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第一章※本編
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夜は護衛がある。
それまで昼間は時間が空いてるので子供の様子を見に行く。
「俺も行く?」
「いや、いい。」
イルザンは置いていった。
役所についたら所長に挨拶をする。
「昨日はすいません、あの子はいますか?」
「あの怪我じゃ追い出せませんよ。賄いの夫婦が面倒見てます。」
医務室に寄る。
『具合はどうだ?』
『痛い。』
熱も出ていた。
手持ちから痛み止と解熱剤を飲ませる。
『薬、高いだろ?いいよ。返せない。』
『今はいい。大きくなって働け。』
人の良さそうな賄いの夫婦にお礼を良い薬を預けた。
多目に。
二つの袋を渡した。
「これ、全部あの子に?」
「いえ、半分はお宅に。常備薬として受け取ってください。痛み止と解熱剤です。」
薬は高価だから欲しがる。
金の代わりだ。
「良かった。小さい孫達に使います。」
自分で山に入って材料を集めて作ったものだ。
手間がかかるが元手はかかってない。
あげれるものはそれくらいだった。
「また来ます。」
薬を飲ませてるか確認しに。
いくら人が良さそうでも信用してなかった。
所長に同じことを伝えた。
軍の物を盗んだと言われたくないので自作と伝えた。
「図々しい、お願いですが、うちの子を診てもらえませんか?」
後日、約束し役所を出た。
次はハシントの所だ。
以前もらった手紙で働いていると書いてあった。
引き取られた旦那の仕事を手伝ってるそうだ。
店の前で店員に会えるか尋ねた。
奥から背の伸びて男らしくなったハシントが走って出てきた。
「押し掛けてすまない。」
「謝るならこっち来て。うちの旦那は嫉妬深いんだから。」
急いで店を出るハシントの後を追う。
店から離れた路地裏に入る。
「何?何かあったんだろ?あんたが来るはずない。」
「ああ。頼みがある。」
怪我した子供のことを伝えた。
親は旅の途中で置いてかれてひとりだと聞いていた。
どこか信用できるところに預けたかった。
「そうなんだ。でも、ごめん。…俺に権限はないから。」
「…そうか。」
ハシントの店で雇えないか相談したかった。
「他所の店に聞いてみとこうか?」
「…どこでも、いいわけじゃない。信用できるところに預けたかった。」
見開いた目を見つめた。
「…僕を、信用できると思ったの?」
「ああ。無理を言った。すまない。」
「他に宛はある?」
「…ない。あとは娼館くらいだ。」
「それは、嫌なの?」
「…見目がな。…それに他があるならそれがいい。」
病気になって死ぬことが多い。
ハシントが稀だ。
顔だけじゃない。
頭が良い。
苦手だった文字も上達して、計算を教えたらあっという間に覚えた。
デカイ商会の旦那を捕まえて身請けされて、そこで勤めてる。
「…ムスタファには借りがあるからなぁ。力になりたいけど。」
「何もない。お前が努力しただけだ。」
ふっと笑うと下から顔を覗かれた。
「なんだ?」
「顔色悪いよ。大丈夫か?」
「医者の不養生か。前より寝てるんだが。」
顎をさすって呟く。
「その子、心配?」
「…ああ。…そうだな。気がかりだ。」
怪我が治っても行く宛がない。
孤児院も、色ちがいを入れるところは稀だ。
王都から離れた僻地にはあるそうだが、噂でしか知らない。
本当にあるかも怪しい。
旦那様にも引き取れないか聞いてみようと思ったが、家格が高すぎて難民のあの子は雇えない。
あとは領地だが、宛もなく送り出すわけにはいかない。
俺は仕事があるからついてもいけない。
それに最悪、娼館に紹介しても。
あの怪我なら顔に傷が残る。
無理だろう。
「…死なす為に治したんじゃない。」
「…そうだね。」
「他にも聞いてみる。何処か、何かしらあるかもしれない。」
「…わかった。あまり、根を詰めるなよ?本当に顔色悪い。」
「ああ、すまなかった。」
その日はそれで帰った。
夜になってイルザンと正装に着替えた。
「似合うね。」
「そうか?」
色が合わない気がする。
「つまみ食いしたくなる。」
尻を握られて叩いた。
「やめろ。」
「あはは!ごめーん。」
