うちの妻は可愛い~白豚と戦乙女~

うめまつ

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第一章

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また泣かせた。

さっきまでベンに、ジネウラの為に何かしたいと言ってたのに。

小さい肩が震えてる。

項垂れた首には黄色く薄くなった手形がある。

傷つけてばかりだ。

のろのろとジネウラの側に膝をつく。

「…ジネウラ、薬。どこ?」

顔を涙に濡らし疲れた表情で、引き出しから軟膏入れを取り出して渡してくれた。

蓋を開けて指に掬う。

首に耳、丁寧に。

項垂れた隙間から手を入れて鎖骨に塗る。

何も言わないのに、微かに動いて塗りやすいように体を向けてくれた。

薬を塗る手が徐々に下へ。

それに、合わせて胸元をくつろげていく。

ジネウラは目をつぶって俺の手を受け入れて、何も隠そうとしない。

「…私の体は旦那様だけです。気持ちも。旦那様しか嫌です。触るのも見るのも、旦那様だけ。」

白い胸がこぼれその上に俺の手を引いて被せる。

「…でも、旦那様だけが特別なのに、信じてくれない。どうしたらいいの?もう私、あげるものがない。」

ポロポロと涙が溢れる。

今まで見た冷淡な顔でも淑女らしく微笑む顔でもなく、悲しそうな表情。

申し訳なくて初めてジネウラの胸元の身繕いをする。

でも、触れたくて鎖骨や指に手を添えて滑らせる。

「…ごめん。離したくなくて。嫉妬して酷いことした。」

「私、離れたりしない。」

「ごめん。」

その通りだ。

側にいたがる俺の我儘にいつも付き合ってる。

ここに来て片時も離れていない。

時間も何もかも俺に尽くしてる。

「私は旦那様の妻で、旦那様は私の旦那様でしょう?どうして私を遠ざけるの?どこか行くと思うの?」
 
手の甲で涙を拭う。

俺も、袖で柔らかい皮膚を傷つけないように涙を慎重に撫でる。

「私は結婚が嬉しかったの。私だけの旦那様が出来るから。どんな方かとわくわくした。」

「こんな夫でごめん。醜く太ってておどおどした男にがっかりしたろう。」

「いいえ。白く大きく太ってて、目も合わせてくれなかったけど。それでもよかった。私だけの旦那様だから。」

「あの時ごめん。恥ずかしかったから。俺はバカで屑な乱暴者だ。…こんな酷いことばかり。」

首の手形をなぞる。

ひく、と体が反抗し怖がらせたと後悔する。

「ほら、嫌われて当然だ。」

「嫌いじゃない。でも、最近の旦那様は乱暴するから辛い。一緒にいたいのに。」

「ごめん。」

「以前の方が優しい触り方してた。」

「どこが?あんなひどいエスコートだったのに?指一本触れないひどい夫だ。」

唯一触れたのは結婚式のキスとエスコートだけだ。

「いつも気を使ってた。手に触れると手汗をいつも謝ってた。自分が近くにいてごめんって。側にいていいのに。馬車の中では日差しは眩しくないかって聞いて、場所を変えると離れて大きい体を小さくするの。そして、狭くてごめんって。遠ざけられて寂しかったけど、いつも優しかった。」

そんな風に思われてたなんて。

本当に俺は自分勝手でバカだった。

もっと早く、勇気を出さなきゃいけなかったんだ。

「前の優しい旦那様が好き。でも今の触れてくれる旦那様も好き。」
 
ゆっくり体に手を回すと、ジネウラから胸に身を預けてくれた。

「私、我儘言ってる?」

「いや、俺に告白してる。」

好きって初めて言われた。

嬉しい。

間を置いて、すごい怪訝そうに俺の顔を見つめてくる。

いや、だって、告白だろ?

「…乱暴ばかりで私を信じてくれない旦那様はもう嫌いです。本当に嫌いです。」

「分かった。治す。」

「…そうしてください。」

そのあとは二人でベッドに入った。

あとですると思って下履きしか履かなかった。

上半身裸でもジネウラは別に何も言わない。

多分、俺の意図に気づいてない。

部屋に置いてある水桶から水を汲み、タオルを入れて絞った。

「…痛いです。」

うつ伏せに、裾を大きく巻くって出した尻に絞ったタオルを乗せる。

「こんなにお尻を腫らされたのは初めてです。」

「…悪かった。」

「こういう特殊な趣味をお持ちならぜひ愛人をお願いします。」

「あれは勢いだ。趣味じゃない。起ってない。」

ジネウラは太ももまで濡れてたな。

また機会があったら軽く叩こう。

次はこんな八つ当たりのような扱いはしないようにどろどろに溶かす。

ベッドに乗せた洗面器にまたタオルを入れて絞る。

下衆な俺は太ももを拭うふりをして隙間からぷっくりとした花びらに指を押し付ける。

「や!ちょっとっ、やめてっ」

「動くと洗面器が倒れるよ。こんな時間に使用人を呼んでシーツの張り替えをさせたくないよね?」
 
割れ目に添え、少し開くだけで中からとろとろ溢れてシーツまで伝った。

「びしょびしょだったね。」

ずるんと入った指でグリグリと刺激をすると動きに合わせてぴちゃぴちゃといやらしい音が出てくる。

「ん、くっ。この、すけべ。」

「優しく触れる旦那様が好きなんだろ?」

「あぁ、あ、あ。は、あ、あ。」

抽挿を激しくすれば言葉も出せずによがる。

「このへん。ざらざらして入れるとすごい気持ちがいい。わかる?ジネウラはどうかな。一緒に気持ちよくなれるかな。」

「んんっん!あ!ああっ!」

「イキそう。」

硬直から弛緩。

良かった、イった。

「今日は痛いことばっかりだったから、いっぱい気持ちよくするよ。」

ぐったりしてる間に洗面器をベッドから下ろす。

お腹の下に枕を挟んで腰を高く調整する。

「ん?」

枕の下から見覚えのある手のひらサイズの麻袋を見つけた。

「ジネウラ。いつも枕にこれを隠してるのか?」

俺のこめかみを殴打した武器だ。

「…今日はもうやめ、て。キツイ。お願い、優しい旦那様がいい。」

気を取られてる隙に枕の山から逃げてシーツで体をくるんでる。

ぐったりと倒れかけながらも逃げる格好に飛びかかって捕まえたいと昂る。

でも、しょうがない。

優しい旦那様でいなきゃ。

「分かった。で、これなに?」

「…ブラックジャック。悪い奴をやっつけるの。…置いておいて。」

「悪い奴って俺?」

また殴られるのが怖いけど元に戻して上から枕を被せる。

「違う。」

シーツにくるんだままベッドの中央に引き寄せ一緒にごろ寝する。

「ベッドの、足元から毛むくじゃらの黒い化け物が出るから、やっつける。」

「何それ?」

「知らない。でも来るから。…キツイ。眠い。」

「うん。もう寝なよ。」

腕枕をしていると、ジネウラが巻き込んでいたシーツを広げてかけてくれた。

裸の胸板に顔を寄せて頬擦りしたり唇をつけたり。

興奮するが我慢した。

積極的というより甘えたくてしてるみたいで、ツンツンしたジネウラにすり寄られるのもまた気分がいい。

規則正しい寝息が聞こえたら、またジネウラをうつ伏せに寝かせ尻を冷やしてあげた。

明日、椅子に座れなかったら申し訳ない。

時々花びらを摘まんで指を入れたが、起こさないように気を付けた。

ジネウラを睡眠不足にしたら夜は拘束されて別の部屋に寝かされてしまう。

リザリーに予告されてるんだ。
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