上 下
115 / 315

しおりを挟む
「ブラウンの親戚のやっている店に行くか」

興味を持ったエヴ嬢に元気のいいブラウンの母親の話をすると喜んで行きたがった。

「それならひとっ走りして家族に知らせてきます。二階に大部屋があるのでそちらの支度を。馬で追いかけるのでお先にどうぞ」

緊急時用に普段から数頭の馬に鞍をつけたまま陣に置いている。
それを使うのだろう。
渡した酒を預けてくると陣地に走り、私達はそぞろ歩きで街へ向かった。
いつもより薄暗い街中を歩く。

「お先に失礼しますっ」

後ろから馬を走らせたブラウンが通りすぎていった。
道中、明日の予定を聞かれたので後回しになっていた水辺の討伐と街道の整備だと話す。
力試しにウズウズするダリウスは水辺の討伐に参加することにした。

「俺もっすよね?」

「いや、どちらも午前のみの短時間だ。それにあちらの専門部隊と合同で人手は足りている。二日ほどを予定に、探索を兼ねた小規模な部隊を複数準備させた。狙うのは中型以降の小さな群れだけだ。お前は後日の大規模討伐の時に呼ぼうと思っていた」

それまで休みだと言うと、了解っすと大人しく引き下がった。
こいつの火力は大型用に温存したい。
水辺の討伐ではこいつ以上に動ける者はいない。
本人は身分と年齢を気にして遠慮しているが、専門部隊の仲間内からはエースとして重宝されている。
如何せん、陸上で弱すぎて働きぶりを見たことのない大多数からの評価は低い。
エドも陸上を主とするのでリーグの使い所はないと考えている。
それでも持久力と状況判断が上手く、この細身の割りに隊の中でよく動いている。

「街道の整備なら私も様子を見に行きたいのですが」

「ヤンもか?」

「ええ、旦那様からお話が出ますが専門外でして。今日のお話で他のことにも興味が出ました」

「私もヤンと参加したいです」

「討伐はないぞ?崩れた道の補修だ。明日は確認くらいだ」
「力仕事は好きです」

「そうか、ふふ、」

街道の視察に二人増える分には困らない。
むしろ心強い。

「え、俺は?エヴ様が行くなら俺も、」

「街道にスミスの同行は決定している。それで構わないなら」

「う、」

エドの報告でしつこく付きまとうスミスと一触即発に揉めていると聞いている。
仕事を増やして側に寄れないようにしたが、手を抜くことなく仕事を終えて戻ってくるそうだ。
能力が上がったとこちらとしては嬉しい限りだ。
間にエドが入ってどうにかしているらしい。
慣れないことをして困ってると、端的に事実のみが書かれた報告書なのに文章の端々から困惑した様子が伺えた。

「…く、くそぉ」

渋々と残りますと答えた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私は何人とヤれば解放されるんですか?

ヘロディア
恋愛
初恋の人を探して貴族に仕えることを選んだ主人公。しかし、彼女に与えられた仕事とは、貴族たちの夜中の相手だった…

【R18】散らされて

月島れいわ
恋愛
風邪を引いて寝ていた夜。 いきなり黒い袋を頭に被せられ四肢を拘束された。 抵抗する間もなく躰を開かされた鞠花。 絶望の果てに待っていたのは更なる絶望だった……

【R18】悪役令嬢を犯して罪を償わせ性奴隷にしたが、それは冤罪でヒロインが黒幕なので犯して改心させることにした。

白濁壺
恋愛
悪役令嬢であるベラロルカの数々の悪行の罪を償わせようとロミリオは単身公爵家にむかう。警備の目を潜り抜け、寝室に入ったロミリオはベラロルカを犯すが……。

【R18】貧しいメイドは、身も心も天才教授に支配される

さんかく ひかる
恋愛
王立大学のメイド、レナは、毎晩、天才教授、アーキス・トレボーの教授室に、コーヒーを届ける。 そして毎晩、教授からレッスンを受けるのであった……誰にも知られてはいけないレッスンを。 神の教えに背く、禁断のレッスンを。 R18です。長編『僕は彼女としたいだけ』のヒロインが書いた異世界恋愛小説を抜き出しました。 独立しているので、この話だけでも楽しめます。

前世変態学生が転生し美麗令嬢に~4人の王族兄弟に淫乱メス化させられる

KUMA
恋愛
変態学生の立花律は交通事故にあい気付くと幼女になっていた。 城からは逃げ出せず次々と自分の事が好きだと言う王太子と王子達の4人兄弟に襲われ続け次第に男だった律は女の子の快感にはまる。

伯爵令嬢のユリアは時間停止の魔法で凌辱される。【完結】

ちゃむにい
恋愛
その時ユリアは、ただ教室で座っていただけのはずだった。 「……っ!!?」 気がついた時には制服の着衣は乱れ、股から白い粘液がこぼれ落ち、体の奥に鈍く感じる違和感があった。 ※ムーンライトノベルズにも投稿しています。

【完結】竿師、娼婦に堕ちる月の夜

Lynx🐈‍⬛
恋愛
 首輪をされた女が幌ぐらい部屋のベッドの上で、裸にされていた。その女を囲む上半身裸の男達。  誰が閑静な洋館の1部屋で、この様な事が行われるのか、外からは思いもよらなかった。何故なら、この女は新しくメイドとしてやって来た女だったからだ。  主人の身の回りの世話や家事等の求人情報を紹介され来ただけである。  時は大正、西洋文化に侵食され始めた恋物語―。

巨根王宮騎士の妻となりまして

天災
恋愛
 巨根王宮騎士の妻となりまして

処理中です...