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素質
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「わー!だめっす!見ないで!いでで!」
声に振り返るとエヴがリーグの顔に被さって額の紙をまじまじと覗いていた。
「これ何?なんでおでこに紙を貼ってるの?文字がピカピカしてる。すごーい、きれー」
エヴがどんどん寄っていくのを抵抗に身をよじって逃げるが、痛みで呻いている。
「早く取ってやれ!」
「いたい!いたい!分かった!分かったから!」
ラウルはダリウスに首根っこ捕まれて引きずられていた。
「エヴ様!何でもないです!」
ダリウスがそう言うと頭を捕まれたラウルが急いで紙を剥がして、何のことか分からないヤンは首を捻ってやり取りを眺めていた。
「私のこと大好きって出てたー。私も好きだよ、ありがとうリーグ」
「ちき、しょぉぉ!ラウル!てめぇのせいだぁぁ!あだ!だだっ!いてぇぇぇ!」
怒りに飛び起きたリーグは痛みで揉んどりうって苦しみ、それに驚いたエヴが治療しようと寝台に飛び乗って顔を掴むのをヤンと私で羽交い締めに捕まえて部屋は大騒ぎだった。
「あんた達!何やってんだい!ラウル!世話が要らないなら呼ぶんじゃない!」
「おばちゃん、これは、」
どうやらラウルの世話人らしく騒ぎを聞き付けて部屋に飛び込んできた。
「怪我人の前でこんなに騒ぐなら出てお行き!お嬢様もだよ!ほらほら!とっとと出る!」
「わわ!ごめんなさぁい!」
箒を振り回して追いたてるので慌てて部屋から飛び出して通路に出た。
ほっと一息入れていると後ろで扉が開いた。
「ちょい待ちな、忘れもん」
ご婦人が箒を肩に担いでラウルへ杖を渡した。
「ラウル、あんた元気そうね?あとはこのお坊っちゃんの世話をするからあんたは一人で何でもやんな?」
「…はい、すいません」
「新しい世話人はあとで来るから迷惑かけないように大人しくするんだよ?わかったね?ったくもう!」
言うだけ言うと、ばんっと勢いよく閉まった。
「怒らせちゃったね、怖かった」
「騒ぎすぎましたね」
仕方ないとため息を吐いてエヴがラウルに向き合った。
「ラウル、これをお姫様から剥いだの。何か分かる?れ、」
「通路だ。やめろ。ラウルの部屋はどこだ?」
「こっちです」
慌ててエヴの顔を押さえてラウルの部屋に連れていく。
ラウルは術式が気になるようで入った途端、顔を両手に挟んで見せろと促していた。
舌を出して大きく口を開けた。
「んー、この国の一般的な恋愛成就の術式ですね。でも細かい紋様がおかしい。…見辛いなぁ。こっちに移せますか?」
紙を出して移し方を説明し、エヴは言う通りに紙の上に舌をぺったり引っ付け光ったと思ったら、紙に術式が移った。
二人とも当然と受け入れているがますます人族から離れていってる。
人族のエヴなら強化しか持ち得ないのに。
ラウルは紙の術式をじっと見つめ、しばらくすると顔をあげた。
「団長、これ俺の予想が当たりかも」
「は?」
「術式一つずつなら大したことないんだけど重ねづけしてかなり効果が出る。しかも他の呪符も混ぜてるから精神に混乱を招くはず。ほら、線が重なってるから滲んでるでしょう?」
「本当だぁ。ここよね?こっちはまた違う術式?」
「そうですよ。色が違うでしょう。重なって見えにくいけどこっちに繋がってます。濃いここが全体の核になります」
「どうやって何の術式か分かるの?全部覚えるの?」
「俺は覚えてますけど、注目するのは式に使われた植物や花の絵です。模様に意味があり、物によっては文字が隠されてますのでそれを見れば何の術式か分かります」
二人の談義にふとヤンへ目線を向けると、私の視線に渋い顔で首を振った。
その横でダリウスが首をかしげ不可解そうに眉をひそめる。
「さっぱりです。違いが分かりません」
「俺もだ」
「ああ、滲んでるってどこがだ?色は分かるか?」
私達も囲んで紙を覗いた。
「エヴ様が分かるようになったのは魔人化の影響でしょう。団長は目に魔力を流してもダメですか?」
言われた通り試してみるが式の複雑な線がまばらに光るだけだった。
ヤン達は黒い線の塊にしか見えないと言う。
「種族の特性の違いですね。素質がないと違いが目に映らない」
面白いとラウルは喜んでいた。
しばらくラウルの講義を聞いていたら扉を叩かれて返事を返す。
「ラウル、すまん。お嬢様はおられるか?」
「なぁに?」
扉越しの問いにエヴは返答を返すと扉が開いた。
「失礼します。申し訳ありませんが、じゃじゃ馬の相手をお願いします」
「お姫様?」
「あれが姫なもんか。じゃじゃ馬で充分です」
「でも公爵令嬢なんだから」
部屋を出るエヴ嬢の後ろを杖をつきながらラウルが追いかける。
「俺も行きます。ほら、団長も」
「は?」
「剥がした効果を確認しなきゃ、ダリウス、おぶって。早く」
ダリウスはエヴに目線を向けて確認をしていた。
「私も見てみたい。どうなるのか気になる。団長、行きましょう」
