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第一章
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ジネウラもなかなかの変態と分かったので、もう少し変態なことをしても許されると勝手に考える。
「それにしても、父とリトグリ公爵に報告せねばならないのか。憂鬱だ。」
「もう、王家と父に手紙は出して返事をいただいてます。王家の使者は明日以降こちらに着くそうです。」
「…もう知られてるのか。気が重い。」
「まあ、良いじゃないですか。王家の捜査が入った方が敵の牽制になりますし、安全になると思いますよ。」
扉からノックが聞こえ、リザリーが入室した。
「端の部屋に軟禁しました。興奮がひどいので寝かせてます。」
「ごめんね、リザリー。」
「いえ、それより先触れが届きまして。夕刻に王宮の使者が到着いたします。」
予定より早い。
「急いで出迎えの支度を。」
「はい。」
足早に去るリザリーの退室を見送る。
「…ジネウラ、緊張するよ。」
「大丈夫ですよ、旦那様。寝込みを襲われるなんてきっと珍しくありませんよ。それより私たちも支度しましょう。」
「…そうかなぁ。」
参上した使者は従兄弟のベンだった。
「久しぶりだな、ベン。」
親戚の中でも特に親しかったベンの登場に喜んで寄っていったら、誰か分からなず戸惑っていた。
「ジョルジャ?ジョルジャなのか?」
「ああ、そんなに変わったかな?」
「分からなかったよ。でも陛下にそっくりだ。以前より良いよ。」
握手をし、肩を叩く。
応接室へ移動し、ベンは体型が変わったことに驚いていたが、他にも目を丸くしていた。
「噂とは違って、仲が良いんだな。陛下から大変だと聞いていたんだが。」
「ああ、離れたくない。」
ジネウラはお茶の支度と言って離れようとしたのを捕まえて、隣に座らせて両手でしっかり囲っている。
捕まえて囲った一瞬、睨まれたが、表情を無にして大人しく側に寄り添ってくれる。
「はは、そうか。なら良かったな。奥方の前でする話じゃないが、本題をいいかな?奥方はどうしますか?」
「お知らせしたのは私ですので、お邪魔じゃなければご一緒させてください。」
「報告は奥方が?全て把握してると?」
「…はい。父と陛下へ報告したことでしたら、全て存じてます。それと本日、」
簡潔に経緯を説明し、この屋敷に女を留めていることを話す。
「この別宅で雇ってる医師の診察を受けさせています。今日中に結果が分かります。」
「話は分かった。それにしても、君の奥方は大胆な方だね。」
「いえ、あの。奥方と呼ばれ慣れてないので、良ければ名前を呼んでいただけませんか。」
「いや、やめておくよ。隣見てよ。捨てられた子犬みたいな顔で奥方を見てる。」
「…だって、ジネウラが。」
目を丸めて見つめられるけど、俺以外が名前を呼ぶなんて嫌だ。
「…不躾にお願いして申し訳ありません」
「いや、礼儀の範囲だった。嫉妬深い主人に苦労してそうだね。」
「ごめん、ジネウラ。でも嫌なんだ。」
「いえ。」
プイッとそっぽを向かれ寂しい。
まさか、従兄弟を気に入って名前を呼ばせたかったのか。
心配だ。
「どんな女性か興味はある。先に会わせてもらいたい。」
ジネウラの案内に連れられて屋敷の奥に向かう。
「ここは?」
部屋に所狭しと医学書や医療器具が並べられた部屋を通る。
「領民の治療の為に解放しています。以前の我が家専属の医師に師事した者をまとめて雇ってこちらの仕事を頼んでおります。」
「へえ。1人?」
「いえ、五名です。彼らは現場にいないと腕が鈍ると言って、大半は領内の村を巡っています。」
1番奥の部屋をノックすると鍵の開く音がして中から屈強な男が出てくる。
