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胸のうち
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ダリウスもヤンも言葉を尽くしてエヴに愛情を伝えた。
「旦那様から託された頃からエヴ様のために生きると決めておりました。欲が出て、添い遂げるのは自分だと恥ずかしながら勝手に。…誠に申し訳ありません」
「俺は最初、ただの勤めと思っていました。子守りと警護の。魔人はしょっちゅうだし、ヤンは怖いし殺されそうだし、逃げたかった。でも、あの中で一番辛そうなのはエヴ様で、苦しんでいたのに俺の指を握って笑ったんです。あの時、ずっとお守りしたいと思った。目覚めれば私の見かけを好んでくれました。普通は怖がるのに。俺なんかを大事してくれて、それがいつも伝わってきて、舞い上がってしまいました」
好きになってすいませんと眉を下げて謝った。
「…嫌なこと言ったのは、ごめん。お金とか、色々。あんな、ぼこぼこの、緑の気持ち悪い塊だったのに」
「可愛かったですよ。調子がいい時はニコニコ笑ってご機嫌で。私達の手を触れて離しませんでしたね」
「抱っこして散歩すると、風や日差しに喜んで気持ち良さそうに寝ていました」
「ダリウスは、だから抱っこしたかったの?懐かしいから」
「え"、そ、それは、」
焼きもちですと小さく呟く。
「団長ばかり、と思ったら羨ましくて、」
「抱っこする?」
「エヴ、だめだよ」
喜んで頷くダリウスの目の前でロバート殿が制した。
「求婚をするというなら一人の男だ。安易に触らせないの」
「だめなんですか?」
「ダリウスがいいなら選べばいいんだよ」
「誰かひとり?」
「そう。ずっと一緒にいたい相手を」
キョロキョロと顔を二人の顔を見比べて悩んでる。
私には目もくれない。
諾と言えば良かったかと一瞬よぎった。
「…選べない。…どっちも、家族みたいに思ってるから。お兄様やお父様、みたいに」
私を忘れるなと告げようと口を開いたら、疲れた顔でエヴが呟いた。
「…なんで、こんなことに?…団長も、ヤンも、ダリウスも。アモルもだし、あれは乱暴で皆を傷つける変態だから嫌いだけど」
両手でこめかみを抑えて苦しそうに目をつぶった。
「考えたら頭痛い。…なんで、私なの」
ふうと溜め息を吐いた。
「私は今のまま皆とずっと仲良く暮らしたいだけなのに、なんで?」
「ずっとは出来ない。ロバート殿も彼らも機会があれば結婚し、あなたから離れる未来もあるだろう?以前、守護の紋があれどグリーブスの番と理解してそれなりに前向きに考えていたと思ったが?」
「守護持ちは、結婚に向かないからあんまりしたくない。言われ続けるのも嫌。だからこのまま私はクレインで、皆の家族を守りながら暮らすと思ってました。お兄様やヤン達の赤ちゃんを抱っこしたり、奥さんとお友達になりたい。仲良く暮らしたい」
「つまり私を選ぶ気はないと?早い段階でそう決めていたわけか。なるほど」
「あ"」
しまったと顔を上げて私を見つめた。
「まあ、いい」
ふん、と鼻を鳴らして話をやめた。
以前、婚姻と自身を餌に従わされた時よりましだ。
だいたい、エヴの気のなさは理解している。
大方の予想通りだ。
流れに任せて体に触れても籠絡することも出来ず甘やかして懐柔することも上手くいかなかった。
気難しい。
と言うより、本人にその気が全くないせいだ。
「旦那様から託された頃からエヴ様のために生きると決めておりました。欲が出て、添い遂げるのは自分だと恥ずかしながら勝手に。…誠に申し訳ありません」
「俺は最初、ただの勤めと思っていました。子守りと警護の。魔人はしょっちゅうだし、ヤンは怖いし殺されそうだし、逃げたかった。でも、あの中で一番辛そうなのはエヴ様で、苦しんでいたのに俺の指を握って笑ったんです。あの時、ずっとお守りしたいと思った。目覚めれば私の見かけを好んでくれました。普通は怖がるのに。俺なんかを大事してくれて、それがいつも伝わってきて、舞い上がってしまいました」
好きになってすいませんと眉を下げて謝った。
「…嫌なこと言ったのは、ごめん。お金とか、色々。あんな、ぼこぼこの、緑の気持ち悪い塊だったのに」
「可愛かったですよ。調子がいい時はニコニコ笑ってご機嫌で。私達の手を触れて離しませんでしたね」
「抱っこして散歩すると、風や日差しに喜んで気持ち良さそうに寝ていました」
「ダリウスは、だから抱っこしたかったの?懐かしいから」
「え"、そ、それは、」
焼きもちですと小さく呟く。
「団長ばかり、と思ったら羨ましくて、」
「抱っこする?」
「エヴ、だめだよ」
喜んで頷くダリウスの目の前でロバート殿が制した。
「求婚をするというなら一人の男だ。安易に触らせないの」
「だめなんですか?」
「ダリウスがいいなら選べばいいんだよ」
「誰かひとり?」
「そう。ずっと一緒にいたい相手を」
キョロキョロと顔を二人の顔を見比べて悩んでる。
私には目もくれない。
諾と言えば良かったかと一瞬よぎった。
「…選べない。…どっちも、家族みたいに思ってるから。お兄様やお父様、みたいに」
私を忘れるなと告げようと口を開いたら、疲れた顔でエヴが呟いた。
「…なんで、こんなことに?…団長も、ヤンも、ダリウスも。アモルもだし、あれは乱暴で皆を傷つける変態だから嫌いだけど」
両手でこめかみを抑えて苦しそうに目をつぶった。
「考えたら頭痛い。…なんで、私なの」
ふうと溜め息を吐いた。
「私は今のまま皆とずっと仲良く暮らしたいだけなのに、なんで?」
「ずっとは出来ない。ロバート殿も彼らも機会があれば結婚し、あなたから離れる未来もあるだろう?以前、守護の紋があれどグリーブスの番と理解してそれなりに前向きに考えていたと思ったが?」
「守護持ちは、結婚に向かないからあんまりしたくない。言われ続けるのも嫌。だからこのまま私はクレインで、皆の家族を守りながら暮らすと思ってました。お兄様やヤン達の赤ちゃんを抱っこしたり、奥さんとお友達になりたい。仲良く暮らしたい」
「つまり私を選ぶ気はないと?早い段階でそう決めていたわけか。なるほど」
「あ"」
しまったと顔を上げて私を見つめた。
「まあ、いい」
ふん、と鼻を鳴らして話をやめた。
以前、婚姻と自身を餌に従わされた時よりましだ。
だいたい、エヴの気のなさは理解している。
大方の予想通りだ。
流れに任せて体に触れても籠絡することも出来ず甘やかして懐柔することも上手くいかなかった。
気難しい。
と言うより、本人にその気が全くないせいだ。
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