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第二章

2※ジネウラ

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馬車が止まり、箱詰めのまま運ばれてる。

いや、ずるずると箱は引きずられて移動させられている。

斜めに箱を引っ張られ、足の方が高く頭が重力で箱の片方に寄ってしまい、まだ縛られ力の入らない体では動くことができず、自分の重さで押し潰されている。

「うう、うっ。」

苦しい。

またがたんと衝撃を受けて、再び車輪の揺れが始まる。

ごそごそと狭い箱の中で体を動かした。

ずっと下敷きにしていた腕と肩が痺れて痛かった。

寝返りを打てる広さもなく身をよじるだけしか出来ないが多少和らいだ気がする。

時間の経過は分からなかったが、寒かった太ももの湿りが乾き、多少の外の暑さを感じて日が登り、一晩たったのだと考える。

馬車など馬で全速で走れば追い付く。

当てずっぽではなく馬車を追ってと心底願う。

リザリー、マックス、屋敷の他の使用人達を頭に浮かべ、最も大事な人は頭から追いやった。

「うう、うう。」

思い出せば、怒りより心細さで苦しくなり余計辛かった。

不安を打ち消すように覆面の男を思いだし、何者かと思い更ける。

襲われた時の匂い、手触りを思い出して糸口を探った。

触れた時、上等そうな手触りの服だった。

匂いも不快ではなく清潔感があり、安くない香水の香り。

敷地に領民の通りがあるとは言え、医療班とは別棟の、最奥。

なぜプライベートに侵入できた?

在宅中は、プライベートへの使用人を含めた男の出入りは禁止していた。

特に医者で腹心のマックスさえ許してない。

屋敷に男手が多いのは、領民の出入りに対応して医療班の関わりや護衛を多く配置していたからだった。

そこまで考えれば、上等な身なりの、プライベートへ入っても不可解さのない、出入りが可能な身分の男だが、1人の男が浮かぶ。

王家の使者であるベンだ。

プライベートの反対側、2階の客室に滞在して唯一近づいても目立たない。
 
拐われるだけなら王家の不興で処分を思い付く。
 
だが、箱詰めの際の体をなぶるやり方がベンとは知り合う以前から存在するけだものとは別と思えて、また別の候補を探り続けた。

考え続け、体をぎゅっと縮め、時折来る何度目かの排泄の欲求を堪えた。

考えも尽き果て、最後はジョルジェに思いを馳せる。

優しく遠慮がちなのに、時々我が儘でバカな夫。

意地悪をしても我慢して涙目で受け入れ、かと思うと喉が枯れるほど泣かされた。

出逢った時の、怯えて気遣わしげな目が今は優しく自分を見つめる。
 
体を丸めて手を強く握り、ここにいない寂しさを噛み締めた。
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