うちの妻はかわいい~ノンケのガチムチ褐色が食われる話~

うめまつ

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第二章※イルザン

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キスをしたけど嫌われてない。

あのあと、いつものように酒を飲んで仲良く出来た。

まだチャンスがあるように思えて、それだけで朝から機嫌がよかった。

朝飯を食べに食堂に向かう途中で同じ隊のやつらにからかわれた。

「今から飯か?」

「ああ、そっちは?」

「もうすんだ。それよりよかったな、イルザン。」

「おめでとう。」

「何が?」

「ムスタファと上手くいったんだろ?食堂はその話で持ちきりだぞ。」

昨日の往来でのキスをよその隊員達が見ていて食堂で暴露されたと。

「うそぉ…」

慌ててムスタファを捕まえて謝ろうとするのに、逆に囲まれてて助かったとお礼を言われる。

しどろもどろしてる内に、他の隊員からバレた。

何か察したようでいつもの無表情が剣呑さを漂わせて俺を睨む。

ごめん、と謝るのにすかさず頭を握って潰そうとしてきた。

痛さのあまり、ぎゃあぎゃあ騒ぐと回りの隊員がムスタファと引き離してくれた。

許してほしくて立ち上がって頭を下げた。

「二度とするな。…殺すぞ。」

頭を下げててどんな顔か見えない。

でも、絶対怒ってる。

初めて聞く、今までで1番低い唸るような声。

殺すと脅されたことよりもう二度キスさせてもらえないの方がツラかった。

その日の内に隊長に呼び出された。

「お前、何をやらかした?」

「…はい。」

正直に事の起こりを伝えた。

「ばかたれ。」

「すいません。」

「…はあ。あいつ、ああ見えて繊細だからなぁ。偏見にもだいぶ憔悴してる。モテて何でも食べるような性格だったらまだ気楽だったろうに。」

「はい。」

そしたら俺もチャンスがあった。

項垂れてると隊長のため息が聞こえた。

「あいつの立ち位置、お前よりキツいんだぞ。悪目立ちさせるな。」

「…はい。」

隊の中でなら大してないけど、外に行けば見掛けで苦労してるのがわかった。

しばらく医局勤めでなかなか隊に戻ってこなかった。

食堂で一人でいるのを見かけて話しかけるがまわりにからかわれて睨まれる。

「寄るな。」

「ごめん。」

しばらく疎遠になり、久々に鍛練にムスタファが参加する。

午前中は医局で過ごし、午後からムスタファも他の部隊との合同鍛練に参加する。

もう一度謝ろうとするのに避けられた。

いつもは俺と組むのに、嫌がって一人でいたがった。

うちの隊員は俺がムスタファに惚れてると分かってるから誰も手を出さない。

よその隊員はムスタファとやり合って負けるのが嫌で相手にしたがらない。

組手の相手が見つからずまごつくムスタファに呆れた先輩が声をかけていた。

「ムスタファ、意地を張るな。」

先輩がなだめて俺のグループに入っていつものように組手をする。

他の部隊の隊員がからかってくるのをムスタファは無表情を通すが、内心のいら立ちが組手の雑さに現れた。

「珍しく勝てたぜ。」

「俺は初めてだ。」

何人か交代で取組み、負けたことのない相手にさえ負けていた。

「調子悪いな。」

仲間内からの言葉にブスくれながら頷いた。

俺が話しかけると怒った顔で睨む。

「先に戻る。ムスタファはあとから来いよ。」

ムスタファを残し、先輩に引っ張られた。

「いや、ムスタファも一緒に、」

「やめとけ。ムスタファはまた自主連するつもりだ。」

ドスン、ドスンと打ち込みの音が聞こえて振り返ると、練習用の柱に拳を当てて蹴りを入れていた。

「俺も、」

「邪魔してやるな。」

「…はい。」

いつまでも振り返りながら見てると先輩らが笑った。

「そんなに好きか?」

「え?あ、はい。」

「はは、そうか。襲うなよ。」

「無理っすよ。ムスタファの方が強いから。」

勝てる気がしない。

若い隊員の中ではムスタファと俺がツートップだ。

隊の古参メンバーの組手に呼ばれるくらいの実力。

隊長ともそれなりにやれる。

体格の差はでかい。

「少しでも好かれたいですね。」

押しだけじゃだめだ。

嫌がられてるうちは。

「揉めなきゃなんでも。俺達は構わん。」

先輩らは笑った。

「何か良い知恵ないですかね?」

「どうだろうね。ノン気の年下相手に。」

話していたらムスタファが隊長と話していてた。

「ムスタファの食わず嫌いが治るば変わるんじゃないか?」

「食わず嫌い?」

「男も女もやってみりゃ気持ちいい。」

「やれば良いのにな。」

「そうっすね。」

本当は嫌だけど。

「くく、おいおい。そんな顔するなよ。」

「へ?」

「捨てられた犬みたいな、はは、」

「はは!どんだけ、はは、」

「くく、こういうのは惚れた方が負けだぞ。あはは!」

先輩らにゲラゲラ笑われてからかわれたけど、俺はムスタファが好きだからどうってことない。

でも、ムスタファは違うんだよなぁ。

そう思ったらため息が出た。

飯も別々。

遠くに座ったあいつを昔みたいにこっそり眺めるしかなかった。

「おい、イルザン。聞いたか?ムスタファがあの娼館のハシントを落としたって。」

「うそぉ、」

「隊長が紹介で連れていったらしいぜ。」

今、花街でトップの男娼だ。

寝れば天国に行けるって。

そんなの敵うわけないじゃん。

「うそぉ…」

がっかりしているのは俺だけじゃない。

ムスタファに恋してた奴らは軒並み倒れた。

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