うちの妻はかわいい~ノンケのガチムチ褐色が食われる話~

うめまつ

文字の大きさ
上 下
38 / 67
第一章※本編

37

しおりを挟む
 兄達に守られるように腰を下ろす龍花ロンファは次々と現れる点心おやつに驚く。

「金魚さん! それにフカフカ……」
「これは饅頭まんとうと言ってね? 昔、言い伝えがあって、父上のお友だちの諸葛孔明しょかつこうめい様がある川を渡ろうとしたんだよ。でもね? そこは魔物のいる川として有名で、捧げ物をしないと氾濫すると言われた川だったんだ。で、その捧げ物の代わりに作らせたといわれているんだよ。今では色々変化していて、中にお野菜とか詰めてたり、お肉とか、癖を消すためにニラとか生姜とか、白菜とかとを混ぜて包んでいるのとか……あ、こっちは甘いあんこを包んだ桃まん」
「捧げ物……?」
「えっと……」

 とうは躊躇う。
 まだ小さい妹には……。
と、思っていたのに、あっさりと真正面の髭! が。

「人の首だ。人を殺して、川に……」
「う、うわぁぁん!」

 桃まんを次兄のこうに取って貰っていた龍花は顔を歪める。

「お兄様! これ、これ……」
「アホ親父! 小さい龍花に何を言う!」

 広は怒鳴り付け、統は慌てて、

「あのね、これは、変じゃないんだよ? それにね? 孔明様は『そんな悲惨なことは続いてはいけない。大切な命を奪うことはしてはならない。代わりに、こちらを』って蒸してね……だから大丈夫。それに、お魚さんは綺麗でしょ? 金魚は本当に金運を呼ぶとか言われているんだけど……大丈夫。本物の金魚さんを探しに行こうね?」
「金魚さん……」
「あ、私の趣味……」

 関平かんぺい……紫蘭しらんが恐る恐る手をあげる。

「じ、実は、趣味で……日本から、沢山の金魚を送って貰って……金魚鉢で……育てているんだけど、見る?」
「あ、そうだ! 紫蘭、一杯動物育ててるんだよ! ほら、あそこの庭に……」
「あ、赤兎せきと

 にゅっと首を突っ込むのは、兎とは本当に名ばかりの、栗色よりも赤みのある毛並みの馬。

「う……」
「あ、赤兎は、大きな馬だけど、大丈夫! ほら、赤兎、この前生まれた……」
「紫蘭は、何でもかんでも拾うから、何だ? 雛か? うさぎか? ネズミに猫、犬に鹿、狼に虎、ライオンにパンダ、熊に象。どれだ?」
「パンダ? パンダさんって……?」

 首をかしげる少女に、統は説明する。

「熊なんだけど、お目目の回りは黒くて……」
「あー、兄貴! 説明面倒! 紫蘭! 行くぞ! パンダ! ……おっちゃん。また泣かせたら、親父に言いつけるからな!」

 広は紫蘭を掴んで引っ張っていく。

「パンダ……?」

 首をかしげる少女に、ため息をついた関聖帝君は、

「現在、中国では大熊猫ターシェンマオと呼ばれている。熊と猫に似ていると言われているが、熊は知っているか?」
「えと……喉に白い毛がある大きいの?」
「あれはツキノワグマと言い、まだ小さい方だ。日本には大きいヒグマと言う熊がいる。世界にも色々熊はいるが、変わった姿をしている。紫蘭は、何故か変わったものに好かれる。パンダはピヤピヤ鳴いていた裸の赤ん坊を拾ってきて、育てた。他にも象やライオンに虎も怪我をしていたり弱っていたのを手当てをしたらついてきたといっていた」

と、ざわざわとしはじめ、姿を見せたのはコロコロと可愛いぬいぐるみのような白と黒の生きもの。

「白黒ちゃん?」
「この子がジャイアントパンダの子供。で、アジアライオンの子供に、ホワイトタイガーの兄弟。ユキヒョウもいるよ。こら? はく。爪出さない!」

 爪を立てて喧嘩を売ろうとしたのか、飛び出そうとするホワイトタイガーをつまむ。

ちゅうしゅくも、喧嘩しない!」
「お名前わかるの?」
「ん? あぁ、一番目が伯。初対面には攻撃的なんだ。兄弟を守ろうとするのを止められなくて……普段は大人しいけど。二番目が仲、鼻の上の引っ掻き傷は、伯に怒られて引っ掻かれたんだ。で、これが、叔。三番目。一番やんちゃ。で、季は末っ子で一匹だけ女の子。一回り小さいでしょ? おんなじ兄弟だけど、季だけ未熟児で生まれたんだ……わぁぁ! 季!」

