鬼人の姉と弓使いの俺

うめまつ

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50,お勉強のやり直し

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「……勘はいい」

ボソッとドリアドスさんが俺の顔を残念そうに眺めながら呟いた。

「どうも」

「これでチサキのペットじゃなければなぁ」

「ペット言うな」

このクソ蜥蜴。

「じゃあ、お前は何よ?マジもんの混じりっけがねぇし、マーキングされまくりで弟とは言えねぇ」

「チイネェが訳の分からない暴走してますけど弟ですよ」

いつも言うけど混じりっけって何よ?

試しに聞いても渋い顔で唸るばっか。

「親父さん達から生まれのこと、何て聞いてんの?」

「人族の母が最後だからって俺を産んだそうです。それ以外知りません」

「……そうだな。……まあ、お袋さんには似てるかなぁ」

じーっと俺の顔を眺めてポツリと呟いた。

「え、マジ?」

「あ?」

「知ってるんですか?お袋のこと」

唐突な話に胸がバクバクしてる。

「おう。顔はな。シーダが生まれた頃、近く寄ったから遊びに行った」

「マジで?」

「マジよ?」

「へぇ、チイネェより親父との方が付き合い長いんですね」

「親父さんが俺よりちょい先輩。知り合ったのは長いけど組んだ回数ならチサキとの方が多いぞ。俺の活動はこの辺だし。寒いところは無理」

爬虫類の体質的に寒冷地は無理だもんね。

親父達は得意だけど。

「……それで母と会って、どんな人でした?」

「知らね。顔を見てちょっと挨拶しただけだし。……でもニコニコ笑ってたな。一般人はドラゴニュートにビビるのに気にしてなかった。肝が座ってると思った。まあ、鬼人と結婚するくらいだしなぁ」

「なんか他には?」

もう少し聞きたくてにじり寄るともう一度、知らね、と短い返事が返ってきた。

「ちょっと会ってシーダを抱っこさせてもらったたけだし」

「……そうですか。でもありがとうございます。久しぶりに母の話が聞けました」

話が物足りなくてがっかりしたけど仕方ない。

頭を下げてお礼を言うとウーンと唸っていた。

「まぁ、いいや。お前んちのことだし。がっつり釘を刺されたから俺からは言えねぇ。そろそろギルドに行くぞ」

「依頼の解除ですか?」

「そう。それとこいつらの座学の申し込み。お前もやる?」

三人を親指で指して立ち上がる。

俺達もすぐにドリアドスさんに倣って動く。

落ち込んだ三人の足取りが遅い。

ドリアドスさんと並んで話を続けた。

後ろが気になるけど話し合いはパーティーでした方がいいし、俺も含めて三人それぞれに責任がある。

「座学と言うと、筆記の授業もあるんですか?」

上を見上げるとドリアドスさんが、そうそうと頭を揺らしてる。

「珍しいだろ?お前のところは土地柄のせいでないよな。ここのギルドは午前中に申し込んで午後いちで受けられる」

交易都市のここと比べてうちは僻地だから他所より初級の冒険者が少ないらしい。

モンスターが強いし、街は大きいけど端っこの田舎だし、人の流れが少なくて中堅の階級か地元に根付いた冒険者ばっか。

だからそういうのしてないんだって。

知らんかった。

「そういうのあるんだ」

受けてみようかな。

どうせ1日暇だし。

「説明を聞いてから受けてみます」

「おう、そうしな」

「それで、ドリアドスさんはもう俺のこといいんですか?」

すっげームカついてたじゃん。

「それを聞くわけ?ぶっちゃけ、ぼっこぼこに殴りてぇのと気に入ってるので半々よ?あー、でも殴りたい方が大きいかな」

「マジですか」

うわ、家に帰りてぇ。

「マジよ、マジ。でも俺の生徒だし、お前の後ろもこえぇし。今のところ我慢だわ。今のところね?」

気が向けば殴るってことか。

「うわー、こわ。うおおっ」

「……気を付けろよ?俺をこれ以上怒らすなよ?」

いきなり強く肩を捕まれてねめつけられるし、がしゃがしゃと鱗が鳴るからビビる。

耳元でフシャーッて荒い鼻息も。

「気をつけます」

……って、言うったってね?

どないしろと?
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