「奥様、ご足労かけます。」
「いいえ、今日は無理を頼んでるわ。ごめんなさいね。」
それだけの会話なのに二人でクスクス笑い、親密な空気にガシッと腰を掴んで引き寄せる。
「…ジネウラ」
「旦那様、初めまして。医師のマックスです。幼かったお嬢様が、旦那様のおかげで奥様らしい言葉遣いになられて、医療部の私共は喜んでおります。」
「マックスは普段の私を知ってるから笑ったのよ。怒らないでくれませんか?」
「はい。」
「姉のリザリーから、大変愛情深い方と聞いてます。今後ともお嬢様をよろしくお願いします。」
温かい眼差しに嫉妬したことが恥ずかしくなる。
マックスの見立てだとグロリアの妊娠は間違いないそうだ。
だが腹が目立たず、まだはっきりと三ヶ月以上か以内かの判断は出来ないと。
俺の子の可能性を感じて恐ろしくなる。
グロリアの部屋に着き、興奮させるといけないということで、入室はしないが入り口で話を聞くことにした。
ベンが先に入室し、声をかける。
「あなたがグロリア嬢?初めまして。ベンと言うんだ。」
「初めましてぇ。素敵。新しいお医者さん?誰なの?」
これは、分かりやすい。
入り口に隠れた俺達に気づかず、イケメンのベンに甘い声を出している。
隠れて話を聞くがややこしい。
未婚独身は間違いではないが、腹に子などいない、間違いだと言い出した。
しかも、姉のジネウラに虐められて義兄の俺がグロリアに執着されてるから助けてくれと。
終いにはベッドに誘い出した。
具合が悪いから胸をさすってくれと。
「もういい、胸を出すな!ジョルジャ!入ってくれ!」
「ベン、彼女はすごい虚言癖だね。」
「…俺も驚いてる。」
「ジョルジャ様!会いに来てくれたのね。」
あまりの急展開にびびったベンは幾分げっそりしている。
入室すると、きれいな手の平返しでベッドから立ち上がって俺に駆け寄る。
「寄らなくていいよ。ほら、はみ出たそれを仕舞ってくれないか。圧がすごい。」
ベンも俺も仰け反り気味だ。
みちみちに詰まっていた胸元から溢れそうだ。
いや、狭そうな服から大半が飛び出して、溢れて垂れてる。
ジネウラの妹なのになんでそんなに発育してるの?
ひとつ下の15だよね?
年齢詐称してない?
「ふふ。ジョルジャ様ったら。恥ずかしがって。」
妊婦に妖艶に微笑まれても怖い。
俺にそういう趣味はない。
何を勘違いしたのか腕を組んでゆっさゆっさと強調してくる。
「あー…お腹の子は誰の子?」
「は?何ですって?」
「さっきまでベンに腹に子供はいないと言っていたが、医師は妊娠確定だって。もしかして俺かなと思ったけど、君を胸を見ても反応しない。やっぱり俺は起たない。俺じゃないんだろ?」
顔を真っ赤にして俺の子だと叫んでいた。
「このまま偽れば王家への詐欺だ。罪が重くなるぞ。」
半狂乱のグロリアに押し倒された。
「違います、ちゃんとこうしたら大きくなるんです。こうやって胸で挟んで、口で、あ、む。ん。」
手早くズボンを解禁され慌てる。
妊婦を乱暴に扱えなくて、どうにか引き剥がそうとするが上からのし掛かられて太ももを固定されてしまった。
怪我をさせずにはどうにも出来なかった。
「ちょ、ちょ、やめ!ベン!ぼーっとしてないで助けろ!」
叫んだ途端、どやどやと介護人のご婦人達が入って、グロリアを押さえる。
やっと慌てて動き出したベンに助け起こされ、立ち上がり落ちそうなズボンを掴む。
「大丈夫か?」
「背中を壁にぶつけただけだ。何もない。」
手が震えて、前を閉めるのがもたつく。
怖かった。
縮んでる。
ジネウラがひょこっと顔を出して、
「助けに入るのが、遅れて申し訳ありません。」
「…見てた?」
ふいっと目を逸らされる。
「いえ。」
聞いてただけですと小さな声で応えた。
