66 / 105
66,餌にされた
しおりを挟む
「……頭痛いぃ」
またベッドで雑魚寝かと思ったら今日はラグで雑魚寝だ。
なんで俺はドリアドスさんの腹の上で寝てるんだ。
「……ん?起きたか?」
「……お"はよう、ござい"ま"す。うっぷ、ううっ」
「俺の上で吐くな」
脇に抱えられて外へ連れ出された。
「うおえええっ」
「ざまぁみろ」
這いつくばって苦しむ俺をせせら笑うくせに世話焼きだ。
屈折してんな、この蜥蜴。
またグラナラさんの回復でまともになった。
二度と飲みたくねぇ。
本当に酒は合わねぇんだ。
朝飯を済ませたら全員が手荷物から手拭い出してる。
「よし、風呂行くぞ」
「は?風呂?」
チイネェ達が朝食の後片付けしておくから先に行けと家を追い出された。
なんで風呂?と首をかしげてたらドリアドスさんが俺を見て呆れている。
「昨日お前が行きてぇつったんじゃん。大浴場。また記憶ねぇの?」
「……ない」
「ぶはは!お前って本当に酒だめだわぁ!あっはは!」
「……ひどかったよ、俺達のちんこ見たいって騒いで」
「うそっ!?」
げんなりのマミヤに叫んだ。
「マジよ?」
「本当だよ」
そうそうと三人で頷いてる。
「……うわぁ、変態だ。気持ち悪ぅ」
「言ったのラオだよ。言われて気色悪いのはこっちだ」
「あー、すいませんでした。……だからグラナラさんが視線をそらすわけね」
マミヤに睨まれて素直に謝った。
グラナラさんが朝から俺を見て赤い耳をピコピコさせてた理由も納得。
「そういうの苦手だし」
「あいつ、アホだぞ。自分にはないって落ち込んでた」
「は?何の冗談?」
「……グラナラは普段からアホの子だから。……てか、特級の鬼人と上級の魔女に絡まないでほしい。あいつ死ぬかも」
庇いきれないとため息をこぼす。
「意外と行けるんじゃね?なぁ、ラオは大人しいタイプが好きなんだろ?グラナラはありだよな?」
「ああん?」
「やめろ!バカ!」
「いで!」
マミヤが手を振ったら、ぱこんとブルクスの後頭部からいい音。
「無神経だろ。あいつの気持ちも考えろよ」
「いてて、さーせん。でもさ、グラナラがアホなのは知ってたけど、チサキさんとオルカさんも大概だよなぁ。二人も自分にはないって落ち込んでたから」
「は?バカじゃね?」
何それ。
「元凶はお前だろうが。三人ともお前が男色かとビビってたんだよ。おかげで俺が殴られた」
「え?なんでドリアドスさんが?」
「八つ当たり。昨日、お前は俺の上に乗っかって脱がそうとするし。このアホが」
「うわぁ、ひでぇ」
俺、最悪じゃん。
「で、ロブさんが好みなんだろ?」
「は?なに?」
にやーって笑うブルクスに眉をひそめた。
「言ってたね、ロブさんが好きって」
それに対してマミヤも頷くし。
昨日、俺は本当に何を言ったの?
