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47,やり込められた
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悔しいけど朝飯はちゃんと作った。
最近、食事が偏りすぎてる。
どこの店に行っても同じメニューしか頼まないし、酒ばっかり。
朝飯を一品くらい作れと言ったら、箱に入れておいた生で食える野菜をそのまま皿に置いた。
ふざけてるのかと言いたい。
でも親父もダイネェもそんなもんだから怒れない。
塊で焼いた肉と生の野菜をモリモリ食べる。
鬼人族に伝わる大陸向こうの料理で生肉や生魚を食べるんだけどそれも大好きだし。
火を通さないと食べられない野菜だって平気。
毒のある食材も。
他の種族なら死ぬかもしれないのに舌が痺れて旨いとか言う。
マジもんの雑食。
全く好き嫌いはないからいいけど。
そこら辺はチイネェと違う。
極端な雑食と言われる鬼人なのにチイネェだけ偏食。
だからチイネェの体格はダイネェより一回り細い。
親父の半分。
俺の飯で結構、大きくなったけど。
「偏食、治しなよ」
テーブルの向かいで食べるチイネェにそう伝えた。
「あんたがいるから」
「た、」
短命種だと言おうとしてやめた。
俺が死んだあとはどうするのって意味だから。
気にしてるのは俺じゃないし、過保護が行きすぎるのはそのせい。
シモの遊びはきっと鬼人の性分だ。
「何?」
「何もないよ」
「ふーん」
「それより、ちょっかいやめて。恥じらいがないのも嫌いだ」
性欲余ってんならよそで使え。
俺で発散するな。
でも花街へ行くチイネェを想像してへこむし、ロブさんと絡むチイネェがパッと頭に浮かんでそれも気持ちが沈む。
それもどうかと思う。
今までチイネェが結婚するの待ち遠しかったのに。
「嫌いなの?」
「嫌いだよ」
「おっぱい大好きなのに?」
「ぐっ、そ、そうだよ」
「好きだもんね。おっぱい」
「違うってば。嫌いだっつーてるの。恥じらいがないのが。みっともなくベロって出すな。女なんだからそういう単語を連呼するな」
「喜んでたのにねぇ」
「うるさいっ」
にやぁっとまた意地悪く口角が上がってる。
それをムッとして睨み返した。
「もういい。それよりドリアドスさんが遊びに来たいって」
「ドリアドス?なんで?」
「知らない」
話さえ変わればそれでいいし、俺は理由なんか聞いてない。
「ふーん、好きにすれば?」
「言っとく」
興味なさそうに頷いて朝飯を食べ終えた。
俺は食後に昨日のクッキーを一枚摘まむ。
昨日から食べたかったんだ。
「うおおお、うまっ」
優しい甘さと酸味の聞いたフルーツの爽やかな香り。
半分齧ると鼻から香りが抜けて口の中でホロホロと溶ける。
生地の甘さとフルーツの酸味が味と香りを濃くしてる。
こんなの初めて。
「うまぁぁっ」
チイネェも食べなよと勧めると眉をしかめて、半分残した手元のクッキーを見てる。
それから顔を寄せてまた口を開けてた。
またかよと思いつつ新しいクッキーを箱から取ろうとしたらチイネェが箱の上に手を被せて蓋をした。
「それ、ちょうだい。小さいのがいい」
「え、食いかけ」
「いい」
手首を掴んで引っ張ったら、バクっと一口。
指ごと食うな。
しかも食べると渋く顔を歪めた。
「別々がいい。クッキーとドライフルーツ」
「今度はそういうのを選びなよ」
プレーンがいいならそっちを買えばよかったんだ。
「あんたはこのドライフルーツが好きじゃん」
そう言われたら俺は何も言えなくなった。
俺に合わせたのかと思ったら嬉しいのと気恥ずかしいので顔がぐちゃっと歪んだ。