聞き耳をたててよく分からないで反応に遅れたジネウラと違い、場馴れしたご婦人達は中の様子を理解していたようだ。
「それにしても、父とリトグリ公爵に報告せねばならないのか。憂鬱だ。」
「もう、王家と父に手紙は出して返事をいただいてます。王家の使者は明日以降こちらに着くそうです。」
「…もう知られてるのか。気が重い。」
「まあ、良いじゃないですか。王家の捜査が入った方が敵の牽制になりますし、安全になると思いますよ。」
扉からノックが聞こえ、リザリーが入室した。
「端の部屋に軟禁しました。興奮がひどいので寝かせてます。」
「ごめんね、リザリー。」
「いえ、それより先触れが届きまして。夕刻に王宮の使者が到着いたします。」
予定より早い。
「急いで出迎えの支度を。」
「はい。」
足早に去るリザリーの退室を見送る。
「…ジネウラ、緊張するよ。」
「大丈夫ですよ、旦那様。寝込みを襲われるなんてきっと珍しくありませんよ。それより私たちも支度しましょう。」
「…そうかなぁ。」
参上した使者は従兄弟のベンだった。
「久しぶりだな、ベン。」
親戚の中でも特に親しかったベンの登場に喜んで寄っていったら、誰か分からなず戸惑っていた。
「ジョルジャ?ジョルジャなのか?」
「ああ、そんなに変わったかな?」
「分からなかったよ。でも陛下にそっくりだ。以前より良いよ。」
握手をし、肩を叩く。
応接室へ移動し、ベンは体型が変わったことに驚いていたが、他にも目を丸くしていた。
「噂とは違って、仲が良いんだな。陛下から大変だと聞いていたんだが。」
「ああ、離れたくない。」
ジネウラはお茶の支度と言って離れようとしたのを捕まえて、隣に座らせて両手でしっかり囲っている。
捕まえて囲った一瞬、睨まれたが、表情を無にして大人しく側に寄り添ってくれる。
「はは、そうか。なら良かったな。奥方の前でする話じゃないが、本題をいいかな?奥方はどうしますか?」
「お知らせしたのは私ですので、お邪魔じゃなければご一緒させてください。」
「報告は奥方が?全て把握してると?」
「…はい。父と陛下へ報告したことでしたら、全て存じてます。それと本日、」
簡潔に経緯を説明し、この屋敷に女を留めていることを話す。
「この別宅で雇ってる医師の診察を受けさせています。今日中に結果が分かります。」
「話は分かった。それにしても、君の奥方は大胆な方だね。」
「いえ、あの。奥方と呼ばれ慣れてないので、良ければ名前を呼んでいただけませんか。」
「いや、やめておくよ。隣見てよ。捨てられた子犬みたいな顔で奥方を見てる。」
「…だって、ジネウラが。」
目を丸めて見つめられるけど、俺以外が名前を呼ぶなんて嫌だ。
「…不躾にお願いして申し訳ありません」
「いや、礼儀の範囲だった。嫉妬深い主人に苦労してそうだね。」
「ごめん、ジネウラ。でも嫌なんだ。」
「いえ。」
プイッとそっぽを向かれ寂しい。
まさか、従兄弟を気に入って名前を呼ばせたかったのか。
心配だ。
「どんな女性か興味はある。先に会わせてもらいたい。」
ジネウラの案内に連れられて屋敷の奥に向かう。
「ここは?」
部屋に所狭しと医学書や医療器具が並べられた部屋を通る。
「領民の治療の為に解放しています。以前の我が家専属の医師に師事した者をまとめて雇ってこちらの仕事を頼んでおります。」
「へえ。1人?」
「いえ、五名です。彼らは現場にいないと腕が鈍ると言って、大半は領内の村を巡っています。」
1番奥の部屋をノックすると鍵の開く音がして中から屈強な男が出てくる。
「奥様、ご足労かけます。」
「いいえ、今日は無理を頼んでるわ。ごめんなさいね。」
それだけの会話なのに二人でクスクス笑い、親密な空気にガシッと腰を掴んで引き寄せる。
「…ジネウラ」