「人としてですよ」
一番まともじゃないか。
そう答えたらドリアドスさんが微妙な顔をする。
「……まともねぇ」
どういうことかと思ったらまともじゃなかったわ。
まともじゃないってか、かなり普通と違う。
もとは王都の娼館で売れっ子調教師してたって。
その手の有名人。
「……わお」
通りで人たらし。
「身受けされるのは性に合わないって自分の稼ぎで店を持ってんの。美容や整体に詳しいのも経験だな。いくつも店を持ってるし、弟子も多い。……って、これも昨日も話したわ。覚えてないのかよ?」
「全くですね」
欠片も心当たりがない。
「あぶねぇな。大して飲んでないのに。持ち帰られるぞ」
「そうですね。飲まないようにします」
バニーみたいな変態がいるのを思い出した。
「混ぜられても分かんないんじゃない?ラオは」
ブルクスに言われて、うっと声が詰まった。
「そういう心配もあったな。まあ、回りに知られないように気を付けろよ。お前らも黙っとけ。なんかあったら親父さん達が、」
「小尻ちゃーん!今日もお尻が小さいねぇ!」
「ぎゃー!」
往来のある道のど真ん中でいきなり後ろからケツを捕まれた。
「あん?げ、バニーか」
へらへらのチャラ男だ。
「な!なんであんたが!チイネェに殴られたくせにまだ俺を構うのかよ!」
「俺って努力家だからぁ」
「ふざけんな!」
「お前、やべぇ奴に絡まれてんなぁ」
「やっほー!ドリちゃん、たまには俺とどうよ?」
「やだよ」
「あはは、楽しませるのにぃ」
「てか、なに?お前、こいつを気に入ったの?初級なのに?」
「らしいね。掲示板見たよ。でもそれを見る前から気に入っちゃってさぁ。一目見てビビって来た。チサキのペットだからだと思ったけど、ロクロ達の秘蔵っ子だってね。やっぱり俺って見る目あるぅ」
「へぇ、相変わらず冴えてるじゃん。良かったな、ラオ」
「何がいいんだよ!」
「こいつ、勘が良くてさ。階級関係なく能力高い奴とヤりたがるの。腕の良い奴見るとムラムラすんだって。変わってるよなぁ」
「あはぁ、所属しててもよそのパーティーに呼ばれるしソロも多いからねー。前衛も後衛もやるから。なんでも勘が良くないと。目利きって大事よー?ねー、小尻ちゃーん」
「発情すんのは迷惑だがな」
「やめろ!寄るな!」
「なぁ、こいつらはどうよ?」
「えー?なに?どれ?」
ドリアドスさんが固まるマミヤ二人を指した。
「……んー、悪くはないけど、ムラムラしそうでしないや。あと二、三年見ないと分かんないかなぁ」
「中級まではありってことか」
「そのくらい軽く行くんじゃない?あー、こっちの短髪は微妙。伸びしろありそうだけど、テクなさそう。両方とも別にいいかなぁ。ヤりたくなるほどじゃねぇもん」
「へえ、そう」
今の実力なら妥当とドリアドスさんが断言。
知らんかったけどバニーは下位の特級だって。
こんなふざけた奴がかよ。
「……微妙とか。……テクなさそうとか、ひでぇ」
「……嬉しいような悲しいような」
マミヤとブルクスはバニーに狙わなくてすんだくせに落ち込んでる。
「俺は小尻ちゃんがいいわ。おー!ぷにぷにぃ」
「わー!触んな!」
俺の尻を追いかけるな!
「めんどくさ。来い、ラオ」
「持ち上げんな!おろせ!」
チイネェ達みたいに脇を抱えんな!
「助けてやってんのに文句言うなよ、チビすけ」
「あーあ、ドリちゃんにも気に入られてるのか。ガルちゃんもだし。でも酒飲ませりゃヤれそうだよね」
「あん?聞いてたのか」
「まあねぇ、仕事柄」
「はは、やってみろよ。三人がかりで殺られるわな」
「そうなんだよねぇ。てか、ぐだぐだで使いもんにならないのもなぁ。お互い楽しまないとヤる意味ねぇしぃ」
「なんでそんなのにこだわるんですか?」
ドン引き。
ぼろっと愚痴っぽくこぼした言葉にバニーがにぃっと嬉しそうに笑う。
「上に行く奴って癖があるのよ?ヤるとおもしれぇし、マジで天国行ける奴ばっか。経験ない?」
「ねぇっすよ」
「あは、ヤってみなよ。あと独りよがりでつまんねぇセックスする奴は組まない方がいいね。戦い方とおんなじだからさ。自己チュー、自己マンのくず。手柄横取りされるし、いざとなりゃぁ捨てて行きやがる。どんなに取り繕っても本性がセックスに出るんだよねぇ」
「変わった持論ですね」
「マジな話よ?俺は前衛も後衛もするから相手の癖が分かると組んでてやり易いし、がっちりハマると戦闘の最中もめっちゃ興奮して気持ちいいの。ロクロさんとシーダは最高だったね。セックスも何もかもね」
何がどう良かったとペラペラ話すから手を振った。
「身内の話は勘弁してください」
「あは、そう?で、どこ行くの?この先なら湯屋か?俺も行こうっと」
「ついてくんな」
俺が口を開く前にドリアドスさんが一言。
「いーじゃん。そうだ、お前らには良い店の情報教えてやるよ」
ブルクスとマミヤを捕まえて花街の話をペラペラ。
懐事情はともかく、なんで一目見ただけで好みのタイプが分かるんだよ。
ブルクスにボンキュンボンのお色気お姉さん、マミヤには清楚なスレンダー美女の多い店を教えてる。
「お前らが行けそうな金額ならあの辺よ。行ってみ?そうだ、これやるよ。見せれば俺の紹介って分かるから。ちょうど二人分ある」
手のひらサイズの豪華な装飾の紙をヒラヒラと見せる。
「良いんですか?!」
「何それ」
知らんけど上客にだけ配る優待券らしい。
高い部屋とか酒とかオマケがついてくるし、金額も安くなるって。
……上客って。
そんなんまで持ってんのかよ。
下半身、元気すぎんか?
