うちの妻はかわいい~ノンケのガチムチ褐色が食われる話~

うめまつ

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第三章※その後

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「う、」

体が痛い。

動かせない。

髪を優しく撫でる手の感触。

「…イルザン?」

こうやって俺を子供扱いするのはあいつだけだ。

目を薄く開けたが視界がぼやけてよく見えない。

薄い狐色の髪、俺とは違う白い顔。

「残念。僕だよ。」

「あ?…ビスか。」

床に転がされて、隣に座っていた。

「失神したのか?」

「まさか。終わったあと寝てただけ。」

うっすらと何をやったか思い出した。

日が高いのにしつこくヤられたんだ。

最後は焦らされて尻を振ってねだった。

思い出したくない。

「…そうか。…喉、乾いた。」

口の中、すべてが張り付くほどカラカラだ。

「起きれる?」

「…無理だ。」

体が痛くて動かない。

そう言うとビスが革袋を俺の口許に寄せて咥えさせる。

「少しずつね。」

「ん、」

革袋を押して口の中へ水が流れてくる。

こくこくと喉が鳴る。

「ふ、…はあ。」

「まだ飲む?」

「飲む。」

あ、と薄く口を開けるとまた革袋を寄せて水を飲ませた。

「まだいる?」

「いや、もういい。」

「わかった。」

口から垂れた水をビスが指の背で拭った。

終わったあとは患者に接するように優しくなる。

「…なんで、いつもこんな荒っぽいんだよ。」

あとから優しくなるなら最初から優しくしろ。

「こうでもしなきゃヤらせないでしょ?」

「嫌がる相手にヤりたがるな。」

「僕はヤりたいから。それに気持ちよかったでしょ?」

記憶が飛んで頭が真っ白になるくらいな。

死ぬかと思った。

頬をしつこく撫でられて顔を背けた。

「もう、やめろ。」

「分かってるよ。2日もここに足止めしちゃったからね。もうしないから安心して。明日、夜が明けたら出立しよう。」

「…お前が仕切るな。」

「そのフラフラの体で戻れるの?強盗に遇ったら死ぬんじゃない?」

「…。」

否定できん。

今なら昨日の娘にも負けそうだ。

「言うこと聞きなよ。ちゃんとお嬢様のところに届けてあげるから。」

くしゃくしゃと頭を撫でられて諦めから目をつぶり、大人しくした。

睡眠はたっぷりとった。

あとは体が動けばいい。

無理に起き上がるとビスが手足の筋を動かして施術をする。

「どう?」

「…軽い。」

「そう。あとは休んでたら?」

「ああ。」

体が軽くなっても疲れてるのは変わらない。

毎回、疲れてこいつに突っかかる元気もないからな。

「…なんでお前はこんなに容赦ないんだ?」

体は動かんが口は動く。

いつまでも床に転がっていたくない。

よろけながら椅子に座った。

ビスは明日の支度に部屋の掃除をしている。

「…さあ?」

箒を使う手を止めて不思議そうな顔でこっちを見る。

聞きたいのは俺の方だ。

「逆に僕はなんでそんな悠長なのか聞きたいね。君もだけど。…イルザンとか。」

ちらっと目線を向けると思案げに、顎に手を当てて考え込んでいた。

「どういう意味だ。」

「そのままの意味だよ。」

また箒を動かして掃除を始めた。

「鈍いのも君らしくていいけど。」

「あ?バカにしてんのか?」

「気にしなくていいよ。僕と感覚が違うってだけだから。」

「感覚ならだいぶ違う。お前もイルザンも。俺相手に勃つのがわからん。」

背もたれに体を沈めて天井を見上げた。

「そうかな。」

「女でもない。華奢でもない。意味がわからん。」

「…自分のこと、わかってないの?」

見上げていた視界の中にビスの顔が覗いてきた。

「お嬢様はミルクチョコレートだと仰っていた。美味しそうだってね。」

「子供の頃だろう。」

「ふふ、最近も聞いたよ。艶のある黒い髪。チョコレートの肌。黒い目の中にはきらきらの星がいくつも見えると。」

「…そうか。」

お嬢様の言葉は何よりも嬉しい。

何もかも捧げても構わないほどあの幼い姫君に傾倒している。

「いつもそう聞かされていた。どんな男かと思ったらブロンズ像みたいな男で驚いたね。」

顎をさすって耳を撫でる。

「それに、お嬢様のお言葉通り。君は誰よりも綺麗だよ。」

お嬢様と相対してる時のような穏やかな笑み。

臆面もなく。

さらっとこぼれた言葉に息が詰まった。

「…それは、女に言う言葉だ。…俺には、違う。」

「ふふ、これが感覚の違いだよ。」

目を細めて笑った顔に何も言えなかった。

俺が知るのは目をギラギラさせた獰猛な顔か、あとは人をだまくらかすような、張り付けた笑み。

今の微笑みはお嬢様だけに向けるものだ。

「…縄を使うのは?」

おかげで全身うっ血だらけだ。

「縄?…ああ、あれは君に似合うから。」

満面の笑みにこいつの変態さがわかった。

誉められても所詮変態だ。

意味はないと思い直した。
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