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第三章

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早朝、先に起きて書斎で仕事をするジネウラのもとへ。

ジネウラに事の詳細を伝えるとこめかみを押さえて俯いた。

小さくため息をつき、ペンをとる。

何か気になるのだろうと書き終えるのを待つ。

ぺらっとこちらに渡す紙を見るとグロリアと恋人への温情を求める陳状だった。

「良いのか?」

別の紙にさらさらと書き記す。

“あれも、父の下半身の犠牲者だから”

“母ひとりに納めなかったのが悪い”

「あれも?」

続けてペンを走らせる。

“私を生んで母は死んだ”

“生ませなければ生きていた”

渋面に頬杖をついて椅子に深く座り直す。

その様子に、自分の生に疑問があるのだと感じた。

3番目の不要な王子と言われ続けた自分に重なるものを感じたが、俺と違いジネウラは強く賢く、優しく生を全うしている。

ふと、険しかった緑の瞳が程なく和らいだ。

ちょいちょいと手招きをされて、顔を寄せろと手振りで求められる。

キスを期待してジネウラに顔を近付けたら、口に手を突っ込まれた。

「い、いねうら?ふぁたなの?」

うっとりと目を細め指で歯列を撫でかりかりと歯茎に爪を立てる。

唇を指で食まれ引っ張られる。

無理やり口を開かされ涎が垂れる。

「あ、あ。いえうあ。」

目を輝かせ興奮している様子のジネウラに、この変態と心の中で呟いた。

ある程度弄って満足したようで、ぱっと手を離してハンカチで手を拭く。

俺は手の甲で垂れた涎をこする。

このまま襲ってやろうとにじり寄ると、呼び鈴を鳴らしてリザリーへ手紙を託す。

興奮した山がバレないように二人に背を向けるしかなかった。

リザリーの退室と、かちゃかちゃと金属のすれる音にふりかえると、ジネウラがニコニコと指に鍵を引っかけて見せびらかしていた。

「鍵を、かけたの?」

緊張する俺の声にイタズラ顔で書斎机に鍵を置いてクスクス笑う。

インク壺を丁寧に蓋を閉めて、出していた便箋や文具を引き出しに。

片付いた机にひょいと腰掛ける。

机の上で靴を脱いでストッキングに包まれた足を向かいの椅子にポンポンと弾ませ、手は俺を手招きする。

ふらふらと寄って椅子に腰掛けると、肘掛けに細い足を掛けて俺を閉じ込める。

目の前にジネウラのスカートが。

ちらっと見上げると熱っぽい視線で俺を見下げてる。

細くなった体に合うものが少なく、パニエもコルセットも必要ないストンと着られるスレンダーなエンパイアドレス。

ストッキングの爪先を撫でながらスカートの裾へ手を入れる。

たどり着いた太もものガーターをぱちんと弾かせるとひくっと反応する。

「ジネウラの変態。」

たまらず大きく裾を捲り上げて足の付け根まで晒す。

いきなりの動きに太ももを閉じたが、閉じた隙間を撫でるとゆるゆると開く。

「なんでドロワーズ履いてないの?うわぁ、もう本当に変態。」

あとでよく考えたらスレンダーなドレスにドロワーズのラインが合わなかったのだろう。

もう、今は何も考えられなくて、産毛に見とれてぶつぶつ変態だぁと呟いていたら、ジネウラの機嫌を損ねて、ぱっと裾を下げて足を引っ込めてしまう。

「ああっ!まって、ごめん、怒んないで。」

足をばってんに交差し、爪先を裾に隠してしまった。

膝に顔を隠して拗ねて、慌てて立ち上がって髪にキスをして謝る。

喋れない分、態度で気持ちを表すようになった。

でも、相変わらず俺に甘くて謝るとすぐに許してくれる。

今もこうしてすんなり顔を上げて顔を引き寄せてキスをしてくる。

キスしながらもう一度、裾を捲り外に晒した太ももをやわやわと掴む。

ふわふわの産毛を指で撫でるとくすぐったそうに笑う。

「くすぐったい?」

楽しそうに笑って頷く。

「いや?」

首を振り、目をとろんと細め声の出ない口をパクパクと動かす。

“もっと”

「うう、ん。ぞくぞくする。」

服の上から胸を揉むと柔らかい感触と小さく丸い突起。

「…これ、無防備過ぎない?」

「…っ。」

ジネウラ本人も驚いたようで、服から主張する突起に顔を赤らめる。

「いくら楽でもコルセットをつけた方が良さそうだね。」

手を交差させて隠す。

追い掛けて触りたいが、まだ薬の効果で昂りやすい。

敏感なところを触ると声が出てしまう。

「着替えておいでよ。ベンの見送りがあるから。」

本当は触りたいと分かるように胸に重ねた腕を撫でると、名残惜しそうに俺の手を両手で大事そうに抱き寄せて頬擦りし、唇を落とす。

俺からの昂りを抑えるようになったら、こうやって甘えてくるようになった。

理性を試されてるのか悩む。

「怪我が治ったら、いっぱいしようね。」

かぷっと親指を噛まれ頷いた。

見つめる潤んだ緑の瞳が虹に輝いて。

スイーツを食べた時よりほころぶ頬に、思わず唇を舐めた。






~終~
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