鬼人の姉と弓使いの俺

うめまつ

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26,三人の懐事情

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街についてギルド直営の解体屋に獲物は渡した。

解体屋の受付が預けた俺達の依頼書を見て、それに沿ってモンスター名や肉や素材の状態のランクを記入してもらう。

ここで書類をもらったら次はギルドへ。

肉と素材のランクが良かったのでボーナスもついた。

これでパーティーの依頼が終わったと思ったら、三人は報酬を辞退すると言い出した。

何もしてないから資格がない、もう一度三人で頑張りたいって。

態度が悪くてパーティーを荒らした自覚かあるから別にいいと言うのに、三人は頑固だしドリアドスさんは好きにしろと言って報告にギルドの2階へ行ってしまった。

しばらく考えて依頼については了承した。

俺が受け取りのサインをしてる間にマミヤは辞退の手続き。

帰ろうとしたので三人を呼び止める。

「グラナラさん、回復お願いします」

手を出すとグラナラさんが回復をかけてくれた。

「お礼です」

今回の報酬。

受付に頼んで俺の取り分とパーティーの取り分で二つに分けてもらっていた。

なのでパーティーの分をグラナラさんの広げていた手に丸投げした。

「え?!」

「今回は三人の同行のおかげです。ありがとうございました。討伐は確かに自分だけなので俺の手柄にさせてもらいますけど」

ついでにボーナスは丸っと貰うわ。

「受け取れないよ。だめだよ、ラオ」

「俺達に資格はないから」

「グラナラさんへ回復のお礼ってことで。これでグラナラさんの薬草代の補填をしてあげてください。この一袋でも足らないから」

「え?」

何のことだと聞かれて説明したら驚いていた。

二人も魔法関係は問題外でそんなにお金を注ぎ込んだと分かってなかった。

「知らなかったよ。ラオは薬草にも詳しいのか?」

「そんなに知りませんよ。でもギルド直営の修理屋をやってると品物の相場はよく耳にするんです」

マミヤの問いにそう答えた。

仕事で店や作業場とか出入りするし、道具の修繕とかも。

感嘆のため息こぼして、次にグラナラさんを見て呆れている。

「……グラナラ、言ってくれないと困るよ」

横でブルクスも頷いた。

二人から叱られている空気の中、おどおどと縮こまるグラナラさんに同情してマミヤに話を振った。

「でもさすがにこういう魔法の専門材料は高いって分かるでしょ?」

「……そう思ってグラナラに尋ねたら、たいした額じゃないと答えたんだ」

「俺も聞いたんだよ。高かったろうって。でも大丈夫だって」

二人とも呆れなのか何なのかますます悲しそうに項垂れて戸惑いを隠せてない。

その横で涙を浮かべて恥ずかしそうなグラナラさん。

この子、逆サバの悪い癖がある。

初めて見たわ。

「……役に立とうと頑張ったんでしょうね。身銭切るほど」

どうやらグラナラさんはほぼ無一文、ミヤマとブルクスもギルドの回復魔法と武具の修繕でカツカツらしい。

「ギルドの直営店で買ったのなら返品の相談をしてみてください。返品はだめでも買い取りはしてくれるかもしれません」

普通はどちらもだめだけど。

特に魔法関係の専門素材は生産から販売まで管理が厳しい。

基本的に客である魔法使いの手に渡った物は引き取らない。

客が魔法使いってのが引き取りを躊躇する理由。

モノによっては魔法使いの魔力で良くも悪くも変異するし、訳の分からんものの側に置いて影響受けたり。

危ないし、鑑定しても再販の売り物にならない場合が多いから。

でもこれは単純な素材だし、今朝買ったばかりだから大丈夫かも。

地元の店は付き合いの長い取引相手や新人魔法使いの失敗なんかならこっそり受け付けてる。

「個人店への持ち込みはやめた方がいいですよ。タダ同然だから」

ギルド直営店がだめでもどこかと相談を始めたから止めた。

それなら自分達で使う方がいい。

ついでに、お金はいるでしょと言うと、戸惑ってたけど、結局頭を下げて受け取った。

「何から何まですまない」

基本的にマミヤが代表。

聞いてなかったけどリーダーかな。

「いえ、今後ともご贔屓に。これを機に残りの一週間を仲良くしてください」

もとはギルド仕込みの商売人ですから。

お客のあしらいも仕事の内。

「それと今日は喧嘩腰ですいませんね。無印が生意気でした」

「恥ずかしいからやめてくれ。ソロであれだけ動くなら用心深いのも納得したよ」

「ご理解いただき感謝します。じゃぁ、また明日広場で」

「あ、ああ。また明日もよろしく」

軽く会釈したらさっさとギルド内の口座の一角に並んだ。

こんな重いの持ってうろつきたくない。

鴨ネギだ。

ソッコーで強盗に遇うわ。

窓口で必要な分だけ抜いたら全部口座に丸投げ。

手続きを終えてロビーを見渡すと三人の姿はなく帰ったらしい。

ロビーの椅子に座ってチィネェを待つことにした。

午後の真ん中の鐘が鳴る頃にギルドへ来るって言ってた。
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