26 / 105
26,三人の懐事情
しおりを挟む
街についてギルド直営の解体屋に獲物は渡した。
解体屋の受付が預けた俺達の依頼書を見て、それに沿ってモンスター名や肉や素材の状態のランクを記入してもらう。
ここで書類をもらったら次はギルドへ。
肉と素材のランクが良かったのでボーナスもついた。
これでパーティーの依頼が終わったと思ったら、三人は報酬を辞退すると言い出した。
何もしてないから資格がない、もう一度三人で頑張りたいって。
態度が悪くてパーティーを荒らした自覚かあるから別にいいと言うのに、三人は頑固だしドリアドスさんは好きにしろと言って報告にギルドの2階へ行ってしまった。
しばらく考えて依頼については了承した。
俺が受け取りのサインをしてる間にマミヤは辞退の手続き。
帰ろうとしたので三人を呼び止める。
「グラナラさん、回復お願いします」
手を出すとグラナラさんが回復をかけてくれた。
「お礼です」
今回の報酬。
受付に頼んで俺の取り分とパーティーの取り分で二つに分けてもらっていた。
なのでパーティーの分をグラナラさんの広げていた手に丸投げした。
「え?!」
「今回は三人の同行のおかげです。ありがとうございました。討伐は確かに自分だけなので俺の手柄にさせてもらいますけど」
ついでにボーナスは丸っと貰うわ。
「受け取れないよ。だめだよ、ラオ」
「俺達に資格はないから」
「グラナラさんへ回復のお礼ってことで。これでグラナラさんの薬草代の補填をしてあげてください。この一袋でも足らないから」
「え?」
何のことだと聞かれて説明したら驚いていた。
二人も魔法関係は問題外でそんなにお金を注ぎ込んだと分かってなかった。
「知らなかったよ。ラオは薬草にも詳しいのか?」
「そんなに知りませんよ。でもギルド直営の修理屋をやってると品物の相場はよく耳にするんです」
マミヤの問いにそう答えた。
仕事で店や作業場とか出入りするし、道具の修繕とかも。
感嘆のため息こぼして、次にグラナラさんを見て呆れている。
「……グラナラ、言ってくれないと困るよ」
横でブルクスも頷いた。
二人から叱られている空気の中、おどおどと縮こまるグラナラさんに同情してマミヤに話を振った。
「でもさすがにこういう魔法の専門材料は高いって分かるでしょ?」
「……そう思ってグラナラに尋ねたら、たいした額じゃないと答えたんだ」
「俺も聞いたんだよ。高かったろうって。でも大丈夫だって」
二人とも呆れなのか何なのかますます悲しそうに項垂れて戸惑いを隠せてない。
その横で涙を浮かべて恥ずかしそうなグラナラさん。
この子、逆サバの悪い癖がある。
初めて見たわ。
「……役に立とうと頑張ったんでしょうね。身銭切るほど」
どうやらグラナラさんはほぼ無一文、ミヤマとブルクスもギルドの回復魔法と武具の修繕でカツカツらしい。
「ギルドの直営店で買ったのなら返品の相談をしてみてください。返品はだめでも買い取りはしてくれるかもしれません」
普通はどちらもだめだけど。
特に魔法関係の専門素材は生産から販売まで管理が厳しい。
基本的に客である魔法使いの手に渡った物は引き取らない。
客が魔法使いってのが引き取りを躊躇する理由。
モノによっては魔法使いの魔力で良くも悪くも変異するし、訳の分からんものの側に置いて影響受けたり。
危ないし、鑑定しても再販の売り物にならない場合が多いから。
でもこれは単純な素材だし、今朝買ったばかりだから大丈夫かも。
地元の店は付き合いの長い取引相手や新人魔法使いの失敗なんかならこっそり受け付けてる。
「個人店への持ち込みはやめた方がいいですよ。タダ同然だから」
ギルド直営店がだめでもどこかと相談を始めたから止めた。
それなら自分達で使う方がいい。
ついでに、お金はいるでしょと言うと、戸惑ってたけど、結局頭を下げて受け取った。
「何から何まですまない」
基本的にマミヤが代表。
聞いてなかったけどリーダーかな。
「いえ、今後ともご贔屓に。これを機に残りの一週間を仲良くしてください」
もとはギルド仕込みの商売人ですから。
お客のあしらいも仕事の内。
「それと今日は喧嘩腰ですいませんね。無印が生意気でした」
「恥ずかしいからやめてくれ。ソロであれだけ動くなら用心深いのも納得したよ」
「ご理解いただき感謝します。じゃぁ、また明日広場で」
「あ、ああ。また明日もよろしく」
軽く会釈したらさっさとギルド内の口座の一角に並んだ。
こんな重いの持ってうろつきたくない。
鴨ネギだ。
ソッコーで強盗に遇うわ。
窓口で必要な分だけ抜いたら全部口座に丸投げ。
手続きを終えてロビーを見渡すと三人の姿はなく帰ったらしい。
ロビーの椅子に座ってチィネェを待つことにした。
午後の真ん中の鐘が鳴る頃にギルドへ来るって言ってた。