ふざけた様子に顔を掴もうとする素振りを見せたら慌てた。
「やめてくれ!本当にごめん!」
仰け反って逃げるが、ベッドに引っ掛かって座り込んだ。
「次は潰すぞ。」
「こわー…」
両手で顔を押さえて怯えて見せてる。
「でも、キスはいい?」
「…ああ。」
自分から屈んで唇に触れた。
「ん、んん、あ、はぁ。」
思ったより深く貪った。
自分でもしたかったんだと思う。
お互いの鼻息が荒くなって止め時がわからなかった。
「もう、時間だ。ムスタファ、帰ってからにしないか。あ、んん。」
「ん、ちゅっ、わかった。」
数名の隊員と馬に乗って向かう。
「おい、色男。」
ちらっと視線を向ける。
お喋りアルグス。
コンドラットはいない。
「今日はお前をご指名だったらしいな?」
「知らん。」
「へえ、そうか?でも発情期になるなよ?今日は街の有名な商人と高位貴族らが集まるからな。下品な尻を振って踊るなよ、はは。」
顔を崩さないように気を付けた。
お前が下品だ。
「アルグス、やめろって。」
イルザンが声をかける。
「ほーら、下民の彼氏のお出ましだ。」
「そういうことじゃない。お前も仲間だけどムスタファも仲間だ。仲間が貶されたら嫌なんだよ。お前こそ、コンドラットがいないんだ。何かあればフォローは俺達が入るんだぞ?あとあと困るのはそっちだ。」
「ヘマなんかしねぇよ。お前らと違って。」
「そうかい?この間、花街の言葉の通じない女の子に荒っぽくして追い返されてたろ?間に入ってやったの忘れたか?」
「あ?お前、そんなことしてたのかよ?」
なんだ、その話。
知らん。
睨むと慌てていた。
「ここ、ここで言うなよ!いや、あれは誤解されただけだ!」
他の奴等も混ざってどういうことかと根掘り葉掘り聞き出し始めた。
他の奴等も馴染みの女の子だったようで、キツい物言いで怒った。
「はは、ざまぁみろ。」
まだ店に出て日が浅い娘たちだから荒くするなというのに言葉がわからず無視したそうだ。
何人か女の子が痛みで動けなくなり店と揉めたそうだ。
言葉の練習に付き合った奴等が混ざってて、ついでに追い出されてイルザンが頼まれて間に入ったそうだ。
俺を頼るのは嫌だったそうだ。
「バカか?」
「バカだよな。」
「うるせぇ!」
それまで昼間は時間が空いてるので子供の様子を見に行く。
「俺も行く?」
「いや、いい。」
イルザンは置いていった。
役所についたら所長に挨拶をする。
「昨日はすいません、あの子はいますか?」
「あの怪我じゃ追い出せませんよ。賄いの夫婦が面倒見てます。」
医務室に寄る。
『具合はどうだ?』
『痛い。』
熱も出ていた。
手持ちから痛み止と解熱剤を飲ませる。
『薬、高いだろ?いいよ。返せない。』
『今はいい。大きくなって働け。』
人の良さそうな賄いの夫婦にお礼を良い薬を預けた。
多目に。
二つの袋を渡した。
「これ、全部あの子に?」
「いえ、半分はお宅に。常備薬として受け取ってください。痛み止と解熱剤です。」
薬は高価だから欲しがる。
金の代わりだ。
「良かった。小さい孫達に使います。」
自分で山に入って材料を集めて作ったものだ。
手間がかかるが元手はかかってない。
あげれるものはそれくらいだった。
「また来ます。」
薬を飲ませてるか確認しに。
いくら人が良さそうでも信用してなかった。
所長に同じことを伝えた。
軍の物を盗んだと言われたくないので自作と伝えた。
「図々しい、お願いですが、うちの子を診てもらえませんか?」
後日、約束し役所を出た。
次はハシントの所だ。
以前もらった手紙で働いていると書いてあった。
引き取られた旦那の仕事を手伝ってるそうだ。
店の前で店員に会えるか尋ねた。
奥から背の伸びて男らしくなったハシントが走って出てきた。
「押し掛けてすまない。」
「謝るならこっち来て。うちの旦那は嫉妬深いんだから。」
急いで店を出るハシントの後を追う。
店から離れた路地裏に入る。
「何?何かあったんだろ?あんたが来るはずない。」
「ああ。頼みがある。」
怪我した子供のことを伝えた。
親は旅の途中で置いてかれてひとりだと聞いていた。
どこか信用できるところに預けたかった。
「そうなんだ。でも、ごめん。…俺に権限はないから。」
「…そうか。」
ハシントの店で雇えないか相談したかった。
「他所の店に聞いてみとこうか?」
「…どこでも、いいわけじゃない。信用できるところに預けたかった。」
見開いた目を見つめた。
「…僕を、信用できると思ったの?」
「ああ。無理を言った。すまない。」
「他に宛はある?」
「…ない。あとは娼館くらいだ。」
「それは、嫌なの?」
「…見目がな。…それに他があるならそれがいい。」
病気になって死ぬことが多い。
ハシントが稀だ。
顔だけじゃない。
頭が良い。
苦手だった文字も上達して、計算を教えたらあっという間に覚えた。
デカイ商会の旦那を捕まえて身請けされて、そこで勤めてる。
「…ムスタファには借りがあるからなぁ。力になりたいけど。」
「何もない。お前が努力しただけだ。」
ふっと笑うと下から顔を覗かれた。
「なんだ?」
「顔色悪いよ。大丈夫か?」
「医者の不養生か。前より寝てるんだが。」
顎をさすって呟く。
「その子、心配?」
「…ああ。…そうだな。気がかりだ。」
怪我が治っても行く宛がない。
孤児院も、色ちがいを入れるところは稀だ。
王都から離れた僻地にはあるそうだが、噂でしか知らない。
本当にあるかも怪しい。
旦那様にも引き取れないか聞いてみようと思ったが、家格が高すぎて難民のあの子は雇えない。
あとは領地だが、宛もなく送り出すわけにはいかない。
俺は仕事があるからついてもいけない。
それに最悪、娼館に紹介しても。
あの怪我なら顔に傷が残る。
無理だろう。
「…死なす為に治したんじゃない。」
「…そうだね。」
「他にも聞いてみる。何処か、何かしらあるかもしれない。」
「…わかった。あまり、根を詰めるなよ?本当に顔色悪い。」
「ああ、すまなかった。」
その日はそれで帰った。
夜になってイルザンと正装に着替えた。
「似合うね。」
「そうか?」
色が合わない気がする。
「つまみ食いしたくなる。」
尻を握られて叩いた。
「やめろ。」
「あはは!ごめーん。」
ふざけた様子に顔を掴もうとする素振りを見せたら慌てた。
「やめてくれ!本当にごめん!」
仰け反って逃げるが、ベッドに引っ掛かって座り込んだ。
「次は潰すぞ。」
「こわー…」
両手で顔を押さえて怯えて見せてる。
「でも、キスはいい?」
「…ああ。」
自分から屈んで唇に触れた。
「ん、んん、あ、はぁ。」
思ったより深く貪った。
自分でもしたかったんだと思う。
お互いの鼻息が荒くなって止め時がわからなかった。
「もう、時間だ。ムスタファ、帰ってからにしないか。あ、んん。」
「ん、ちゅっ、わかった。」
数名の隊員と馬に乗って向かう。
「おい、色男。」
ちらっと視線を向ける。
お喋りアルグス。
コンドラットはいない。
「今日はお前をご指名だったらしいな?」
「知らん。」
「へえ、そうか?でも発情期になるなよ?今日は街の有名な商人と高位貴族らが集まるからな。下品な尻を振って踊るなよ、はは。」
顔を崩さないように気を付けた。
お前が下品だ。
「アルグス、やめろって。」
イルザンが声をかける。
「ほーら、下民の彼氏のお出ましだ。」
「そういうことじゃない。お前も仲間だけどムスタファも仲間だ。仲間が貶されたら嫌なんだよ。お前こそ、コンドラットがいないんだ。何かあればフォローは俺達が入るんだぞ?あとあと困るのはそっちだ。」
「ヘマなんかしねぇよ。お前らと違って。」
「そうかい?この間、花街の言葉の通じない女の子に荒っぽくして追い返されてたろ?間に入ってやったの忘れたか?」
「あ?お前、そんなことしてたのかよ?」
なんだ、その話。
知らん。
睨むと慌てていた。
「ここ、ここで言うなよ!いや、あれは誤解されただけだ!」
他の奴等も混ざってどういうことかと根掘り葉掘り聞き出し始めた。
他の奴等も馴染みの女の子だったようで、キツい物言いで怒った。
「はは、ざまぁみろ。」
まだ店に出て日が浅い娘たちだから荒くするなというのに言葉がわからず無視したそうだ。
何人か女の子が痛みで動けなくなり店と揉めたそうだ。
言葉の練習に付き合った奴等が混ざってて、ついでに追い出されてイルザンが頼まれて間に入ったそうだ。
俺を頼るのは嫌だったそうだ。
「バカか?」
「バカだよな。」
「うるせぇ!」
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