鬼人の姉と弓使いの俺

うめまつ

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23,善意の限度

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「これだけの量を高かったでしょ?」

今回の報酬並みじゃん。

「皆のためですもん」

お金貯めてて良かったと無邪気に笑うから戸惑ってしまう。

「……まさか自腹ですか?」

「はい!」

顔が誉めて誉めてとキラキラの輝きが増して眩しさとこの訳の分からなさに固まった。

おいおい。

そんなのパーティーの共同から出せよ。

今回の報酬を俺達四人で分けるから赤字じゃん。

保存がきくから次回に使い回せばいいけどさ。

ソロや飛び入りなら分かるけど、ここの専属だろ?

グラナラさんの負担でかすぎ。

ついでに回復魔法を使ってどのくらいの負担なのか尋ねたら魔力の4分の1も持ってかれて、この干し草を食べる前提だって言う。

そんなもの、ホイホイ使うな。

「この状態で試し打ちしたいからまたあとでお願いします」

正直に話をした。

驚いてたけど放ってドリアドスさんの方へ。

同じことを伝えたら、ふぅんと小さく鼻を鳴らして許可をもらう。

「俺も把握しときたいからやってみろ」

「了解です」

ドリアドスさんの目の前で弓を引いたり、近くの木に射って見せる。

「どんなよ?」

「思ったよりいつも通りです。これより距離があると下手くそかも」

「やってみないと分からない?」

「そうですね」

試したいなら回復なしで過ごせば?と言われてドリアドスさんにも俺の回復を訴えてたグラナラさんがやっと静かになった。

「もう二、三発、背中に入れてやろうか?気合いを入れてやる」

へらへら笑いながらデカイ手のひらを俺に向けて迫ってくるから慌てて断った。

「さすがにもう勘弁ですよ」

「遠慮しなくていいのにー」

からかう顔から本気じゃないのは分かるけどね。

「……私が回復しますのに」

「回復はあの二人を優先してください。要の前衛だから」

「……はい。もちろんお二人にも。でも私はラオさんにもかけてあげたいです。仲間だから」

本当に優しい。

思わず口許が緩んだ。

考え方が緩いだけで、このパーティーはいい奴らなんだよなぁ。

ドリアドスさんの死なせたくないって気持ちも分かる。

おかげで内心のささくれが和らいで俺もしっかり仕事をやろうって気になる。

「ありがとうございます。タイミングを見てこちらからお願いします」

「絶対ですよ?」

「はい、お願いします」

そう返事して、出来れば街に戻ってからよろしくと答えた。

高額な薬草の消費は気が引けるし、安全地帯に戻ってからね。

グラナラさんの負担は減らしたい。

このパーティーの要だ。

そう説明すると、しょんぼりと恨めしげにしていたグラナラさんが驚いてた。

「そんな、に、私のことを、気にかけていただいて。私、回復と探知しか出来ないのに」

「どっちもすごいですよ。グラナラさんのおかげでパーティーの動きが積極的になりますから」

そう言うとグラナラさんの真っ白な肌がカァーッと真っ赤になって長耳がピコピコと激しく揺れた。

「あ、あの、すいません。そんなこと言われたの初めてで。いえ、気を使わせてすいません。社交辞令と分かってるのに、私ったら真に受けて恥ずかしい」

顔を隠しても耳の揺れは相変わらず。

耳まで赤くなってきた。

「本当のことですよ。才能も努力もすごいと思います。飛び入りの俺にずっと親切なのも感謝してます」

俺は魔法は出来ないし。

弓だけだからなぁ。

才能は羨ましいくらいだし、魔法も発動が安定して早いからすごい練習したんだと分かる。

今のうちに万全に整えるという考え方も分かるけど、飛び入りの俺に高額な薬草を消費してまで回復魔法をかけるのはどうかと思う。

このくらい軽傷だし、ホイホイ使うのも微妙。

大人数のパーティーで、ある意味有限の回復魔法は使い時が重要だ。

「はううっ、あ、ありがとうございます!」

大声で頭を勢いよく下げるから圧にビビって後退り。

「いえ、あの、グラナラさんほどの人なら当たり前のことだと思うし、俺は飛び入りですから」

ふと、チリチリとする感覚に目線を向けると男二人は不機嫌に睨みながら駆け寄っていた。
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