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それから毎日、午後はリカルド王子にお勉強を見てもらう。

一週間かかって、やっとあの二冊の絵本を一人で読めた。

呼び鈴を鳴らすといつものようにメイド長。

慣れて怒られることもなくすんなり立ち上がってお茶の支度を引き継ぐ。

リカルド王子は用意したお茶を一口飲んで必ず眉をひそめる。

「マシになった」

美味しくはないみたい。

確かに私が淹れたのよりメイド長のお茶が美味しい。

うーん。なんでだろ。

違いが分からない。

見よう見まねでやってるんだけどなぁ。

精進あるのみなのかなぁ。

うつ向いてたらじっと見られていると感じて顔を上げた。

リカルド王子が頬杖をついて眺めてた。

「……本を読めた褒美をやろう」

「え?ありがとうございます?」

ポケットから小瓶。

中はキレイな丸い粒がコロコロしてる。

何これ?

「飴だ」

あめ?

飴?

初めて食べる!

いつも取り合いに出遅れて貰いそびれてた!

にぱーっと顔が緩んでる。

ヤバい。

涎も出てきた。

「下がっていい」

しっしっと手を払われた。

「え?はい!」

喜んで!

小瓶を握り締めてルーラさんのところへ。

いつもお菓子をくれるお礼。

半分こにしましょうと言うと、あなたが貰ったんだから一つだけでいいって断られた。

ちょっと悲しい。

でも嬉しい。

これ、私のなんだ。

勿体無くて一個しか食べられない。

毎日眺めてた。

キラキラ光ってる。

大粒の砂糖がまぶしてあってキレイ。

半年が過ぎて寒くなり始めた頃、読むのは挿し絵のない本に変わった。

リカルド王子は意外と優しい。

本を朗読出来るようになるとまた飴の小瓶をくれた。

もう20個も貯まった。

青や赤、緑。

どれもキラキラ。

模様がついてるのもくれた。

お茶も上手になった。

リカルド王子の眉がピクピクしない。

にっと薄く笑う。

ましになったって。

メイドの仕事も慣れた。

平行して外国語も。

それはまだまだだけど。

今はお庭にいる。

早朝は庭師のお手伝いで箒とちり取りで葉っぱのお掃除。

終わったら庭の隅っこの地面をガリガリ削って字を書いてる。

「“お姫様は、幸せに、暮らし、ました”」

書いたら消して書いたら消して。

しゃがんだまんま箒をバサバサ。

「まだやっとんのかい?」

「あ、はい」

庭師のおじいちゃん。

真っ白い髭がふさふさ。

いつも笑って眉と目が垂れてて好き。

優しいから大好き。

「朝飯がまだだろう?早く行っておいで」

箒は貰うよと手を出すのでお願いした。

使用人の食堂に行くと執事長に声をかけられた。

実家から荷物が届いてるって。

部屋に置いてるから食べたら中を見ておいでって。

前は執事長は敬語で話しかけてたけど最近は砕けて話し方が優しい。

皆、奥様じゃなくてラインさんって呼ぶ。

ルーラさんも。

ルーラさんだけは二人の時だけラインって気軽に呼ぶ。

それも嬉しい。

奥様じゃないもん。

ここのメイドのラインだもん。

皆、優しいから大好き。
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