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第三章※その後
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あいつはペラペラ喋ったのかと眉をひそめた。
「あいつが何か話したのか?」
低い声にぴくりと怯えた様子を見せた。
「…好きな人がいるとだけ。」
下からの賑やかな声にかき消されそうなほどか細く答えた。
「でも、副団長のお顔を見れば、先生のことだと分かりました。」
一歩踏み出してきたので身構える。
小娘に何が出来るとは思わないが。
「部屋から出ろ。若い娘が暗い部屋で男と二人は不謹慎だ。」
「先生が、ここから出てくださるなら。」
歩みをまた進めてくる。
「…わかった。」
寝室から出て先程飲んでいた部屋へ出る。
「今日は帰ってください。」
泣きそうな掠れた声だ。
目を向けるとそばかすの浮いた若い娘の顔がはっきりと見える。
ランプに照らされた顔は意を決したような、悲壮さを漂わせていた。
強く意思を感じさせる瞳がこちらを見上げている。
「イルザンに惚れてるのか。」
「はい。…でも先生は違うのでしょう?気まぐれに相手してるだけですよね?」
目に涙を貯めながら、態度と言葉ははっきりとしていた。
か弱そうな見かけから思いがけない強さに驚かされた。
嫌いじゃない。
むしろお嬢様の逞しさを彷彿とさせて口許が緩んだ。
「何かおかしいですか?」
「いや。君くらいの強さは好ましい。…イルザンにも、ちょうどいいと思う。」
あいつは甘い。
甘えたくなる。
娘の言う通り。
あいつの甘さに漬け込んで勝手なのは俺だ。
階段から下を眺めると隊員らしき若い男らに囲まれたイルザンを見つめた。
「ここでも回りに頼られてるようだな。」
「はい。まわりは尊敬してます。」
「軍でもそうだった。」
あいつは人付き合いが上手くて俺は助けられてばかりだった。
「今日は帰るよ。」
「はい。」
「また会うだろうが、イルザンとは友人だ。それだけだ。」
「…私は副団長を、愛してます。他に何もいらないくらい好きです。」
「そうか。」
俺とは違う。
それでいいと思った。
裏口からこっそり出ることにした。
「イルザンには適当に言っといてくれるか?」
「…分かりました。…私、失礼な態度で申し訳ありません。」
「いや、己を反省しただけだ。」
自分の女々しさに。
ビスに敵わないといじけてイルザンに甘えた。
「君は賢くて強いようだ。」
「え?」
「酔わせた隊員を部屋にけしかけたのも君だろ?」
「あ…、はい。すいません。」
恥ずかしそうに頭を下げた。
「君なら俺の立場でどうしたかな。」
敵わないビス相手に。
この娘なら腕以外の方法を取るだろう。
「私なら負けません。…副団長のこと好きですもの。」
「そのようだ。だが、相手が違う。」
「え?相手?」
「化け物がいるんだよ。」
娘の分からない様子にこれ以上話す気はない。
組敷かれて困ってると話すつもりはないから。
帰路についたが、まっすぐ帰るのも癪だ。
適当に花街で女を買って寝る為だけの寝床を見つけて休んだ。
朝から屋台で朝飯を買って家に戻った。
ついでにビスの分も。
家につくと窓から入り、ドアのぶに立て掛けた椅子をどかした。
静かな室内。
ビスはまだ部屋で休んでるようだった。
台所に置くつもりで飯を持っていく。
「っぐ!」
飯をテーブルに置いて振り向き様に首を絞められた。
「おかえり。」
「ぐ、うぅ、」
起きてたのか。
「あいつが何か話したのか?」
低い声にぴくりと怯えた様子を見せた。
「…好きな人がいるとだけ。」
下からの賑やかな声にかき消されそうなほどか細く答えた。
「でも、副団長のお顔を見れば、先生のことだと分かりました。」
一歩踏み出してきたので身構える。
小娘に何が出来るとは思わないが。
「部屋から出ろ。若い娘が暗い部屋で男と二人は不謹慎だ。」
「先生が、ここから出てくださるなら。」
歩みをまた進めてくる。
「…わかった。」
寝室から出て先程飲んでいた部屋へ出る。
「今日は帰ってください。」
泣きそうな掠れた声だ。
目を向けるとそばかすの浮いた若い娘の顔がはっきりと見える。
ランプに照らされた顔は意を決したような、悲壮さを漂わせていた。
強く意思を感じさせる瞳がこちらを見上げている。
「イルザンに惚れてるのか。」
「はい。…でも先生は違うのでしょう?気まぐれに相手してるだけですよね?」
目に涙を貯めながら、態度と言葉ははっきりとしていた。
か弱そうな見かけから思いがけない強さに驚かされた。
嫌いじゃない。
むしろお嬢様の逞しさを彷彿とさせて口許が緩んだ。
「何かおかしいですか?」
「いや。君くらいの強さは好ましい。…イルザンにも、ちょうどいいと思う。」
あいつは甘い。
甘えたくなる。
娘の言う通り。
あいつの甘さに漬け込んで勝手なのは俺だ。
階段から下を眺めると隊員らしき若い男らに囲まれたイルザンを見つめた。
「ここでも回りに頼られてるようだな。」
「はい。まわりは尊敬してます。」
「軍でもそうだった。」
あいつは人付き合いが上手くて俺は助けられてばかりだった。
「今日は帰るよ。」
「はい。」
「また会うだろうが、イルザンとは友人だ。それだけだ。」
「…私は副団長を、愛してます。他に何もいらないくらい好きです。」
「そうか。」
俺とは違う。
それでいいと思った。
裏口からこっそり出ることにした。
「イルザンには適当に言っといてくれるか?」
「…分かりました。…私、失礼な態度で申し訳ありません。」
「いや、己を反省しただけだ。」
自分の女々しさに。
ビスに敵わないといじけてイルザンに甘えた。
「君は賢くて強いようだ。」
「え?」
「酔わせた隊員を部屋にけしかけたのも君だろ?」
「あ…、はい。すいません。」
恥ずかしそうに頭を下げた。
「君なら俺の立場でどうしたかな。」
敵わないビス相手に。
この娘なら腕以外の方法を取るだろう。
「私なら負けません。…副団長のこと好きですもの。」
「そのようだ。だが、相手が違う。」
「え?相手?」
「化け物がいるんだよ。」
娘の分からない様子にこれ以上話す気はない。
組敷かれて困ってると話すつもりはないから。
帰路についたが、まっすぐ帰るのも癪だ。
適当に花街で女を買って寝る為だけの寝床を見つけて休んだ。
朝から屋台で朝飯を買って家に戻った。
ついでにビスの分も。
家につくと窓から入り、ドアのぶに立て掛けた椅子をどかした。
静かな室内。
ビスはまだ部屋で休んでるようだった。
台所に置くつもりで飯を持っていく。
「っぐ!」
飯をテーブルに置いて振り向き様に首を絞められた。
「おかえり。」
「ぐ、うぅ、」
起きてたのか。
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