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37*カナン

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半年もたつとダグがアリオンを気に入って手放したがらなくなった。

回復した体は以前より細くなったとは言え今まで培った豪腕と剣技は健在。

そして普段から街の整備や突発的な悪漢退治、果ては自警団を統率して火事の対応など活躍が目覚ましい。

しかし王家の罪人としての咎が消えたわけではなく、ダグには死に水を取るだけを許したのだ。

健を潰すなり毒を飲ますなり処分しろと言うと初めて暴力ではなく言葉だけでダグが泣いた。

「も、申し訳ありません。お言葉を、分かっているのですが、せっかく、せっかく助けたのにと悲しくて。すいません!カナン様!じ、自分には辛くて出来ません!ううっ、カ、カナン様が采配を、されて、ください!」

抵抗は見せないが初めて見せる号泣に固まった。

側に控えていた団長も領内で咎があるなら領民の納得を得られるが、こうも街へ尽力して有名になった功労者に賛成は出来ないと意見を述べる。

どうしたらとさすがに呻いた。

その横で団長は新しく提案を口にした。

「……兵団で雇うだと?」

「ひとつの提案です」

能力の高いアリオンをダグの家事奴隷として遊ばせておくのは勿体ないと団長が提案してきた。

「新しい主人のもとで勤めていることとカナン様への忠誠を王家に見せれば表向きの指示には従った形になります。それにダグの側に置いておけば虫除けに役立ちますよ」

「あれが虫だろうが」

苦々しい感情が腹に広がった。

私が構いすぎれば倒れるので、定期的にダグを休みを与えて放っておけば男に好かれる。

見目の良さと柔らかな物腰から押せば行けると男からも女からもよく押し倒されている。

何かと虫が多かった。

そしてアリオンも虫だ。

二人の夜のイタズラは把握している。

定期的に人をやって見張りをさせていたから報告が来た。

二人とも一線を越えた声がしたと。

即座にダグの尻を引っ張たいて折檻したが、すぼまりは相変わらず固く、他で使ったかと問えば私の世話の仕事をしてるからしないと真顔で答えた。

その上、ここは固めがお好きでしょうと不思議そうにのたまった。

ほぐす道具も気を使っていると話すので何も言えない。

夜の世話まで気を回して生真面目にこなすつもりなのは呆れる。

逆に、なぜ急にそんなことを聞くのかと問われて黙ってしまった。

悋気だと知られるのは不本意だ。

アリオンの相手をするなと注意も出来ずにそのままにしていたら、夜な夜なこいつらは飽きもせず。

寝台を並べて新婚のように毎晩、仲睦まじいと聞いて二人まとめて手打ちにしてしまいたいほど腹が立つ。

プライドからそんなことはしないが、どうにか引き剥がしたくて仕方がない。

そのために今回、以前の咎をこじつけてアリオンの処分を告げたのにダグの号泣に臆してしまった。

目の奥に初めて浮かんだ恨みに怯んだことが悔やまれる。

強硬すればずっとこの瞳に睨まれる。

勢いだけでアリオンを殺れとは言えなかった私はダグに関してだけは本当に愚鈍だと呪いたくなる。

内心を露吐したくない私は苦々しく黙るだけで何も出来ない。

休みを与えてしまうと勘違いをしているダグはお役ごめんと次はアリオンを受け入れるつもりなのも分かっている。

させるかと滾る想いを抑えて閨は手加減をしているから、ダグの勤めの最長記録を更新している。

新しい男娼が呼ばれないことを不思議がって待機中に他の団員らと話していた。

このアホが。

私を困らせるのはこいつくらいだ。

しかもアリオンの存在で私の荒さが減ったことを団長達も理解しているからアリオンを生かす気でいる。

知恵を使い始めたことに腹が立つ。

その結果、なし崩しに兵団の勤務を許す羽目になった。

少しでも不備があれば手打ちにと狙うのに意に反して目覚ましい活躍をするからどうしようもない。

しかも活躍をすれば自慢の騎士様だとダグが無邪気に喜び、アリオンもダグとコルトナー家のためにと献身と忠誠を示す。

非の打ち所がなく報奨を与える機会ばかり増えた。

口惜しくもあるが、他にはない拾い物だった。
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