「旦那様、初めまして。医師のマックスです。幼かったお嬢様が、旦那様のおかげで奥様らしい言葉遣いになられて、医療部の私共は喜んでおります。」
「マックスは普段の私を知ってるから笑ったのよ。怒らないでくれませんか?」
「はい。」
「姉のリザリーから、大変愛情深い方と聞いてます。今後ともお嬢様をよろしくお願いします。」
温かい眼差しに嫉妬したことが恥ずかしくなる。
マックスの見立てだとグロリアの妊娠は間違いないそうだ。
だが腹が目立たず、まだはっきりと三ヶ月以上か以内かの判断は出来ないと。
俺の子の可能性を感じて恐ろしくなる。
グロリアの部屋に着き、興奮させるといけないということで、入室はしないが入り口で話を聞くことにした。
ベンが先に入室し、声をかける。
「あなたがグロリア嬢?初めまして。ベンと言うんだ。」
「初めましてぇ。素敵。新しいお医者さん?誰なの?」
これは、分かりやすい。
入り口に隠れた俺達に気づかず、イケメンのベンに甘い声を出している。
隠れて話を聞くがややこしい。
未婚独身は間違いではないが、腹に子などいない、間違いだと言い出した。
しかも、姉のジネウラに虐められて義兄の俺がグロリアに執着されてるから助けてくれと。
終いにはベッドに誘い出した。
具合が悪いから胸をさすってくれと。
「もういい、胸を出すな!ジョルジャ!入ってくれ!」
「ベン、彼女はすごい虚言癖だね。」
「…俺も驚いてる。」
「ジョルジャ様!会いに来てくれたのね。」
あまりの急展開にびびったベンは幾分げっそりしている。
入室すると、きれいな手の平返しでベッドから立ち上がって俺に駆け寄る。
「寄らなくていいよ。ほら、はみ出たそれを仕舞ってくれないか。圧がすごい。」
ベンも俺も仰け反り気味だ。
みちみちに詰まっていた胸元から溢れそうだ。
いや、狭そうな服から大半が飛び出して、溢れて垂れてる。
ジネウラの妹なのになんでそんなに発育してるの?
ひとつ下の15だよね?
年齢詐称してない?
「ふふ。ジョルジャ様ったら。恥ずかしがって。」
妊婦に妖艶に微笑まれても怖い。
俺にそういう趣味はない。
何を勘違いしたのか腕を組んでゆっさゆっさと強調してくる。
「あー…お腹の子は誰の子?」
「は?何ですって?」
「さっきまでベンに腹に子供はいないと言っていたが、医師は妊娠確定だって。もしかして俺かなと思ったけど、君を胸を見ても反応しない。やっぱり俺は起たない。俺じゃないんだろ?」
顔を真っ赤にして俺の子だと叫んでいた。
「このまま偽れば王家への詐欺だ。罪が重くなるぞ。」
半狂乱のグロリアに押し倒された。
「違います、ちゃんとこうしたら大きくなるんです。こうやって胸で挟んで、口で、あ、む。ん。」
手早くズボンを解禁され慌てる。
妊婦を乱暴に扱えなくて、どうにか引き剥がそうとするが上からのし掛かられて太ももを固定されてしまった。
怪我をさせずにはどうにも出来なかった。
「ちょ、ちょ、やめ!ベン!ぼーっとしてないで助けろ!」
叫んだ途端、どやどやと介護人のご婦人達が入って、グロリアを押さえる。
やっと慌てて動き出したベンに助け起こされ、立ち上がり落ちそうなズボンを掴む。
「大丈夫か?」
「背中を壁にぶつけただけだ。何もない。」
手が震えて、前を閉めるのがもたつく。
怖かった。
縮んでる。
ジネウラがひょこっと顔を出して、
「助けに入るのが、遅れて申し訳ありません。」
「…見てた?」
ふいっと目を逸らされる。
「いえ。」
聞いてただけですと小さな声で応えた。
聞き耳をたててよく分からないで反応に遅れたジネウラと違い、場馴れしたご婦人達は中の様子を理解していたようだ。
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