チイネェは口直しに飲料用の薄いワインを飲んでいて俺のことに気づいてなかった。
最近、食事が偏りすぎてる。
どこの店に行っても同じメニューしか頼まないし、酒ばっかり。
朝飯を一品くらい作れと言ったら、箱に入れておいた生で食える野菜をそのまま皿に置いた。
ふざけてるのかと言いたい。
でも親父もダイネェもそんなもんだから怒れない。
塊で焼いた肉と生の野菜をモリモリ食べる。
鬼人族に伝わる大陸向こうの料理で生肉や生魚を食べるんだけどそれも大好きだし。
火を通さないと食べられない野菜だって平気。
毒のある食材も。
他の種族なら死ぬかもしれないのに舌が痺れて旨いとか言う。
マジもんの雑食。
全く好き嫌いはないからいいけど。
そこら辺はチイネェと違う。
極端な雑食と言われる鬼人なのにチイネェだけ偏食。
だからチイネェの体格はダイネェより一回り細い。
親父の半分。
俺の飯で結構、大きくなったけど。
「偏食、治しなよ」
テーブルの向かいで食べるチイネェにそう伝えた。
「あんたがいるから」
「た、」
短命種だと言おうとしてやめた。
俺が死んだあとはどうするのって意味だから。
気にしてるのは俺じゃないし、過保護が行きすぎるのはそのせい。
シモの遊びはきっと鬼人の性分だ。
「何?」
「何もないよ」
「ふーん」
「それより、ちょっかいやめて。恥じらいがないのも嫌いだ」
性欲余ってんならよそで使え。
俺で発散するな。
でも花街へ行くチイネェを想像してへこむし、ロブさんと絡むチイネェがパッと頭に浮かんでそれも気持ちが沈む。
それもどうかと思う。
今までチイネェが結婚するの待ち遠しかったのに。
「嫌いなの?」
「嫌いだよ」
「おっぱい大好きなのに?」
「ぐっ、そ、そうだよ」
「好きだもんね。おっぱい」
「違うってば。嫌いだっつーてるの。恥じらいがないのが。みっともなくベロって出すな。女なんだからそういう単語を連呼するな」
「喜んでたのにねぇ」
「うるさいっ」
にやぁっとまた意地悪く口角が上がってる。
それをムッとして睨み返した。
「もういい。それよりドリアドスさんが遊びに来たいって」
「ドリアドス?なんで?」
「知らない」
話さえ変わればそれでいいし、俺は理由なんか聞いてない。
「ふーん、好きにすれば?」
「言っとく」
興味なさそうに頷いて朝飯を食べ終えた。
俺は食後に昨日のクッキーを一枚摘まむ。
昨日から食べたかったんだ。
「うおおお、うまっ」
優しい甘さと酸味の聞いたフルーツの爽やかな香り。
半分齧ると鼻から香りが抜けて口の中でホロホロと溶ける。
生地の甘さとフルーツの酸味が味と香りを濃くしてる。
こんなの初めて。
「うまぁぁっ」
チイネェも食べなよと勧めると眉をしかめて、半分残した手元のクッキーを見てる。
それから顔を寄せてまた口を開けてた。
またかよと思いつつ新しいクッキーを箱から取ろうとしたらチイネェが箱の上に手を被せて蓋をした。
「それ、ちょうだい。小さいのがいい」
「え、食いかけ」
「いい」
手首を掴んで引っ張ったら、バクっと一口。
指ごと食うな。
しかも食べると渋く顔を歪めた。
「別々がいい。クッキーとドライフルーツ」
「今度はそういうのを選びなよ」
プレーンがいいならそっちを買えばよかったんだ。
「あんたはこのドライフルーツが好きじゃん」
そう言われたら俺は何も言えなくなった。
俺に合わせたのかと思ったら嬉しいのと気恥ずかしいので顔がぐちゃっと歪んだ。
チイネェは口直しに飲料用の薄いワインを飲んでいて俺のことに気づいてなかった。
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