 ホワイトタイガーの子供が、とっとこと近づくと、猫のように手をあげる。
 構って、構って?
と言いたげな様子に、目を輝かせ、だっこする。

「にゃんこさん!」
「いや、龍花っ! それ、猫じゃないよ? 虎だよ? 虎!」

 冷静な統も顔色を変える。

「それは子供で、おっきくなったら、その赤兎位の馬も、獲物にするんだよ? 猛獣! 猫じゃない!」
「えぇぇ? にゃんこさん、がぶーするの?」

 喉をくすぐられゴロゴロと甘える様は猫科だが、脚が、大きさが違いすぎる。

「紫蘭! これ、引き取って! パンダかうさぎ! 危険物外を!」
「パンダも猛獣だけど……」
「のんきに言うな! 龍花が飼いたいっていったら……」
「お兄様飼って良いの?」

 目をキラキラさせて言う姿に、

「えっとね? 龍花……犬とかならと……」
「でも、兄貴」

 アジアライオンの子供と遊びながら、広が余計なことを言った。

「犬。家じゃいつかないじゃん。白竜駒が嫌がるし」
「広! 余計なことを!」
「お兄様……駄目?」

 子供の虎を抱き締め、上目使いに見る愛らしい妹のおねだりに……統は屈した。

「……し、紫蘭に、飼い方を教えてもらうんだよ? それに、ちゃんとしつけはしなくちゃね?」
「基本的に自由なんだけど……猫科だから、無理に抑え込むと攻撃するよ?」
「そこで余計な口挟むな! 紫蘭! それぐらい解ってる! けど、ある程度は必要だといってるんだ!」
「わーい!」

 喜んでいると、何やら3頭の兄弟が顔を見て、とことこと龍花に近づく。
 くいくいと手を動かしたり、スリスリと足に頭をすり寄せたり……。

「え? 皆来るの?」
「紫蘭!」
「えっと……基本的に猫科だから……」
「逃げるな! どうするんだ! 虎だぞ虎! まだ金魚なら良かった!」

 統は嘆くが、妹のおねだりに屈した。



 渋い顔で、点心を食べた後、

「じゃぁ、一応、帰りに迎えに来るから……」

と口にして、内心は『来ずに帰ってやる』と思っていた統に、紫蘭は、

周倉しゅうそうの叔父さんに頼んでおくから、大丈夫だよ。あぁ、私も、孔明様の所に伺おうと思ってるんだ。一緒に行くね」

とにっこり笑う。
 統は裏があるが、紫蘭は全く裏表がなく、素直である。
 悪気はないが、逆に……。

「……解った。龍花。一緒に行こうね」

 怒りをこらえつつ妹を連れていこうとしたのだが、

「お兄様! 龍花、紫蘭お兄様とお話しする!」
「……じゃぁ、そうしようね」

 心の中で、

『明日は紫蘭をボッコボコにしてやる!』

と宣言する兄貴の姿に、首をすくめ……。

「……兄貴、負のオーラ全開だぞ。笑顔が怖い! 龍花泣くぞ」

とだけ声をかけたのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

ハンターがマッサージ?で堕とされちゃう話

あずき
BL
【登場人物】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ハンター ライト(17) ???? アル(20) ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 後半のキャラ崩壊は許してください;;

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

年越しチン玉蕎麦!!

ミクリ21
BL
チン玉……もちろん、ナニのことです。

フルチン魔王と雄っぱい勇者

ミクリ21
BL
フルチンの魔王と、雄っぱいが素晴らしい勇者の話。

イケメンモデルと新人マネージャーが結ばれるまでの話

タタミ
BL
新坂真澄…27歳。トップモデル。端正な顔立ちと抜群のスタイルでブレイク中。瀬戸のことが好きだが、隠している。 瀬戸幸人…24歳。マネージャー。最近新坂の担当になった社会人2年目。新坂に仲良くしてもらって懐いているが、好意には気付いていない。 笹川尚也…27歳。チーフマネージャー。新坂とは学生時代からの友人関係。新坂のことは大抵なんでも分かる。

真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~

シキ
BL
全寮制学園モノBL。 倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。 倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……? 真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。 一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。 こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。 今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。 当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。

目覚ましに先輩の声を使ってたらバレた話

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
サッカー部の先輩・ハヤトの声が密かに大好きなミノル。 彼を誘い家に泊まってもらった翌朝、目覚ましが鳴った。 ……あ。 音声アラームを先輩の声にしているのがバレた。 しかもボイスレコーダーでこっそり録音していたことも白状することに。 やばい、どうしよう。

処理中です...