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第三章※その後
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「熊、倒せる?」
「あ?」
山村の診察を終えて夕飯をご馳走になっていた頃、ビスが食べながら尋ねてきた。
「熊か。…軍にいた頃、害獣駆除で何度か。」
「ならいけるかな。明日やろう。」
「おい。待て。」
何のことかは心当たりある。
村人から熊の被害を聞いていたからだ。
畑を荒らされてる。
まだ人に被害は出てないが時間の問題だろう。
「俺達でやるのか?」
「無理かな?いけると思うけど。」
「…お前、出来るのか?」
お前の戦闘技術はほぼ対人向けじゃないか。
「弓と槍があればいけるよ。そんなに大きくないっぽいし、あとはムスタファ次第かな。」
「あ、そう。」
「じゃあ、決まりだね。早く食べて支度しよう。」
「ああ。」
飯を終えて村人から余ってる包丁や斧を借りて手入れをした。
「うわぁ、錆びだらけ。幾つか研ぎ直さないとダメだ。」
ビスはテーブルに村から集めた包丁を並べて眺めてる。
その横で俺は一番ましな斧の刃先を確認した。
「斧の手入れは悪くない。」
「たまに使ってたんでしょ。軽く研ぎ直すけど切れればいいよね。」
ガリガリと表面の錆を擦り落としながら話す。
「ああ。」
「時間かかるから弓の支度を頼んでいい?」
「構わんが、これ子供のオモチャじゃないか?」
小さめだ。
子供が使うような弓を見て俺じゃ扱えないかもしれんと思った。
「ここは男が出稼ぎに出ていて残ってるのは年寄りと女子供だ。そんなもんだよ。」
「こんなもんで熊狩りするのは初めてだ。」
装備もだが、それよりも人数だ。
二人でするのは初めてだ。
最低でも5人組だった。
「そう?僕はいつもは一人でしてるよ。」
「あ?マジか?」
「小さいのだけね。普段は村に熊避けをして街の警らに任せてる。」
「今回はなぜ狩る?」
不思議そうにこちらを見つめてきた。
「ムスタファがいるからだよ。少し大きめだけど殺れるでしょ。」
「専門外だ。」
専門は医者だ。
次に兵士だ。
さすがに狩人じゃない。
「ぐだぐだ言わないでよ。人に被害が出る前に動くよ。」
「いて、蹴るな。わかったから。」
隣から膝で小突かれた。
「手ぇ動かして。」
「わかった。」
弓と矢を使えるように手入れをする。
弦と本体をきつく絞めて強度を確認して、曲がった矢の軸を火で炙って真っ直ぐに整える。
「矢じりはどうする?」
やはりオモチャだ。
熊の毛皮に負けそうな丸い刃がついてる。
刺さりそうにない。
「矢じりはこっちの刃に付け替えて。」
「ん。」
ビスの出した先の細い小型ナイフに全て付け替える。
「少しはましだな。」
「確実に仕留めないとね。それ、僕のお気に入りだから出来るだけ回収したい。」
「それなら弓はお前が使え。俺には小さすぎる。」
「弓は苦手だった?」
「それなりに使えるが、これなら俺は斧と自分の剣の方がいい。こういうのはお前の得意だろ?」
「まあね。こっちはこんなもんかな。」
研いだ包丁の刃先を眺めていたので、手を出すと黙った渡された。
「…いいんじゃないか。…これなら刺さる。」
角度を変えて確認して答えた。
「槍は多めに作らないとね。」
「ああ、そうだな。熊と取り組みはしたくない。」
村人の話では俺達より小さいそうだ。
女性程のサイズだと。
おそらくまだ子供。
それでも爪や牙がある。
油断ならない。
「僕も。」
あとは二人で黙って作業を続けた。
「残りを頼んでいい?」
槍作りは半ばを越えて残り数本。
一人でも問題はない。
「構わないが、何かするのか?」
「罠をかけに行く。」
夜も更けて辺りは暗い
「俺も行くか?」
「いや、いいよ。ふふ、ムスタファがかかるかも。」
「あ?」
「ふふ、怒んないでよ。村の中に鳴子を少し仕掛けるだけだ。」
村から集めた縄を肩にかけて扉に向かった。
「ふん。」
ムカつく。
「くく、子供っぽい。」
「うるせぇ。俺も行く。」
「見とかないと自分がかかるかもしれないもんね。」
「黙れ。」
その気がかりもあるが、どうやるのか見たい。
こいつは俺の知らないことを多く知ってる。
学びたいだけだ。
槍を数本と剣を掴む。
「用心深いね。」
からかうわけでもなく満足そうな顔をする。
これがこいつにとっての正解だ。
「気を抜かないでね。また食べたくなるから。」
ぺろっと赤い舌を覗かせた。
「は、ほざけ。」
鼻で笑う。
