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第一章
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「ジネウラ、どうしよう。入らない。」
「先生の昔のお洋服じゃダメですね。旦那さんは背が高いから。」
来た時の服は嘔吐で汚れて処分した。
毒だと予想はしても、もし感染する病気ならいけないと用心の為だそうだ。
それで、じいさんの服を借りたが、シャツは肩幅が足らなくて通らないし、ズボンは太ももで止まる。
せっかく痩せたのに。
「上から外套を着るから平気よ。見えないから。病衣のままで。」
病衣のままか。
前を重ねて紐で結ぶだけで心もとない。
パンツも履いてない。
仕方なしに外套を羽織る。
「馬に乗るからちょっと痛いかもね。」
「やだなぁ。」
「じゃあね、ばぁば。ありがとう。」
「暗いですから、道中お気をつけて。」
「空が白んできたから大丈夫よ。慣れた道だし。薬はまた取りに来させるから。」
「はい。あの子達の誰かを寄越してください。水と軽食は袋にあります。召し上がって。」
二人で抱き合い、お互いの頬に挨拶を交わす。
離れると婆さんは無言でこちらを睨んだ。
「分かってらっしゃいますよね?」
「はい、ジネウラに無体はしません。」
「本当に、頼みますよ。あなたがお嬢様の旦那さんなんですから、肉壁にでもなってしっかり守ってくださいね。妻を守るのが夫の務めですからね。」
「はい。分かりました。」
肉壁になります。
「弱ってるのは旦那様の方でしょ。肉壁って。」
ジネウラが手綱を握り、二人で馬に乗って足早に進む。
白んでいた空がだいぶ明るくなった。
「それで、説明は?」
「どこから致しましょうか。何か質問は?」
「え、と。そうだな。まずはこれから、どこに行く?」
「私個人の別宅です。ばぁばの姪達が使用人として雇っていますし、屋敷で近隣の人間に治療をしてますので、使用人達は看護に慣れていて安心できます。」
「そうか。あと、俺の敵は誰だ?」
毒を盛ったのは?
殺意を抱く者は?
「追いかけてますが、まだ判明してません。目的も。ですが、旦那様を苦しめたのは毎日の食事と、ヤブ医者の薬、異母妹の媚薬の3つ。毒ではなく…。分かるのはそれだけです。」
「食事?医者の薬もダメだったのか?」
「…どれも毒とは違いますが。屋敷の食事に強い強壮剤が混ぜられていまして。ヤブ医者と媚薬の成分が判明してませんが、よろしくなかったと思いますよ。まだ可能性として、他に毒の混入が消えていませんし、3つ合わさったせいかもしれません。今のところあまり報告出来ることがありません。」
「ふうん…」
政治的な動きなのか?
俺が公爵家に入って気に入らなかった者がいるのか?
ババ抜きのババの俺が?