「じゃあ、これは風呂の帰りに渡すわ。あーそうだ。他の店のもつけてやろうかなぁ」
また色の違う紙を出して見せびらかしてる。
「「ありがとうございます!」」
二人の喜びようがすげえ。
なるほど。
グラナラさんは二人の好みからめたくそ外れてんのね。
……て、ちょっと待て。
「よーし、行こうぜぇ。小尻ちゃーん。お兄ちゃんが全身洗ってやるよぉ」
ふおお!ぞわっとするぅ!
「邪魔だ。帰れよ。チサキに知れたらめんどくせぇ」
「ドリちゃんには仕事の話を振ってやるってぇ。隣街の話を仕入れてきたから譲ってやるよ。ドリちゃんの教え子に回すのにちょうどいいのあるのよ?相変わらず前衛の二人組が多いんだろ?」
この街から隣街への護衛。
他の熟練パーティーとの共闘で危険も少ないと提示した。
「へぇ、いい耳を持ってるなぁ」
「話詰めながら風呂もいいんじゃない?しっぽりとさぁ。あは」
「先に話を詰めてからならいいぜ。偶然、俺らもお前も行き先が同じだけだしなぁ」
「じゃあ、先に行きなよ。伝達屋に寄ってから行くわ」
依頼を受けたパーティーに推薦入れといてやると立ち去った。
三人とも、また後で、とほくほくしながら手を振ってる。
「……ブルクス、マミヤ。……てめぇら。……あんたまで、俺をあいつの餌にしやがったな」
ごめんと言いつつ鼻の下を伸ばす二人。
「ご苦労さん」
にぃっと睨み付ける俺を抱えたまま蜥蜴が笑った。
またベッドで雑魚寝かと思ったら今日はラグで雑魚寝だ。
なんで俺はドリアドスさんの腹の上で寝てるんだ。
「……ん?起きたか?」
「……お"はよう、ござい"ま"す。うっぷ、ううっ」
「俺の上で吐くな」
脇に抱えられて外へ連れ出された。
「うおえええっ」
「ざまぁみろ」
這いつくばって苦しむ俺をせせら笑うくせに世話焼きだ。
屈折してんな、この蜥蜴。
またグラナラさんの回復でまともになった。
二度と飲みたくねぇ。
本当に酒は合わねぇんだ。
朝飯を済ませたら全員が手荷物から手拭い出してる。
「よし、風呂行くぞ」
「は?風呂?」
チイネェ達が朝食の後片付けしておくから先に行けと家を追い出された。
なんで風呂?と首をかしげてたらドリアドスさんが俺を見て呆れている。
「昨日お前が行きてぇつったんじゃん。大浴場。また記憶ねぇの?」
「……ない」
「ぶはは!お前って本当に酒だめだわぁ!あっはは!」
「……ひどかったよ、俺達のちんこ見たいって騒いで」
「うそっ!?」
げんなりのマミヤに叫んだ。
「マジよ?」
「本当だよ」
そうそうと三人で頷いてる。
「……うわぁ、変態だ。気持ち悪ぅ」
「言ったのラオだよ。言われて気色悪いのはこっちだ」
「あー、すいませんでした。……だからグラナラさんが視線をそらすわけね」
マミヤに睨まれて素直に謝った。
グラナラさんが朝から俺を見て赤い耳をピコピコさせてた理由も納得。
「そういうの苦手だし」
「あいつ、アホだぞ。自分にはないって落ち込んでた」
「は?何の冗談?」
「……グラナラは普段からアホの子だから。……てか、特級の鬼人と上級の魔女に絡まないでほしい。あいつ死ぬかも」
庇いきれないとため息をこぼす。
「意外と行けるんじゃね?なぁ、ラオは大人しいタイプが好きなんだろ?グラナラはありだよな?」
「ああん?」
「やめろ!バカ!」
「いで!」
マミヤが手を振ったら、ぱこんとブルクスの後頭部からいい音。
「無神経だろ。あいつの気持ちも考えろよ」
「いてて、さーせん。でもさ、グラナラがアホなのは知ってたけど、チサキさんとオルカさんも大概だよなぁ。二人も自分にはないって落ち込んでたから」
「は?バカじゃね?」
何それ。
「元凶はお前だろうが。三人ともお前が男色かとビビってたんだよ。おかげで俺が殴られた」
「え?なんでドリアドスさんが?」
「八つ当たり。昨日、お前は俺の上に乗っかって脱がそうとするし。このアホが」
「うわぁ、ひでぇ」
俺、最悪じゃん。
「で、ロブさんが好みなんだろ?」
「は?なに?」
にやーって笑うブルクスに眉をひそめた。
「言ってたね、ロブさんが好きって」
それに対してマミヤも頷くし。
昨日、俺は本当に何を言ったの?
