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第一章
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薬が効いたのか、夜中のおかしな症状が減った。
ささくれた神経が落ち着き、やっと寝所から出られるようになったのに今度は腹の調子がおかしかった。
下痢が続き、水しか飲めなかった。
それでも腹が減って引き出しの固形食をボリボリ食う。
不思議と数が減らないのだが、憔悴した俺はすぐに気づかなかった。
毎日、寝所で泥のように眠った。
ある日、水か欲しくて呼び鈴を鳴らすが誰も来ない。
しょうがなくふらふらしながら寝所を出ると使用人達から蔑んだ目で睨まれ無視された。
「奥様を蔑ろにした浮気男なんて…」
何の事か分からず、言い返そうにも衰えた体はどうにもならず。
また仕方なしに壁づたいに水を求めてさ迷うと、妻に見つかった。
「旦那様!どうしてこちらに?!大変、そんなお体で部屋を出るなんて!」
慌ててふらつく俺の体を支え、心配そうに見つめる瞳と人肌が嬉しくて悪魔に自ら抱きついた。
「あ、あ。あ。」
悪魔なのに。
疲れていた俺は泣きながらジネウラにしがみついてしまった。
「旦那様、お部屋に戻りましょう。ね?無理をなさってはいけません。」
よろけながらも小さい体で俺を必死に支え部屋へ歩く。
「お辛いのですね。もう、今はここの部屋でお休みください。」
手近な部屋に俺を運び、ベッドに寝かされた。
可愛らしいレースやピンクの溢れた部屋。
「昔の、私の部屋です。ふうっ、はぁ。」
ジネウラの体で俺を支えるのは無理だったようで、肩で息をし隣で座り込んでいた。
「はあ、旦那様。何か、欲しいものは?はあ。」
「…水を。」
「水でございますね?はあ、ふう。…ふーっ。すぐ、ご用意いたします。」
部屋を飛び出て、水を持ってきた。
「起きないでも構いませんよ。」
そう言って、銀の匙から一口ずつ唇に乗せて飲ませる。
「もう今日はこちらでお休みなさいませ。昔の部屋なので使用人は来ませんから。」
「…う。」
顔を手拭いで浄められ、気持ちのよさに目を閉じる。
悪魔の癖に。
毎夜のあれは、幻だったのか。
ふと目を覚めし、隣に腰かけるジネウラに目を向ける。
「目が覚めましたか?よくお休みでしたよ。」
何やら分厚い本から目を離しこちらを見る。
「ご飯は食べられそうですか?」
「はら、へった。」
「はい、見た目が悪いのですが。許してくださいね。はい、あーん。」
どろどろの離乳食のような物を口に運ぶ。
ペロペロ舐めるように食べて完食したようで、空の皿を嬉しそうに見せる。
「さ、もうお休みなさいませ。体を戻さねばなりません。」
なぜだ?
何を考えてる?
疑問が湧くが頭は動かない。
「あ…あ。」
腹が満たされ、すっと眠りについた。
しばらく朦朧とした意識の中で、ジネウラに世話されたということは分かった。
起きてどろどろの飯をたべさせられ、水を匙で飲ませてもらい、起き上がれない俺は排尿の世話までされた。
ふと、夜中に目を覚ました。
体が汗と垢で気持ち悪かった。
ふらふらしながらも体を起こしサイドテーブルの水桶のタオルで顔を拭いた。
今までになく気分がよかった。
悪い夢だったのかとさえ思う。
「…う、ん。」
女の声に振り替える。
よく見るとベッドの端にジネウラが寝ていた。
なんで?
おれをころすきか。
そうだ、きっとそうだ。
看病してのはジネウラなのに?
ころすきだ。
ころされる。
気づいたらジネウラの首を絞めていた。
殺らねば殺られると。
ささくれた神経が落ち着き、やっと寝所から出られるようになったのに今度は腹の調子がおかしかった。
下痢が続き、水しか飲めなかった。
それでも腹が減って引き出しの固形食をボリボリ食う。
不思議と数が減らないのだが、憔悴した俺はすぐに気づかなかった。
毎日、寝所で泥のように眠った。
ある日、水か欲しくて呼び鈴を鳴らすが誰も来ない。
しょうがなくふらふらしながら寝所を出ると使用人達から蔑んだ目で睨まれ無視された。
「奥様を蔑ろにした浮気男なんて…」
何の事か分からず、言い返そうにも衰えた体はどうにもならず。
また仕方なしに壁づたいに水を求めてさ迷うと、妻に見つかった。
「旦那様!どうしてこちらに?!大変、そんなお体で部屋を出るなんて!」
慌ててふらつく俺の体を支え、心配そうに見つめる瞳と人肌が嬉しくて悪魔に自ら抱きついた。
「あ、あ。あ。」
悪魔なのに。
疲れていた俺は泣きながらジネウラにしがみついてしまった。
「旦那様、お部屋に戻りましょう。ね?無理をなさってはいけません。」
よろけながらも小さい体で俺を必死に支え部屋へ歩く。
「お辛いのですね。もう、今はここの部屋でお休みください。」
手近な部屋に俺を運び、ベッドに寝かされた。
可愛らしいレースやピンクの溢れた部屋。
「昔の、私の部屋です。ふうっ、はぁ。」
ジネウラの体で俺を支えるのは無理だったようで、肩で息をし隣で座り込んでいた。
「はあ、旦那様。何か、欲しいものは?はあ。」
「…水を。」
「水でございますね?はあ、ふう。…ふーっ。すぐ、ご用意いたします。」
部屋を飛び出て、水を持ってきた。
「起きないでも構いませんよ。」
そう言って、銀の匙から一口ずつ唇に乗せて飲ませる。
「もう今日はこちらでお休みなさいませ。昔の部屋なので使用人は来ませんから。」
「…う。」
顔を手拭いで浄められ、気持ちのよさに目を閉じる。
悪魔の癖に。
毎夜のあれは、幻だったのか。
ふと目を覚めし、隣に腰かけるジネウラに目を向ける。
「目が覚めましたか?よくお休みでしたよ。」
何やら分厚い本から目を離しこちらを見る。
「ご飯は食べられそうですか?」
「はら、へった。」
「はい、見た目が悪いのですが。許してくださいね。はい、あーん。」
どろどろの離乳食のような物を口に運ぶ。
ペロペロ舐めるように食べて完食したようで、空の皿を嬉しそうに見せる。
「さ、もうお休みなさいませ。体を戻さねばなりません。」
なぜだ?
何を考えてる?
疑問が湧くが頭は動かない。
「あ…あ。」
腹が満たされ、すっと眠りについた。
しばらく朦朧とした意識の中で、ジネウラに世話されたということは分かった。
起きてどろどろの飯をたべさせられ、水を匙で飲ませてもらい、起き上がれない俺は排尿の世話までされた。
ふと、夜中に目を覚ました。
体が汗と垢で気持ち悪かった。
ふらふらしながらも体を起こしサイドテーブルの水桶のタオルで顔を拭いた。
今までになく気分がよかった。
悪い夢だったのかとさえ思う。
「…う、ん。」
女の声に振り替える。
よく見るとベッドの端にジネウラが寝ていた。
なんで?
おれをころすきか。
そうだ、きっとそうだ。
看病してのはジネウラなのに?
ころすきだ。
ころされる。
気づいたらジネウラの首を絞めていた。
殺らねば殺られると。
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