「はっきりしてるのは、我が家の使用人の不手際です。…申し訳ありません。」
「いや、ジネウラのせいじゃない。それより治療に尽力してくれて感謝してる。」
「妻として当然です。」
妻か。
良い響き。
嬉しくて顔が緩む。
「俺の、妻かぁ。えへへ。嬉しい。」
「あっ!このっ、大事な話してるのに!またスケベしてる!ダメっ、」
「…んー、でもこっちがいい。」
外套の裾から手を差し入れて、緩い胸元を引き下げて胸を弄る。
外套で見えないけど、隠れてぽろんしてると思うと堪らん。
頭や首に鼻を擦り付けて匂いを嗅いだ。
「あー…良い匂い。胸が柔い。」
「恥ずかしい。やめてよ。」
「見えないから大丈夫だよ。その砕けた調子もいいなぁ。」
「んっ、く!くすぐるのは、やめて!仕返しのつもり?」
「違うよ。」
そういうつもりじゃないけど。
見えないなら俺もと便乗しただけで、嫌がらせのつもりはない。
「俺の奥さんを触りたいだけ。」
手綱を取り上げて馬の歩を止める。
「返してっ。」
「しーっ、馬が怯える。」
「もうっ…」
静かになったジネウラの胸を弄り続ける。
なんでこんなに気持ちいいんだろう。
ぷっくりしてきた先端を摘まんで転がしたり引っ張ったりして触った。
こりこりとつねると声が大きくなった。
「あっ、くっ、いや。いや!やめてよ。いやだ!」
初めての激しい抵抗と背中を丸めて逃げようとするのが許せなくて両の乳房を強く握りしめて引き寄せる。
ジネウラの背中にぴったり体を張り付けても、嫌がる素振りのジネウラにまだ不安だった。
「いやだ。逃げないで。やっぱり俺のこと嫌いなの?」
「い、痛い!そうじゃなくて、こわいのっ。馬の上で、それに先を、進みたいのに。」
「本当にそれだけ?嫌いじゃない?嘘だったら怒るよ。」
ぐぐっと力をいれると、ううっと低いうめき声だけで硬直し
ていた。
「ううっ…いたい。この、ばか。調子にのって。…怒るのは、こっちよっ。」
「い、た!あだだ。ジネウラ!痛いよ!」
ギリギリと両手の小指を捻られ慌てた。
「こんな所で足留めされたくないです。誰の為にこんな苦労してると思ってるんですか。バカですか。嫌いになりますよ。」
顔が見えないけど絶対いつもの冷たい顔をしてる。
「ごめん、痛いよ、離して。」
「私が言ったらやめなかった癖。…もう少し捻りたい。」
「ごめん、もう大人しくするから。」
胸から手を離したことに安心したのか、ぱっと手を離してごそごそと外套の中で服を整える。
首もとの隙間から覗いて、
「手形ついてる。…私の胸が可哀想。」
俺も見たかったが我慢する。
外套から手を出せと怒られたが、粘ってお願いしたら諦めた。
外套に手を入れたまま服の上から平らなお腹にしがみついて馬を走らせた。
「先生の昔のお洋服じゃダメですね。旦那さんは背が高いから。」
来た時の服は嘔吐で汚れて処分した。
毒だと予想はしても、もし感染する病気ならいけないと用心の為だそうだ。
それで、じいさんの服を借りたが、シャツは肩幅が足らなくて通らないし、ズボンは太ももで止まる。
せっかく痩せたのに。
「上から外套を着るから平気よ。見えないから。病衣のままで。」
病衣のままか。
前を重ねて紐で結ぶだけで心もとない。
パンツも履いてない。
仕方なしに外套を羽織る。
「馬に乗るからちょっと痛いかもね。」
「やだなぁ。」
「じゃあね、ばぁば。ありがとう。」
「暗いですから、道中お気をつけて。」
「空が白んできたから大丈夫よ。慣れた道だし。薬はまた取りに来させるから。」
「はい。あの子達の誰かを寄越してください。水と軽食は袋にあります。召し上がって。」
二人で抱き合い、お互いの頬に挨拶を交わす。
離れると婆さんは無言でこちらを睨んだ。
「分かってらっしゃいますよね?」
「はい、ジネウラに無体はしません。」
「本当に、頼みますよ。あなたがお嬢様の旦那さんなんですから、肉壁にでもなってしっかり守ってくださいね。妻を守るのが夫の務めですからね。」
「はい。分かりました。」
肉壁になります。
「弱ってるのは旦那様の方でしょ。肉壁って。」
ジネウラが手綱を握り、二人で馬に乗って足早に進む。
白んでいた空がだいぶ明るくなった。
「それで、説明は?」
「どこから致しましょうか。何か質問は?」
「え、と。そうだな。まずはこれから、どこに行く?」
「私個人の別宅です。ばぁばの姪達が使用人として雇っていますし、屋敷で近隣の人間に治療をしてますので、使用人達は看護に慣れていて安心できます。」
「そうか。あと、俺の敵は誰だ?」
毒を盛ったのは?