「人としてですよ」
一番まともじゃないか。
そう答えたらドリアドスさんが微妙な顔をする。
「……まともねぇ」
どういうことかと思ったらまともじゃなかったわ。
まともじゃないってか、かなり普通と違う。
もとは王都の娼館で売れっ子調教師してたって。
その手の有名人。
「……わお」
通りで人たらし。
「身受けされるのは性に合わないって自分の稼ぎで店を持ってんの。美容や整体に詳しいのも経験だな。いくつも店を持ってるし、弟子も多い。……って、これも昨日も話したわ。覚えてないのかよ?」
「全くですね」
欠片も心当たりがない。
「あぶねぇな。大して飲んでないのに。持ち帰られるぞ」
「そうですね。飲まないようにします」
バニーみたいな変態がいるのを思い出した。
「混ぜられても分かんないんじゃない?ラオは」
ブルクスに言われて、うっと声が詰まった。
「そういう心配もあったな。まあ、回りに知られないように気を付けろよ。お前らも黙っとけ。なんかあったら親父さん達が、」
「小尻ちゃーん!今日もお尻が小さいねぇ!」
「ぎゃー!」
往来のある道のど真ん中でいきなり後ろからケツを捕まれた。
「あん?げ、バニーか」
へらへらのチャラ男だ。
「な!なんであんたが!チイネェに殴られたくせにまだ俺を構うのかよ!」
「俺って努力家だからぁ」
「ふざけんな!」
「お前、やべぇ奴に絡まれてんなぁ」
「やっほー!ドリちゃん、たまには俺とどうよ?」
「やだよ」
「あはは、楽しませるのにぃ」
「てか、なに?お前、こいつを気に入ったの?初級なのに?」
「らしいね。掲示板見たよ。でもそれを見る前から気に入っちゃってさぁ。一目見てビビって来た。チサキのペットだからだと思ったけど、ロクロ達の秘蔵っ子だってね。やっぱり俺って見る目あるぅ」
「へぇ、相変わらず冴えてるじゃん。良かったな、ラオ」
「何がいいんだよ!」
「こいつ、勘が良くてさ。階級関係なく能力高い奴とヤりたがるの。腕の良い奴見るとムラムラすんだって。変わってるよなぁ」
「あはぁ、所属しててもよそのパーティーに呼ばれるしソロも多いからねー。前衛も後衛もやるから。なんでも勘が良くないと。目利きって大事よー?ねー、小尻ちゃーん」
「発情すんのは迷惑だがな」
「やめろ!寄るな!」
「なぁ、こいつらはどうよ?」
「えー?なに?どれ?」
ドリアドスさんが固まるマミヤ二人を指した。
「……んー、悪くはないけど、ムラムラしそうでしないや。あと二、三年見ないと分かんないかなぁ」
「中級まではありってことか」
「そのくらい軽く行くんじゃない?あー、こっちの短髪は微妙。伸びしろありそうだけど、テクなさそう。両方とも別にいいかなぁ。ヤりたくなるほどじゃねぇもん」
「へえ、そう」
今の実力なら妥当とドリアドスさんが断言。
知らんかったけどバニーは下位の特級だって。
こんなふざけた奴がかよ。
「……微妙とか。……テクなさそうとか、ひでぇ」
「……嬉しいような悲しいような」
マミヤとブルクスはバニーに狙わなくてすんだくせに落ち込んでる。
「俺は小尻ちゃんがいいわ。おー!ぷにぷにぃ」
「わー!触んな!」
俺の尻を追いかけるな!
