鬼人の姉と弓使いの俺

うめまつ

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17,勝ち気と体育会系

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「きも」

「お、おい」

「異種間は両親で分かってるけど、竜種族のドラゴニュートは同種を好むはずだろ。なのに、あんたは性別も構わないのかよ。冗談じゃねぇ」

「ち、ちが、」

「黙ってろよ、蜥蜴のオッサン」

「ラオ、待て。誤解、」

「うるせぇよ、チィネェにも俺にも手ぇ出すな。変な気ぃ起こすんじゃねぇ。両目を射抜くぞ」

肩の弓と矢を握ってきつく睨み付けるとおろおろしてる。

触ろうとする手が気持ち悪くて後ろへ飛びすさった。

「触んな」

「ご、誤解、」

「黙れっつってんだ。昨日のも俺は許してねぇ。あんたは鼻血垂らしたのぞき魔だ。しかもチィネェの手首を腫れるほど絞めやがったくそやろう。マジで俺らにちょっかいかけてみろよ。親父と協力して殺してやる」

茫然と固まったこの蜥蜴を追い越して先を走った。

心臓バクバクしてるけど、それ以上に頭に来てる。

なーにが、兄ちゃんって呼んでいいぞ、だ。

気色わりぃんだよ。

待ち合わせと聞いていた広場に着いたからドカッと側のベンチに座った。

すぐにしょんぼり落ち込んだドリアドスさんも来た。

「あのさ、ラオ。マジで誤解だって」

「何でもいいですよ。ドラゴニュートのあんたが何を好むかなんて。うちらを構うなと言ってるだけです。チィネェも構うなって言ってたでしょ。それよりまだ気が高ぶってるんで放ってくれませんか?」

目も合わさず、すげなく返したら項垂れて頭を抱えてた。

「……お前、チサキそっくりだ」

「姉弟ですから」

嬉しいね。

初めて言われたよ。

視線を自分の足に合わせまま、嬉しくて口許がにやっと緩んでしまった。

この人からは多分、見えてないからいいけど。

しばらく無言でいたら隣にドリアドスさんも座った。

ゆっくり座ったのにぎしっと大きく揺れてドリアドスさんの方に傾く。

ウェイトの差を感じるわ、くそ。

静かに人混みの流れを聞きながらそうやって過ごすと、ドリアドスさんの名前を呼ぶ可愛い声が聞こえた。

「ドリアドスさん、お待たせして申し訳ありません。え?ラオシンさん?」

「おはようございます、グラナラさん」

挨拶するとグラナラさんも返してくれた。

グラナラさんがするから隣の二人も。

「今日から飛び入りのラオだ」

耳の辺りで揃えたさらさらの金髪と青い目の剣士がミヤマ、茶色の髪をボーズに見えるくらい短髪なのがタンクのブルクス。目も髪と同じ色だ。

「ラオシンです。よろしくお願いします。ラオでどうぞ」

頭を下げるとそれぞれ握手。

マミヤさんとグラナラさんから助けたことのお礼を言われた。

「君だったっけ?ごめん、あの時は毒で視力が悪くなってたんだ」

タンクのブルクスは申し訳なさそうに男らしい眉を下げて謝ってる。

「もっと、大きく見えたんだけど」

「……言われてみれば、そうだな」

顔ひとつ以上小さい俺に首をかしげて、小さいと二人で呟いてた。

「……ドリアドスさんと見間違えたんじゃないですか?」

お二人とも180はゆうに越えてますもんねぇぇ!

俺の目線はグラナラさんとほぼ並ぶ。

少し俺がでかいけど。

本当に少し。

ついでに性別を確認された。

ちくしょう。

やっぱりこいつら、無神経でズケズケしてやがる。

「ぶっ」

ドリアドスさんの笑いをジロッと睨んだ。

「人族からも分かりづらい見た目か。俺は分かったけど」

手で隠してるけどニヤニヤしてんのは分かる。

「こいつ、この見た目で18だって」

「ええ?!同い年?!」

「俺の年上?!嘘だろ?!」

「マミヤは18だったな。ブルクスは16だったか。すげえよな、こいつの見かけ。これであの弓の腕してるんだぜ。昨日、練習を見たけどあそこ辺りまで正確に打てる」

「へえ、スゴいですね」

マミヤさん達に俺のことを説明してて口の軽い空気にイラッてきた。

「ドリアドスさん、俺らのことをべらべらしゃべるのはやめてくださいよ。そういうのマジで嫌いなんで。特に姉は嫌がります」

冷たく視線を向けてボソッと言うと、手を振って了承を示した。

「わりぃ」

「俺は後衛を勤めるだけですからね」

仕事以外したくない、こいつらに深入りさせるなって意味。

すんなり伝わって頷いた。

「おう、頼むわ」

「こちらこそ」

「お前って本当にそっくり。はぁ、」

嫌なのか嬉しいのか分かんねぇ顔と態度。

結局、俺を見てにまぁって笑ってる。

キモい。

思わず後ずさった。

「……またか」

「おい、違うぞ。誤解すんな。悪かったって」

気さくに肩を叩こうとするけどよけた。

手に弓を握って見せながら。

「マジで勘弁ですよ。やめてください」

「ちぇ、嫌がんなよ」

親父さんとシーダには似てねぇ、あいつの方に似てると笑った。

「そうですか」

よそを向いてしらっと答えるけど、内心似てると言われるのは嬉しい。

でも見られたくなくて隠した。

この俺のふてぶてしい態度がムカついたのかマミヤさんとブルクスさんはムッとしてる。

「おい、ラオ。ドリアドスさんは教官、」

「で、お前らはどう?行けそう?」

ブルクスさんの言葉を遮ってドリアドスさんが尋ねた。

後遺症はあるかって意味。

体は回復で全快。

だから精神的な意味で。

「大丈夫です!」

「昨日はヘマしましたけどこのくらいでめげません!」

声、でけぇ。

耳にキーンと来た。

それにあんな目に遭ってすげえやる気だな。

メンタル強いわ。
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