気が重い。
しかし確かめたい気持ちもあるので、ため息をつきながら了承した。
声に振り返るとエヴがリーグの顔に被さって額の紙をまじまじと覗いていた。
「これ何?なんでおでこに紙を貼ってるの?文字がピカピカしてる。すごーい、きれー」
エヴがどんどん寄っていくのを抵抗に身をよじって逃げるが、痛みで呻いている。
「早く取ってやれ!」
「いたい!いたい!分かった!分かったから!」
ラウルはダリウスに首根っこ捕まれて引きずられていた。
「エヴ様!何でもないです!」
ダリウスがそう言うと頭を捕まれたラウルが急いで紙を剥がして、何のことか分からないヤンは首を捻ってやり取りを眺めていた。
「私のこと大好きって出てたー。私も好きだよ、ありがとうリーグ」
「ちき、しょぉぉ!ラウル!てめぇのせいだぁぁ!あだ!だだっ!いてぇぇぇ!」
怒りに飛び起きたリーグは痛みで揉んどりうって苦しみ、それに驚いたエヴが治療しようと寝台に飛び乗って顔を掴むのをヤンと私で羽交い締めに捕まえて部屋は大騒ぎだった。
「あんた達!何やってんだい!ラウル!世話が要らないなら呼ぶんじゃない!」
「おばちゃん、これは、」
どうやらラウルの世話人らしく騒ぎを聞き付けて部屋に飛び込んできた。
「怪我人の前でこんなに騒ぐなら出てお行き!お嬢様もだよ!ほらほら!とっとと出る!」
「わわ!ごめんなさぁい!」
箒を振り回して追いたてるので慌てて部屋から飛び出して通路に出た。
ほっと一息入れていると後ろで扉が開いた。
「ちょい待ちな、忘れもん」
ご婦人が箒を肩に担いでラウルへ杖を渡した。
「ラウル、あんた元気そうね?あとはこのお坊っちゃんの世話をするからあんたは一人で何でもやんな?」
「…はい、すいません」
「新しい世話人はあとで来るから迷惑かけないように大人しくするんだよ?わかったね?ったくもう!」
言うだけ言うと、ばんっと勢いよく閉まった。
「怒らせちゃったね、怖かった」
「騒ぎすぎましたね」
仕方ないとため息を吐いてエヴがラウルに向き合った。
「ラウル、これをお姫様から剥いだの。何か分かる?れ、」
「通路だ。やめろ。ラウルの部屋はどこだ?」
「こっちです」
慌ててエヴの顔を押さえてラウルの部屋に連れていく。
ラウルは術式が気になるようで入った途端、顔を両手に挟んで見せろと促していた。
舌を出して大きく口を開けた。
「んー、この国の一般的な恋愛成就の術式ですね。でも細かい紋様がおかしい。…見辛いなぁ。こっちに移せますか?」
紙を出して移し方を説明し、エヴは言う通りに紙の上に舌をぺったり引っ付け光ったと思ったら、紙に術式が移った。
二人とも当然と受け入れているがますます人族から離れていってる。
人族のエヴなら強化しか持ち得ないのに。
ラウルは紙の術式をじっと見つめ、しばらくすると顔をあげた。
「団長、これ俺の予想が当たりかも」
「は?」
「術式一つずつなら大したことないんだけど重ねづけしてかなり効果が出る。しかも他の呪符も混ぜてるから精神に混乱を招くはず。ほら、線が重なってるから滲んでるでしょう?」
「本当だぁ。ここよね?こっちはまた違う術式?」
「そうですよ。色が違うでしょう。重なって見えにくいけどこっちに繋がってます。濃いここが全体の核になります」
「どうやって何の術式か分かるの?全部覚えるの?」
「俺は覚えてますけど、注目するのは式に使われた植物や花の絵です。模様に意味があり、物によっては文字が隠されてますのでそれを見れば何の術式か分かります」
二人の談義にふとヤンへ目線を向けると、私の視線に渋い顔で首を振った。
その横でダリウスが首をかしげ不可解そうに眉をひそめる。
「さっぱりです。違いが分かりません」
「俺もだ」
「ああ、滲んでるってどこがだ?色は分かるか?」
私達も囲んで紙を覗いた。
「エヴ様が分かるようになったのは魔人化の影響でしょう。団長は目に魔力を流してもダメですか?」
言われた通り試してみるが式の複雑な線がまばらに光るだけだった。
ヤン達は黒い線の塊にしか見えないと言う。
「種族の特性の違いですね。素質がないと違いが目に映らない」
面白いとラウルは喜んでいた。
しばらくラウルの講義を聞いていたら扉を叩かれて返事を返す。
「ラウル、すまん。お嬢様はおられるか?」
「なぁに?」
扉越しの問いにエヴは返答を返すと扉が開いた。
「失礼します。申し訳ありませんが、じゃじゃ馬の相手をお願いします」
「お姫様?」
「あれが姫なもんか。じゃじゃ馬で充分です」
「でも公爵令嬢なんだから」
部屋を出るエヴ嬢の後ろを杖をつきながらラウルが追いかける。
「俺も行きます。ほら、団長も」
「は?」
「剥がした効果を確認しなきゃ、ダリウス、おぶって。早く」
ダリウスはエヴに目線を向けて確認をしていた。
「私も見てみたい。どうなるのか気になる。団長、行きましょう」
気が重い。
しかし確かめたい気持ちもあるので、ため息をつきながら了承した。
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