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7,早合点な二人組
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お世話になりましたとチイネェに挨拶してる。
俺にもいつか縁があったらパーティーを組みましょうと愛想がいい。
チイネェも今回の同行でグラナラさんを気に入ったみたいで、揉めてごめんねと謝って会話を続けた。
でもグラナラさんの後ろの剣士とタンクの男二人が割り込んでチイネェに挨拶してる。
同席させてほしい、勉強のために話をさせてほしいと熱心。
でもチイネェが二人を受け入れていない空気だと察するグラナラさんはおろおろしてる。
そういう態度を見ていたらチイネェは無表情に三人を眺めて手を振った。
もうあっちに行けって意味で。
でも二人は何を勘違いしたのか手招きだと思い込んで席に座った。
「グラナラも。ほら、早く座れよ」
「え、え?でも、」
「ほら、呼ばれたのに失礼だろ」
呆然と立ち尽くすグラナラさんを引っ張ってチイネェの隣に座らせるから、これにはチイネェも頬杖ついたまま目をしばたかせて固まった。
ちらっと俺を不満そうに見つめるけど、俺も困った顔しかできない。
俺達はもう注文を済ませて目の前に飯が並んだばかり。
しかもボックス席だ。
三人が俺達二人を閉じ込める形で座ってて身動き取れない。
グラナラさんだけ申し訳なさそうに項垂れて、小さくすいませんと呟いていた。
相席と思って諦めよう。
剣士が俺に手元のメニューを取ってくれと頼むから黙って渡した。
二人に話しかけられてもチイネェはエールを煽ってばかりでシカトぶっこいてる。
飯を食う気もなくしたらしい。
いらん、って一言言ってグラナラさんに押し付けてる。
それも有名ランカーからのもてなしと二人は喜んでいた。
「あんた、名前は?」
「……ラオシン」
「聞かないなぁ。なんでチサキさんといるんだ?」
「得物は何を使うんだ?」
諦めて俺に話題を振っている。
色々聞かれるけどこういう図々しい奴らには素性を話したくない。
どうしようと悩んでるうちに気づいたらフォークを置いて食事の手を止めていた。
「帰るよ」
「え?うおお」
ぼんやりしてたら向かいのチイネェが座面に立ってテーブル越しに俺を引っ張って肩に抱えた。
呆然と見上げる三人と店内の人間の視線を無視してでかい体格を生かしてボックス席の衝立ををひょいっと飛び越える。
カウンターにがしゃんと荒っぽく金を置いてさっさと店を出た。
「目立つから下ろしてよ」
「あ、うん」
よほどいら立ってるのか俺がそう頼むまで、肩に乗せたままどすどすと大股で歩いてた。
宿に戻ったらお互いに清拭を済ませて寝ることにした。
さすがに酒ばっかり飲んでたチイネェはお腹が空いたようで持ってきていた非常食のナッツや乾パンを齧ってる。
「なんか食べてくれば?まだ店、空いてるし」
「めんどい」
むすくれていつまでもポリポリ齧ってた。
その間に髪の毛の手入れをしてやる。
持ってきた櫛で髪をすいてやるとじっとして終わる頃には欠伸を始めた。
「寝る」
「ちょい待てちょい待て」
二の腕を引きずられて抱き枕だ。
櫛を片付けようとするのに取り上げられてサイドテーブルに置いてる。
「ねむ、ふああ」
欠伸をしておやすみと言うので何も言わなかった。
機嫌が悪い時はこんなもんだ。
諦めてチイネェの硬い腕枕でさっさと目をつぶった。
って、人が大人しくしてやってんのに、朝からくすぐんな。
遊ぶな。
満足しすぎで肌艶良くなるんじゃねぇ。
俺にもいつか縁があったらパーティーを組みましょうと愛想がいい。
チイネェも今回の同行でグラナラさんを気に入ったみたいで、揉めてごめんねと謝って会話を続けた。
でもグラナラさんの後ろの剣士とタンクの男二人が割り込んでチイネェに挨拶してる。
同席させてほしい、勉強のために話をさせてほしいと熱心。
でもチイネェが二人を受け入れていない空気だと察するグラナラさんはおろおろしてる。
そういう態度を見ていたらチイネェは無表情に三人を眺めて手を振った。
もうあっちに行けって意味で。
でも二人は何を勘違いしたのか手招きだと思い込んで席に座った。
「グラナラも。ほら、早く座れよ」
「え、え?でも、」
「ほら、呼ばれたのに失礼だろ」
呆然と立ち尽くすグラナラさんを引っ張ってチイネェの隣に座らせるから、これにはチイネェも頬杖ついたまま目をしばたかせて固まった。
ちらっと俺を不満そうに見つめるけど、俺も困った顔しかできない。
俺達はもう注文を済ませて目の前に飯が並んだばかり。
しかもボックス席だ。
三人が俺達二人を閉じ込める形で座ってて身動き取れない。
グラナラさんだけ申し訳なさそうに項垂れて、小さくすいませんと呟いていた。
相席と思って諦めよう。
剣士が俺に手元のメニューを取ってくれと頼むから黙って渡した。
二人に話しかけられてもチイネェはエールを煽ってばかりでシカトぶっこいてる。
飯を食う気もなくしたらしい。
いらん、って一言言ってグラナラさんに押し付けてる。
それも有名ランカーからのもてなしと二人は喜んでいた。
「あんた、名前は?」
「……ラオシン」
「聞かないなぁ。なんでチサキさんといるんだ?」
「得物は何を使うんだ?」
諦めて俺に話題を振っている。
色々聞かれるけどこういう図々しい奴らには素性を話したくない。
どうしようと悩んでるうちに気づいたらフォークを置いて食事の手を止めていた。
「帰るよ」
「え?うおお」
ぼんやりしてたら向かいのチイネェが座面に立ってテーブル越しに俺を引っ張って肩に抱えた。
呆然と見上げる三人と店内の人間の視線を無視してでかい体格を生かしてボックス席の衝立ををひょいっと飛び越える。
カウンターにがしゃんと荒っぽく金を置いてさっさと店を出た。
「目立つから下ろしてよ」
「あ、うん」
よほどいら立ってるのか俺がそう頼むまで、肩に乗せたままどすどすと大股で歩いてた。
宿に戻ったらお互いに清拭を済ませて寝ることにした。
さすがに酒ばっかり飲んでたチイネェはお腹が空いたようで持ってきていた非常食のナッツや乾パンを齧ってる。
「なんか食べてくれば?まだ店、空いてるし」
「めんどい」
むすくれていつまでもポリポリ齧ってた。
その間に髪の毛の手入れをしてやる。
持ってきた櫛で髪をすいてやるとじっとして終わる頃には欠伸を始めた。
「寝る」
「ちょい待てちょい待て」
二の腕を引きずられて抱き枕だ。
櫛を片付けようとするのに取り上げられてサイドテーブルに置いてる。
「ねむ、ふああ」
欠伸をしておやすみと言うので何も言わなかった。
機嫌が悪い時はこんなもんだ。
諦めてチイネェの硬い腕枕でさっさと目をつぶった。
って、人が大人しくしてやってんのに、朝からくすぐんな。
遊ぶな。
満足しすぎで肌艶良くなるんじゃねぇ。
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