解体屋の受付が預けた俺達の依頼書を見て、それに沿ってモンスター名や肉や素材の状態のランクを記入してもらう。
ここで書類をもらったら次はギルドへ。
肉と素材のランクが良かったのでボーナスもついた。
これでパーティーの依頼が終わったと思ったら、三人は報酬を辞退すると言い出した。
何もしてないから資格がない、もう一度三人で頑張りたいって。
態度が悪くてパーティーを荒らした自覚かあるから別にいいと言うのに、三人は頑固だしドリアドスさんは好きにしろと言って報告にギルドの2階へ行ってしまった。
しばらく考えて依頼については了承した。
俺が受け取りのサインをしてる間にマミヤは辞退の手続き。
帰ろうとしたので三人を呼び止める。
「グラナラさん、回復お願いします」
手を出すとグラナラさんが回復をかけてくれた。
「お礼です」
今回の報酬。
受付に頼んで俺の取り分とパーティーの取り分で二つに分けてもらっていた。
なのでパーティーの分をグラナラさんの広げていた手に丸投げした。
「え?!」
「今回は三人の同行のおかげです。ありがとうございました。討伐は確かに自分だけなので俺の手柄にさせてもらいますけど」
ついでにボーナスは丸っと貰うわ。
「受け取れないよ。だめだよ、ラオ」
「俺達に資格はないから」
「グラナラさんへ回復のお礼ってことで。これでグラナラさんの薬草代の補填をしてあげてください。この一袋でも足らないから」
「え?」
何のことだと聞かれて説明したら驚いていた。
二人も魔法関係は問題外でそんなにお金を注ぎ込んだと分かってなかった。
「知らなかったよ。ラオは薬草にも詳しいのか?」
「そんなに知りませんよ。でもギルド直営の修理屋をやってると品物の相場はよく耳にするんです」
マミヤの問いにそう答えた。
仕事で店や作業場とか出入りするし、道具の修繕とかも。
感嘆のため息こぼして、次にグラナラさんを見て呆れている。
「……グラナラ、言ってくれないと困るよ」
横でブルクスも頷いた。
二人から叱られている空気の中、おどおどと縮こまるグラナラさんに同情してマミヤに話を振った。
「でもさすがにこういう魔法の専門材料は高いって分かるでしょ?」
「……そう思ってグラナラに尋ねたら、たいした額じゃないと答えたんだ」
「俺も聞いたんだよ。高かったろうって。でも大丈夫だって」
二人とも呆れなのか何なのかますます悲しそうに項垂れて戸惑いを隠せてない。
その横で涙を浮かべて恥ずかしそうなグラナラさん。
この子、逆サバの悪い癖がある。
初めて見たわ。
「……役に立とうと頑張ったんでしょうね。身銭切るほど」
どうやらグラナラさんはほぼ無一文、ミヤマとブルクスもギルドの回復魔法と武具の修繕でカツカツらしい。
「ギルドの直営店で買ったのなら返品の相談をしてみてください。返品はだめでも買い取りはしてくれるかもしれません」
普通はどちらもだめだけど。
特に魔法関係の専門素材は生産から販売まで管理が厳しい。
基本的に客である魔法使いの手に渡った物は引き取らない。
客が魔法使いってのが引き取りを躊躇する理由。
モノによっては魔法使いの魔力で良くも悪くも変異するし、訳の分からんものの側に置いて影響受けたり。
危ないし、鑑定しても再販の売り物にならない場合が多いから。
でもこれは単純な素材だし、今朝買ったばかりだから大丈夫かも。
地元の店は付き合いの長い取引相手や新人魔法使いの失敗なんかならこっそり受け付けてる。
「個人店への持ち込みはやめた方がいいですよ。タダ同然だから」
ギルド直営店がだめでもどこかと相談を始めたから止めた。
それなら自分達で使う方がいい。
ついでに、お金はいるでしょと言うと、戸惑ってたけど、結局頭を下げて受け取った。
「何から何まですまない」
基本的にマミヤが代表。
聞いてなかったけどリーダーかな。
「いえ、今後ともご贔屓に。これを機に残りの一週間を仲良くしてください」
もとはギルド仕込みの商売人ですから。
お客のあしらいも仕事の内。
「それと今日は喧嘩腰ですいませんね。無印が生意気でした」
「恥ずかしいからやめてくれ。ソロであれだけ動くなら用心深いのも納得したよ」
「ご理解いただき感謝します。じゃぁ、また明日広場で」
「あ、ああ。また明日もよろしく」
軽く会釈したらさっさとギルド内の口座の一角に並んだ。
こんな重いの持ってうろつきたくない。
鴨ネギだ。
ソッコーで強盗に遇うわ。
窓口で必要な分だけ抜いたら全部口座に丸投げ。
手続きを終えてロビーを見渡すと三人の姿はなく帰ったらしい。
ロビーの椅子に座ってチィネェを待つことにした。
午後の真ん中の鐘が鳴る頃にギルドへ来るって言ってた。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる