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会食
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「なんだこれは?」
水泳のあとの夕暮れ時。天幕に戻ると机に山盛りの手紙の束が乗っていた。
それを横目に抱えた甲冑をチェストに置いた。
「失礼します」
探索から戻ったエドがこちらが応える前に天幕へと入り、机にまた新しい束を乗せている。
いつもなら選別して重要なものしか回さない。
どういうことかと思い、不機嫌なエドを訝しげに見つめると態度を改めることなく机へと向かう。
「まだ仕分けが済んでいませんが、どれも目を通した方が良さそうです」
机の横に立ったまま宛名を確認して手早く並べ直した。
「番が見つかったと耳にされたお相手からの手紙が多いようです。ご結婚を考えるなら身辺整理が必要でしょう?…私の把握してない方も多くいらっしゃる」
睨まれて予想より多すぎる遊び相手に怒ってるようだ。
身から出た錆と大人しく首肯して返す。
番の見つからない人狼は気鬱か女狂いになると言うが私も女狂いの一歩手前だったのかもしれんと省みる。
「案件はこちらに」
少ない束を見せるので手を出して宛名を見ると王宮より数枚と実家からだった。
父からは現況を気遣う内容が一言書かれていた。
合わせて王宮の手紙にも目を通した。
これから起こると予想されるスタンビートに備え、在留の許可が降りたとある。
治まり次第、時期を見て功労者の四人と共に報償のため王宮へ向かうことと、その前に近日中に口頭での報告が要請された。
陛下の直筆と共に。
番から離れるのは嫌だが、その間に手がかかりそうな相手の整理に当てねばとも思う。
本当に身から出た錆だと猛省する。
「探索は?」
椅子に座って手紙を読む間にエドはもうひとつの大きなテーブルに地図を広げて待ち構えていた。
スタンビートを起こすと予想される魔素溜まりは数ヶ所。
他にも不安定な魔素溜まりが多数確認されたという。
「そこでひとつ妙なことがありました。昨日、スミスとラウルが確認した不安定な魔素溜まりが二ヵ所減っていました」
稀に増えることは合っても減ることはない。
あの二人の力量で確認したのに。
間違いかと問う気にもならない。
「異常だな」
頷くエドに明日スミスを連れてそこを見に行くと告げた。
水泳の予定は取り止めだ。
「エヴ嬢にラウルを連れていけるか確認する」
「急ぎ聞きに行かせます」
「私が直接尋ねる」
このあと夕飯なのですぐに会える。広場に沢山のテーブルを並べた食事処だ。上官と団員らのテーブルは分けられている。エヴ嬢は毎食、そこを利用し、行けば会えるということで私もそこに通っていた。魅了の放出と執着が落ち着いて今日はそちらを利用すると話していた。一緒に食事をしたくてわざわざ尋ねたのだ。天幕か城内なら割り込むつもりだった。
「ですよね。そう思いましたよ。ははは!」
エヴ嬢が絡むと揶揄するようなことを言うようになった。あの件があるので、このにやけた顔がとても腹が立つ。叱りつけたいが、今、小言を言っているとエヴ嬢と会いそびれるので放っておくことにした。その後、間引きする魔獣の討伐計画を簡潔に話し合うが時間が惜しくてそのまま食事処へと急ぐ。
「もう飯に行く。話しながらでいい」
「あ、はいっ」
エドを押し退けて天幕の垂れを上げると若い団員が目の前に立っていた。
「グリーブス団長、ちょうどそちらにお伺いするところでした。ジェラルド伯が今夜、城内の晩餐にぜひ参加してほしいとのことです」
「…は?」
水泳のあとの夕暮れ時。天幕に戻ると机に山盛りの手紙の束が乗っていた。
それを横目に抱えた甲冑をチェストに置いた。
「失礼します」
探索から戻ったエドがこちらが応える前に天幕へと入り、机にまた新しい束を乗せている。
いつもなら選別して重要なものしか回さない。
どういうことかと思い、不機嫌なエドを訝しげに見つめると態度を改めることなく机へと向かう。
「まだ仕分けが済んでいませんが、どれも目を通した方が良さそうです」
机の横に立ったまま宛名を確認して手早く並べ直した。
「番が見つかったと耳にされたお相手からの手紙が多いようです。ご結婚を考えるなら身辺整理が必要でしょう?…私の把握してない方も多くいらっしゃる」
睨まれて予想より多すぎる遊び相手に怒ってるようだ。
身から出た錆と大人しく首肯して返す。
番の見つからない人狼は気鬱か女狂いになると言うが私も女狂いの一歩手前だったのかもしれんと省みる。
「案件はこちらに」
少ない束を見せるので手を出して宛名を見ると王宮より数枚と実家からだった。
父からは現況を気遣う内容が一言書かれていた。
合わせて王宮の手紙にも目を通した。
これから起こると予想されるスタンビートに備え、在留の許可が降りたとある。
治まり次第、時期を見て功労者の四人と共に報償のため王宮へ向かうことと、その前に近日中に口頭での報告が要請された。
陛下の直筆と共に。
番から離れるのは嫌だが、その間に手がかかりそうな相手の整理に当てねばとも思う。
本当に身から出た錆だと猛省する。
「探索は?」
椅子に座って手紙を読む間にエドはもうひとつの大きなテーブルに地図を広げて待ち構えていた。
スタンビートを起こすと予想される魔素溜まりは数ヶ所。
他にも不安定な魔素溜まりが多数確認されたという。
「そこでひとつ妙なことがありました。昨日、スミスとラウルが確認した不安定な魔素溜まりが二ヵ所減っていました」
稀に増えることは合っても減ることはない。
あの二人の力量で確認したのに。
間違いかと問う気にもならない。
「異常だな」
頷くエドに明日スミスを連れてそこを見に行くと告げた。
水泳の予定は取り止めだ。
「エヴ嬢にラウルを連れていけるか確認する」
「急ぎ聞きに行かせます」
「私が直接尋ねる」
このあと夕飯なのですぐに会える。広場に沢山のテーブルを並べた食事処だ。上官と団員らのテーブルは分けられている。エヴ嬢は毎食、そこを利用し、行けば会えるということで私もそこに通っていた。魅了の放出と執着が落ち着いて今日はそちらを利用すると話していた。一緒に食事をしたくてわざわざ尋ねたのだ。天幕か城内なら割り込むつもりだった。
「ですよね。そう思いましたよ。ははは!」
エヴ嬢が絡むと揶揄するようなことを言うようになった。あの件があるので、このにやけた顔がとても腹が立つ。叱りつけたいが、今、小言を言っているとエヴ嬢と会いそびれるので放っておくことにした。その後、間引きする魔獣の討伐計画を簡潔に話し合うが時間が惜しくてそのまま食事処へと急ぐ。
「もう飯に行く。話しながらでいい」
「あ、はいっ」
エドを押し退けて天幕の垂れを上げると若い団員が目の前に立っていた。
「グリーブス団長、ちょうどそちらにお伺いするところでした。ジェラルド伯が今夜、城内の晩餐にぜひ参加してほしいとのことです」
「…は?」
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