殺意を抱く者は?
「追いかけてますが、まだ判明してません。目的も。ですが、旦那様を苦しめたのは毎日の食事と、ヤブ医者の薬、異母妹の媚薬の3つ。毒ではなく…。分かるのはそれだけです。」
「食事?医者の薬もダメだったのか?」
「…どれも毒とは違いますが。屋敷の食事に強い強壮剤が混ぜられていまして。ヤブ医者と媚薬の成分が判明してませんが、よろしくなかったと思いますよ。まだ可能性として、他に毒の混入が消えていませんし、3つ合わさったせいかもしれません。今のところあまり報告出来ることがありません。」
「ふうん…」
政治的な動きなのか?
俺が公爵家に入って気に入らなかった者がいるのか?
ババ抜きのババの俺が?
「はっきりしてるのは、我が家の使用人の不手際です。…申し訳ありません。」
「いや、ジネウラのせいじゃない。それより治療に尽力してくれて感謝してる。」
「妻として当然です。」
妻か。
良い響き。
嬉しくて顔が緩む。
「俺の、妻かぁ。えへへ。嬉しい。」
「あっ!このっ、大事な話してるのに!またスケベしてる!ダメっ、」
「…んー、でもこっちがいい。」
外套の裾から手を差し入れて、緩い胸元を引き下げて胸を弄る。
外套で見えないけど、隠れてぽろんしてると思うと堪らん。
頭や首に鼻を擦り付けて匂いを嗅いだ。
「あー…良い匂い。胸が柔い。」
「恥ずかしい。やめてよ。」
「見えないから大丈夫だよ。その砕けた調子もいいなぁ。」
「んっ、く!くすぐるのは、やめて!仕返しのつもり?」
「違うよ。」
そういうつもりじゃないけど。
見えないなら俺もと便乗しただけで、嫌がらせのつもりはない。
「俺の奥さんを触りたいだけ。」
手綱を取り上げて馬の歩を止める。
「返してっ。」
「しーっ、馬が怯える。」
「もうっ…」
静かになったジネウラの胸を弄り続ける。
なんでこんなに気持ちいいんだろう。
ぷっくりしてきた先端を摘まんで転がしたり引っ張ったりして触った。
こりこりとつねると声が大きくなった。
「あっ、くっ、いや。いや!やめてよ。いやだ!」
初めての激しい抵抗と背中を丸めて逃げようとするのが許せなくて両の乳房を強く握りしめて引き寄せる。
ジネウラの背中にぴったり体を張り付けても、嫌がる素振りのジネウラにまだ不安だった。
「いやだ。逃げないで。やっぱり俺のこと嫌いなの?」
「い、痛い!そうじゃなくて、こわいのっ。馬の上で、それに先を、進みたいのに。」
「本当にそれだけ?嫌いじゃない?嘘だったら怒るよ。」
ぐぐっと力をいれると、ううっと低いうめき声だけで硬直し
ていた。
「ううっ…いたい。この、ばか。調子にのって。…怒るのは、こっちよっ。」
「い、た!あだだ。ジネウラ!痛いよ!」
ギリギリと両手の小指を捻られ慌てた。
「こんな所で足留めされたくないです。誰の為にこんな苦労してると思ってるんですか。バカですか。嫌いになりますよ。」
顔が見えないけど絶対いつもの冷たい顔をしてる。
「ごめん、痛いよ、離して。」
「私が言ったらやめなかった癖。…もう少し捻りたい。」
「ごめん、もう大人しくするから。」
胸から手を離したことに安心したのか、ぱっと手を離してごそごそと外套の中で服を整える。
首もとの隙間から覗いて、
「手形ついてる。…私の胸が可哀想。」
俺も見たかったが我慢する。
外套から手を出せと怒られたが、粘ってお願いしたら諦めた。
外套に手を入れたまま服の上から平らなお腹にしがみついて馬を走らせた。
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