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男泣き

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「にーんじゅう、にじゅういーち、」
「ねえ、アグネリア疲れてなぁい?大丈夫かしら?心配だわ」
「いえ大丈夫ですよ、奥様はお優しい。ああ、でも私はまたしくじりました。何回目でしょうか?」
「さあ?」
「また最初から?」
「そうね。そうしてくれる?大変だと思うけど」
「大公のご協力があればよかったのですが」
「いいのよ。きっとお楽しみよ?数えないと言うことはそう言うことよ」
「クレイン!貴様の嫁をどうにかしろ!頭がおかしい!」
「大公がワルキューレを怒らせるからですよ。こうなれば誰も手がつけられない」
笑いながら答える声に罵声を返す。
「くそが!このグズ!」
「まあ、また私の夫への暴言」
手のひらとは違う鞭の音が立て続けに響く。 
「ぎゃあ!ぎゃっ!」
「許すと思って?お馬鹿さん。ただでさえ頭に来てるのに。ほら、ほら、もっと泣きなさいよ。私の気が張れるわ。本当にどれだけ夫を困らせれば気がすむのよ。娘のこともラウルのことも、随分好きにしてくれたじゃない?あなたがそこの父親以上の責任者だというなら身を持って償いなさい、ほら、泣き叫びなさい」
服に覆われた太ももや背中と傷の残らない辺りを狙うが、わざと肌の弱いところも合間で叩きつけている。
「アグネリア、始めなさい」
「いーち、」
「大公、いちよ。数えなさい」
「い、いち」
「小さいっ!大きくよ!」
また鞭が響く。
「うああっ!い、いーち!」
「続けて」
「にー」
「に、にー!」
「さーん」
「さーん!」
しばらく数えていたが、夫人が鞭をアグネリアの肩に置いて動きを止める。
「アグネリア、もっと懲らしめてやりたいわ。何か思い付かない?」
「そうですねぇ」
大公を膝に乗せたまま、ずるずるっと位置を変えてこちらに尻を向ける形に整えると、腹の下に手を入れた。
「ひ、や、やめ、ろっ、ぎゃあああっ!」
抵抗に身体を揺らすと今までの平手打ちが可愛く思えるような音を立てて尻をひっぱたいた。
「大人しくされてください。本気で叩きますよ」
本来ならこのくらいで叩くんですと言ってのけた。
「そうよ?手加減してますのよ。アグネリアは大公の身分を鑑みて優しいでしょう?」
余程痛かったのだ。
ぶるぶると身体が震えて咳き込み、息苦しさに呻いている。
大人しくなると片手で腰のベルトを緩めてズボンのボタンを緩めた。
まさかと、こちらがおののくのを気にせず、ズボンを太ももまで下げて尻を丸出しにした。
少しでも尻が高くなるように足の位置をずらして太ももを軽くぱちん、ぱちんと叩いた。
大公は痛みと恥ずかしさでガタガタ震えて叫べもせずにいる。
「奥様、これでいかがでしょうか」
アグネリアは無表情に大公を眺め、夫人へと視線を向けた。
「まあ、お尻が真っ赤になってる」
ぺちんぺちんと持っていた鞭でつついて遊ぶと大公が静かにすすり泣いた。
通算すると50回を越えて叩かれた上に先程かなり手酷くひっぱたかれてた。
「うちの一族に昔の本があります。昔の住みかにはお尻の赤い猿がいたそうです。絵にそっくりですよ。牝は発情期になるとこんな風にお尻を赤くして仲間内に知らせ交配をするとありました」
この辺りは顔を赤くしたり胸の皮膚を膨らませるのに、大公は陸向こうの牝猿みたいになりましたと笑うと、大公の咽び泣きが大きくなる。
「あらあら、泣いてしまって可愛いこと。高貴な方は涙が真珠かしら?皆さんに見せてくださる?」
アグネリアが服の背中辺りを掴むと持ち上げてこちらへ向けさせようとした。
「ベイリーフ、やめなさい。悪趣味だ」
見たくないとジェラルド伯が答えるとアグネリアが大公を膝立ちにさせたまま止まった。
「クレイン、頼む、頼むぅ、やめさせてくれ。お願いだ」
これ以上の辱しめは許してくれと嗚咽をこぼして泣く大公の背中を団員らは目をそらしていた。
「あら、ごめんなさい。アグネリア、部屋に運んで。続きは中でするわ」
ペリエ嬢が使っていた部屋の扉は開いている。
アグネリアは泣いて尻を出したままえずく大公を小脇に抱えてそちらに向かった。
「宰相も、そちらへ」
夫人が鞭を向けて指図するとギクシャクとアグネリアのあとを追う。
中からは、また最初から数える声と素肌を叩く音が響いてくる。
先程より痛みがあるらしく、ひ、ひ、と叩かれる度に細かく悲鳴が聞こえる。
それでも必死でアグネリアに合わせて数を大声で唱えていた。
「トリス、モルガナを呼びなさい」
「え、も、モルガナを?」
「伴侶への侮辱よ。あの子にも鞭打ちを手伝わせるわ」
念を飛ばしたのでモルガナが狭い通路を羽ばたかせながら飛んできた。
何が起きたのか分からず顔色が悪い。
「来なさい。トリスを侮辱した男を折檻するわよ」
「お、お待ちください、トリス?何があったの?」
「も、モルガナァ」
この恐ろしい状況に気持ちが溢れたらしい。
夫人のされようを最も間近で見るはめになり、あまりのことに壁に張り付いて震えていたのだから。
メソメソ泣いてモルガナに抱きついた。
大公のされようを夫人は時折、補足を入れつつトリスの言葉を引き出して事情を伝えるとめらっと魔力が揺らいだ。
「…奥様、私はサキュバスです。復讐は私のやり方でお許しください」
「構わないわ。好きになさい」
怒りに滾るモルガナを連れて中に入り、姿が見えなくなると回りが、ふ、と息を吐いて肩の力を抜く。
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