鬼人の姉と弓使いの俺

うめまつ

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11,無関心と好奇心

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俺はチィネェ達の家族だと言いたかった。

「俺達は、家族、です。似てないけど、養子じゃない。本当に血の繋がった、チィネェの弟なんです」

睨み合いの中、鼻声でそう答えた。

ちくしょう。涙目。

このやり取りが怖いのと見かけのせいでペット扱いなこと、チィネェ達に助けられるまで死ぬかもと手が震えるほど怖かったこと。

気持ちが溢れたせいだ。

回りが静かになって、ずずっと何度も鼻をすする音が部屋の中に響いて嫌だった。

鱗のざわつきが聞こえなくなるし、俺の情けない鼻水の音だけだ。

チィネェの手が俺の頭を懐に入れて守ろうとしてる。

たかが俺の指導員の話でなんでこんなに揉めたんだろ。

「チサキ、お前のチビは俺のところに置いとけ。悪いようにはしねぇよ」

ドリアドスさんが初めて会った時みたいな雰囲気で話しかけてきた。

「まだ言うわけ?」

「だってこいつ、このまま無印の新人にするのか?三年も、ほぼ野良じゃねぇか。上級指導員の俺なら特例の権限を使って最短で階級をあげてやるよ」

「私もあちらのギルドに詳細を確認しますが、いくら単体での階級上げの難しい弓使いとは言え、この子が三年も初級の無印なのは納得出来ません。私は彼のためにドリアドスさんのもとへ置くと言ってるのです」

適正な階級にさせるためにドリアドスの指導とギルドの試験を受けろと二人に言われた。

試験もベテラン指導員のドリアドスさんから推薦されたら特例で臨時試験をギルドで許可できるからって。

それを言われてチィネェと俺は首をかしげた。

「……いや、別に、ランクはいいです」

「……こいつのランクはこのままで構わないけど」

「……はい?」

「あん?」

俺もチィネェの言葉に頷いた。

だって二人で狩りに出るのは俺達にとってただの気晴らし。

俺の本業は修理屋だし、チィネェは弓が上達したから腕試しにつれ回してるだけ。

たまに親父やダイネェとも行く。

俺の上達を見たいからってだけ。

戦闘好きな鬼人の趣味って狩りくらいしかないし、俺を連れてのモンスター狩りは我が家の遊びだ。

「ねえ?」

「うん」

そう説明して二人で見合わせながら頷くと回りがため息をついてた。

「……だからか」

ギルド長は額を掻きながら項垂れて呟いた。

ぶつぶつとギルドの依頼は趣味の範疇だし、護衛のつもりだからこの子と組むことに固執してたのかと。

向こうのギルドが規約をとやかく言わないのも遊びの延長だから許容してたと1人で納得してる。

「チサキ、そいつのランク上げに興味ないのか?」

「ランクは勝手に上がるじゃん」

「まあ、そういう奴もいるけど」

親父達三人は気づいたらこのランクになったから、我が家はギルドの世話になりながらランクを上げるやり方を知らない。

俺も同じ。

ギルドの研修や試験を受けたら上がるのが早くなるって聞くだけ。

やる気ないから突っ込んで聞かない。

「勿体ねぇ。そこそこ行ける。てか、貸せ。新人は前衛ばっかだから後衛がいると助かる」

新人パーティーの引率してて、人気職の前衛ばっか集まるから困ってるって。

「貸さない。全部あんたのせい」

前回も今日もドリアドスさんがひっかき回したからと怒ってる。

俺も気持ち分かる。

変な人だし、気分がコロコロ変わって気持ち悪い。

どういうつもりなのか、今は俺にまで優しく話しかける。

「悪かったよ。本当だと思わなかったんだ。弟がいるなんて初耳だったし。坊主もそんな睨むな。悪かったって」

「そうですね。こちらも把握がありません」

ギルド長が俺の顔をじろじろと眺めて首をかしげていた。

すると目がぽわっと赤く光って、いきなりぞわっと全身に何かが走り総毛立った。

「うおおっ、な、なんだよ」

か、痒い!

体の内側が痒い!
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