うちの妻はかわいい~ノンケのガチムチ褐色が食われる話~

うめまつ

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第三章※その後

番外編※イルザン

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起きると階下の俺がいつも飯を食うテーブルに突っ伏していた。

あたりは隊員の死屍累々。

あまり覚えてないが、酔っぱらいながらもマルシェ達に寝床を譲れたようだ。

ふと足元を見ると俺にかけてあったらしい毛布が落ちていた。

家を出て庭の井戸で顔を洗った。

日を見るとまだ早朝。

まだ仕事まで時間がある。

ムスタファに会いたかった。

昨日のこと。

チャンスがあるなら逃したくなかった。

頭から水をかぶって酒臭さを誤魔化す。

“恋人のもとへ戻る”

マルシェの言った言葉を思い出す。

無駄だ、行くなとも心が囁く。

それを片隅に押しやって滞在している民家へと向かった。

結果、行って惨敗だった。

俺のことも分からないくらいどろどろに溶けたムスタファと事後を気にせず晒すビスがいた。

「急患?」

玄関先で腰に一枚巻いただけで平然とするビスにあんぐりと口を開けた。

その奥に、情事の最中と一目で分かる体勢で転がったムスタファがうわ言を呟く。

なにも言えずパクパクと口を動かすだけで言葉が出ない。

「用がないなら帰って。今は忙しいから」

大きく開いた戸の隙間から縛られて転がされたムスタファを見つめた。

くぐもった声でもういやだ、やめてくれと鳴き声が聞こえた。

「ムスタファに、何を」

「食べただけだよ。それが何?関係あるの?」

「あ、あ、まさか無理やり、そんな」

「そう、無理やり。だから?」

つまらなそうに見つめ返されてどうしていいかわからない。

「無理やりは、だめだ」

「だから指を咥えてろって?やだね」

帰れとひと言、発して戸を絞めようとするのを体をねじ込んで止めた。

「何?」

「ムスタファは、望んでなかったはずだ」

「待ってたら死ぬまでできないよ。それまで待つ気?」

いや、ムスタファは俺に傾いていた。

もう俺の手をとろうとしていた。

「昨日、俺のところに来ました。あんたが嫌だから」

「知ってる。でもヤらなかっただろ?なんで?」

睨み付けるのに意に介した様子はない。

「それでも、ムスタファは」

「君は怒られるのを恐れてびくびくしながら待てば?僕は命がけでムスタファを捕まえただけだよ」

頭を殴られたみたいにショックだった。

「いつまで覗いてんの?早く帰れ」

肩を押し返されるが反射的に扉にしがみつく。

次の瞬間、ばんっと顔に掌底を食らい、首筋に首刀を。

よろけると、爪先を踏まれて踏ん張れずに後ろへ尻餅をついた。

「ムスタファはへテロだ。男には興味ない。待っても無駄だよ。それなら無理やりにでも関わった方がいい」

「あ、」

「僕も襲ったあとは殺されると思ったよ。技があっても力じゃ敵わないからね。」

しゃがみこんで尻餅をつく俺に視線を合わせる。

「君は命が惜しいんだろ?僕は命がけでムスタファにちょっかいかけてるの。その違いは分かる?」

無茶苦茶だと思うのに頷くしか出来なかった。

いつの間にかビスの手に光る刃物があった。

敵わない。

俺じゃだめだ。

扉がしまってしばらくすると中からムスタファの甘い悲鳴が聞こえた。

嫌だって言ってるのに。
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