気かよ!?」

寒さに震えながら水風呂から飛び出した。

「んな訳ないじゃん。ちんこ静める手伝いしてやってんの」

「訳分かんないこと言ってないでやめろよ!」

「はいはい」

手を離すとホッパーさんが激しくむせながら立ち上がった。

「ホッパーさん!大丈夫か?!」

「く、くそが、げほっ!」

「ホッパー、ちんこ治まったかー?」

「また訳わかんねぇことを、だっ!」

ホッパーがいきなり俺の顔を鷲掴みしたと思ったら突き飛ばしてきた。

「こっち見んな!くそチビ!てめぇのせいだ!」

「いってえ!何すんだよ!」

「寄るな!」

「寄らねぇよ!このくそ寒いのに!」

赤い顔で水風呂に肩まで入ってるお前がすごいわ!

こっちは寒くてガタガタ震えてるのに。

ホッパーさんを放って暖かい風呂を目指して離れた。

「俺も行くぅ」

「あー!このやろう!まだ絡むか!?おい!一人で行くな!くそチビ!待て!」

後ろからバニーとホッパーさんのわめき声。

ついてくんなと内心で叫ぶだけだ。

それより温もらないともう無理。

入った熱めの風呂に飛び込んだらマミヤとブルクスがいた。

そして、いきなりホッパーさんが二人の頭を殴った。

「何しやがる!?」

「てめぇら二人とも抜け作なんだよ!とーへんぼく!連れの面倒を見ろよ!だから俺はお前らが嫌いなんだ!このボケ!」

バニーはゲラゲラ笑ってホッパーが正論と擁護した。

「チサキに頼まれてたんじゃねぇの?ご馳走が一人でうろちょろ。朝は花街帰りのすっきりした奴等が多いからましだけど、夕方ならヤバイよ。相手探しの男娼と間違えられる」

手を伸ばそうとしたから身を引くとホッパーさんに引っ張られてマミヤ達の方へと押された。

「盛るのやめてください」

ホッパーさんが俺達の間に割り込んで睨むとへらっと笑う。

「お気に入り?」

「こいつはダチです」

「へぇ、お友達。そうなんだぁ」

ホッパーさんの言葉に目を細めて口角が上がる。

「ホッパーがラオの?いつから?」

ブルクスに聞かれたけど首をかしげた。

いつの間に友達認定されたのか知らん。

目を丸くするブルクスとマミヤにホッパーさんが睨む。

「いつでもいいだろ。役立たずども」

俺がいないのも、まあいいかと放ったらかしだったって怒りだした。

「頭腐ってんのかって。お花畑の単細胞。あぶねぇ気がして探してみりゃぁ、いきなりこの変態の下敷きだし、他にもヤバかったんだ」

「他?何があった?」

「俺はベンチで涼んでただけですよ」

心配するマミヤにそう答えた。

「声かけるつもりの奴らに囲まれてたのも分からねぇのか。くそチビ。この鈍感が」

「え、マジ?」

「マジだよ、ばーかばーか。見つけたと思ったら、いきなりそいつに足をぱっかん開かされてビビった」

「え?!ラオが?!」

「こわ、」

ブルクスが俺とバニーを見て震えた。

「べらべら言うな」

湯あたりじゃなくて顔が熱い。

「事実だろ」
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