簡単に食わせるものか。
奪われるだけは性に合わない。
いつか見てろよ。
「あ?」
山村の診察を終えて夕飯をご馳走になっていた頃、ビスが食べながら尋ねてきた。
「熊か。…軍にいた頃、害獣駆除で何度か。」
「ならいけるかな。明日やろう。」
「おい。待て。」
何のことかは心当たりある。
村人から熊の被害を聞いていたからだ。
畑を荒らされてる。
まだ人に被害は出てないが時間の問題だろう。
「俺達でやるのか?」
「無理かな?いけると思うけど。」
「…お前、出来るのか?」
お前の戦闘技術はほぼ対人向けじゃないか。
「弓と槍があればいけるよ。そんなに大きくないっぽいし、あとはムスタファ次第かな。」
「あ、そう。」
「じゃあ、決まりだね。早く食べて支度しよう。」
「ああ。」
飯を終えて村人から余ってる包丁や斧を借りて手入れをした。
「うわぁ、錆びだらけ。幾つか研ぎ直さないとダメだ。」
ビスはテーブルに村から集めた包丁を並べて眺めてる。
その横で俺は一番ましな斧の刃先を確認した。
「斧の手入れは悪くない。」
「たまに使ってたんでしょ。軽く研ぎ直すけど切れればいいよね。」
ガリガリと表面の錆を擦り落としながら話す。
「ああ。」
「時間かかるから弓の支度を頼んでいい?」
「構わんが、これ子供のオモチャじゃないか?」
小さめだ。
子供が使うような弓を見て俺じゃ扱えないかもしれんと思った。
「ここは男が出稼ぎに出ていて残ってるのは年寄りと女子供だ。そんなもんだよ。」
「こんなもんで熊狩りするのは初めてだ。」
装備もだが、それよりも人数だ。
二人でするのは初めてだ。
最低でも5人組だった。
「そう?僕はいつもは一人でしてるよ。」
「あ?マジか?」
「小さいのだけね。普段は村に熊避けをして街の警らに任せてる。」
「今回はなぜ狩る?」
不思議そうにこちらを見つめてきた。
「ムスタファがいるからだよ。少し大きめだけど殺れるでしょ。」
「専門外だ。」
専門は医者だ。
次に兵士だ。
さすがに狩人じゃない。
「ぐだぐだ言わないでよ。人に被害が出る前に動くよ。」
「いて、蹴るな。わかったから。」
隣から膝で小突かれた。
「手ぇ動かして。」
「わかった。」
弓と矢を使えるように手入れをする。
弦と本体をきつく絞めて強度を確認して、曲がった矢の軸を火で炙って真っ直ぐに整える。
「矢じりはどうする?」
やはりオモチャだ。
熊の毛皮に負けそうな丸い刃がついてる。
刺さりそうにない。
「矢じりはこっちの刃に付け替えて。」
「ん。」
ビスの出した先の細い小型ナイフに全て付け替える。
「少しはましだな。」
「確実に仕留めないとね。それ、僕のお気に入りだから出来るだけ回収したい。」
「それなら弓はお前が使え。俺には小さすぎる。」
「弓は苦手だった?」
「それなりに使えるが、これなら俺は斧と自分の剣の方がいい。こういうのはお前の得意だろ?」
「まあね。こっちはこんなもんかな。」
研いだ包丁の刃先を眺めていたので、手を出すと黙った渡された。
「…いいんじゃないか。…これなら刺さる。」
角度を変えて確認して答えた。
「槍は多めに作らないとね。」
「ああ、そうだな。熊と取り組みはしたくない。」
村人の話では俺達より小さいそうだ。
女性程のサイズだと。
おそらくまだ子供。
それでも爪や牙がある。
油断ならない。
「僕も。」
あとは二人で黙って作業を続けた。
「残りを頼んでいい?」
槍作りは半ばを越えて残り数本。
一人でも問題はない。
「構わないが、何かするのか?」
「罠をかけに行く。」
夜も更けて辺りは暗い
「俺も行くか?」
「いや、いいよ。ふふ、ムスタファがかかるかも。」
「あ?」
「ふふ、怒んないでよ。村の中に鳴子を少し仕掛けるだけだ。」
村から集めた縄を肩にかけて扉に向かった。
「ふん。」
ムカつく。
「くく、子供っぽい。」
「うるせぇ。俺も行く。」
「見とかないと自分がかかるかもしれないもんね。」
「黙れ。」
その気がかりもあるが、どうやるのか見たい。
こいつは俺の知らないことを多く知ってる。
学びたいだけだ。
槍を数本と剣を掴む。
「用心深いね。」
からかうわけでもなく満足そうな顔をする。
これがこいつにとっての正解だ。
「気を抜かないでね。また食べたくなるから。」
ぺろっと赤い舌を覗かせた。
「は、ほざけ。」
鼻で笑う。
簡単に食わせるものか。
奪われるだけは性に合わない。
いつか見てろよ。
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