「めんどくさ。来い、ラオ」
「持ち上げんな!おろせ!」
チイネェ達みたいに脇を抱えんな!
「助けてやってんのに文句言うなよ、チビすけ」
「あーあ、ドリちゃんにも気に入られてるのか。ガルちゃんもだし。でも酒飲ませりゃヤれそうだよね」
「あん?聞いてたのか」
「まあねぇ、仕事柄」
「はは、やってみろよ。三人がかりで殺られるわな」
「そうなんだよねぇ。てか、ぐだぐだで使いもんにならないのもなぁ。お互い楽しまないとヤる意味ねぇしぃ」
「なんでそんなのにこだわるんですか?」
ドン引き。
ぼろっと愚痴っぽくこぼした言葉にバニーがにぃっと嬉しそうに笑う。
「上に行く奴って癖があるのよ?ヤるとおもしれぇし、マジで天国行ける奴ばっか。経験ない?」
「ねぇっすよ」
「あは、ヤってみなよ。あと独りよがりでつまんねぇセックスする奴は組まない方がいいね。戦い方とおんなじだからさ。自己チュー、自己マンのくず。手柄横取りされるし、いざとなりゃぁ捨てて行きやがる。どんなに取り繕っても本性がセックスに出るんだよねぇ」
「変わった持論ですね」
「マジな話よ?俺は前衛も後衛もするから相手の癖が分かると組んでてやり易いし、がっちりハマると戦闘の最中もめっちゃ興奮して気持ちいいの。ロクロさんとシーダは最高だったね。セックスも何もかもね」
何がどう良かったとペラペラ話すから手を振った。
「身内の話は勘弁してください」
「あは、そう?で、どこ行くの?この先なら湯屋か?俺も行こうっと」
「ついてくんな」
俺が口を開く前にドリアドスさんが一言。
「いーじゃん。そうだ、お前らには良い店の情報教えてやるよ」
ブルクスとマミヤを捕まえて花街の話をペラペラ。
懐事情はともかく、なんで一目見ただけで好みのタイプが分かるんだよ。
ブルクスにボンキュンボンのお色気お姉さん、マミヤには清楚なスレンダー美女の多い店を教えてる。
「お前らが行けそうな金額ならあの辺よ。行ってみ?そうだ、これやるよ。見せれば俺の紹介って分かるから。ちょうど二人分ある」
手のひらサイズの豪華な装飾の紙をヒラヒラと見せる。
「良いんですか?!」
「何それ」
知らんけど上客にだけ配る優待券らしい。
高い部屋とか酒とかオマケがついてくるし、金額も安くなるって。
……上客って。
そんなんまで持ってんのかよ。
下半身、元気すぎんか?
「じゃあ、これは風呂の帰りに渡すわ。あーそうだ。他の店のもつけてやろうかなぁ」
また色の違う紙を出して見せびらかしてる。
「「ありがとうございます!」」
二人の喜びようがすげえ。
なるほど。
グラナラさんは二人の好みからめたくそ外れてんのね。
……て、ちょっと待て。
「よーし、行こうぜぇ。小尻ちゃーん。お兄ちゃんが全身洗ってやるよぉ」
ふおお!ぞわっとするぅ!
「邪魔だ。帰れよ。チサキに知れたらめんどくせぇ」
「ドリちゃんには仕事の話を振ってやるってぇ。隣街の話を仕入れてきたから譲ってやるよ。ドリちゃんの教え子に回すのにちょうどいいのあるのよ?相変わらず前衛の二人組が多いんだろ?」
この街から隣街への護衛。
他の熟練パーティーとの共闘で危険も少ないと提示した。
「へぇ、いい耳を持ってるなぁ」
「話詰めながら風呂もいいんじゃない?しっぽりとさぁ。あは」
「先に話を詰めてからならいいぜ。偶然、俺らもお前も行き先が同じだけだしなぁ」
「じゃあ、先に行きなよ。伝達屋に寄ってから行くわ」
依頼を受けたパーティーに推薦入れといてやると立ち去った。
三人とも、また後で、とほくほくしながら手を振ってる。
「……ブルクス、マミヤ。……てめぇら。……あんたまで、俺をあいつの餌にしやがったな」
ごめんと言いつつ鼻の下を伸ばす二人。
「ご苦労さん」
にぃっと睨み付ける俺を抱えたまま蜥蜴が笑った。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる