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57※ルーラ

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いつまでも皇太子のお部屋にいるわけにはいかないけど涙が止めどなく溢れてどこにも行けない。

「ふ、う、……ひっ、く」

押さえたいのにしゃくりが止まらない。

憎たらしい。

そう思えればいいのに自業自得という思いが消えない。

言われるがまま作ったんだもの。

あれの正体が何でどう使うかなんて知らなかったもの。

私のせいじゃない。

知らなかったから仕方ない。

ああ、でも。王妃は言ってた。

私以外にも飲ませて試したって。

10年前、勤めて5年目の頃。

植物の育て方、作業の工程、服薬の量も把握できたから私はいらないって。

寝物語に話を聞かせていた。

知らなかったで済む?

私の作ったもので私の知らない人が私みたいになった。

死んだ人もいるって。

無理。

吐きそう。

人殺し。

違う。

飲ませたのは私じゃない。

作っただけ。

私じゃない。

でも作ったのは私。

「……ひっ、……ぅ、奥様、リカルド王子」

すまなかったと声をかけて医師を呼んでくださった。

私にそんな価値はない。

申し訳ありません。

リカルド王子のお母様を死なせた毒は私が作りました。

私のせいです。

王妃のもとで自分が何をしたのか知りたくて勉強した。

でも分かったら恐ろしくなった。

死なせて欲しいと処罰を願ったら全ての告白を聞いた上で死ぬことはないと諭された。

聞いて驚いたが死なすつもりで助けたわけではないと仰っていた。

だから何か恩を返さねばと必死で働いた。

罪悪感で生きていることが苦しいと、死なせて欲しいと恨めしくなる時もある。

でも意味もなく死ぬのは嫌だ。

何も残さず、人を苦しめただけで死にたくない。

誰かのために生きたかった。

「……ら、いん」

年下の可愛い女の子。

細すぎて心配して。

固まった表情で暗かったのに。

気に入らなくて意地悪しても慕ってくるからほだされて、気まぐれで針仕事は早いのねって誉めたら朝日が登ったみたいにパッと明るくなったの。

ありがとうございますって元気よく答えて、その日はずっと幸せそうにしてた。

すごく眩しくて目を奪われた。

もっと笑顔にしたくて。

あの子の一番になりたくて。

家族に大事にされてないあの子を笑わせたかった。

子供っぽいあの子のおかげで母親の気分を味わえた。

奥様として扱うのに今もこっそりルーラさんって甘えてくる。

それにメイド長や同僚も寝たきりで動かない私の世話を交代でしてくれた。

背中と腰をさすった。

面倒を見てもらうまで寝たきりと汚物で肌が荒れて床擦れが酷かった。

傷跡はまだ残ってる。

でも彼女達の手当てと毎日のお世話のおかげで爛れて汁が出ていた床擦れは治った。

「……ふぅー」

やっと涙が落ち着いた。

私は恵まれてる。

まだリカルド王子と奥様にお仕えしなきゃ。

罪悪感や義務感じゃなくて、ここにいたい。

お二人のお側。

それとメイド長や皆といたいのよ。

もう一度、鏡で確認しながら乱れた髪型を整えた。

お化粧は仕方ない。

全部拭いてしまおう。

泣いて腫れた目をどうにかしなくては。

人に会わないようにこっそりと自分の部屋へ急いだ。

なのにタイミングが悪い。

「ルーラ!どうしたんだ?!」

「大声はやめてくださいませ」

途中で見回りの近衛兵にばったり。
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