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娼館
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「いや、怒ってはいない。お前のことだから汲み取りやすい顔と天幕越しに聞こえるでかい声にはちゃんと釘を刺したんだろうな?それなら許す。このまま上手く使えばいい」
「ういっす」
詰まってた鼻からすっと息が抜けた。
話が本当だと分かるが、微かに走った緊張感から漏れ聞いたこと以外にリーグへ漏らした奴がいると察した。
私としては天幕越しだろうと、口のひとつもつぐめない不用心さは処分してもいいが、こいつは不要と判断したなら名を言う。庇うのなら信用して放ってもいい。
一見、一匹狼を気取っているが、特定の人間関係を築かないだけで交流の幅はかなり広く人当たりのいい態度と固い口で色んな奴らと関わり、信用から他人の秘密を拾ってくる。
この耳の早さはエドやスミスからは得られない。
その器用さを気に入っているからこそ、こいつのことを許している。
もとい私が聞き出そうと捕まえる。
「ふ、」
それにここまで言い当てられると清々しい。
リーグのずけずけした物言いに笑いが出る。
「リーグ、番を手に入れたいのに障害が多くて困ってる。助けてくれ」
こちらも軽く返せば硬化した態度が緩んだ。
「どうすかね。日を跨いで強化をかけれるから実質、国内最強っすもんね。本人をメロメロにしなきゃ。あ、その顔。オレに押し付けないでくださいよ?あの三人に睨まれたらまた倒れそうっす」
人間関係を嫌うわりに回りを見て理解している。
今もどう使おうか考えていたのに先に注意されて、この調子じゃやらせても手を抜くだろうと諦めた。
どうでもいい軽口と適当な人当たりで繕った態度より鋭い観察眼でポンポンと忌憚なく喋るこいつは私としては便利なんだが、いかんせん本人にやる気がない。
「お前が番に無害なだけで充分役に立つ」
「立ちませんからね?オレは嫌っすよ?無理っすよ?相手はチビッ子なんだから優しく可愛がれば勝手に好きになってくれますって。毛皮を餌に今まで通り甘やかしまくればいいんすよ?」
楽観的なエドと思い込みの激しいスミスより現状を把握してる。
戦場の経験を積めば同じように応用できるだろう。
切れ味のよさに機嫌が良くなる。
「くく、わかった。他には何かあるか?変わったこととか気になったことだ」
「そうっすねー。最近の話題はエルフのラウルが人気とかですかね。背が低くて華奢だし。このまま禁欲が続くと揉める奴らが出そうっす」
「スミス以外にもいるのか」
「いますよー。残りの二人も似たようなもんです。モテモテっすよ。ぱっと見た限りスミス先輩の同類と下半身の半々っすね。最初は妬みやら反感やらあったけど、今はあの見た目と実力であの四人はアイドル扱いっす」
「うちの団だけか?」
「あー、あっちは神様扱いっすね。黒獅子と大型スタンビートを治めた英雄様っす。それにクレイン領で男色は流行ってないっす。お互いのかきっこくらいで、尻のやり方は知らねぇし考えたこともない感じでした。表向き忌避感を見せたけど、一部隠れてうちの団の奴らと遊び始めたっぽいっすよ。昨日、あっちの奴らとうちのが混じって数合わせに誘われたけど話し半分で切り上げました。無理強いって感じはないけど、目の色が違っててあんまり良くない感じっす。味占めて猿になるかも。うちのせいでクレイン領団に猿が増えたら困りませんか?」
「それは困るなぁ」
慣れてない奴らが本格的にすると怪我や病気の元だ。
拗れて暴力沙汰も困る。
だいたいうちがそういうのを広めたとなると外聞が悪い。
へテロのエドは興味がないのでそういう話は拾ってこないし、欲の溜まった下っぱがこそこそ隠れて始めたんだろうと察した。
事が大きくなる前に動きたい。
最短での対策を考える。
「中途半端な平和と禁欲で団が爛れそうっす。ぶっちゃけエヴ嬢の緩さと、団長とのイチャイチャに当てられて野郎共の下半身が元気なんすよ。どうにかしてください」
「わかった。宛はある」
「え、あるんすか?」
「近日中に避難していた住民が戻るそうだ。それ以外に討伐した魔獣の解体や資源の販売に専門の人手が増やす計画がある。以前より街が活気づく。ジェラルド伯に娼館の誘致を頼めばいい。元の店もあるだろうし、新しく開業の打診が来てるはずだ。確認次第、通達を出そう」
発散できれば落ち着くだろうと言えばリーグも納得して首肯した。
「今夜から風紀の取り締まりをさせる。当面はそれでよかろう」
「そうっすね。先に口が軽い奴らに話広めときます。少しは抑制になるし。てか、そろそろスミス先輩を上げないとヤバそうっす。団長、呼んでください」
立ち上がって湯とタオルの支度を始めた。
見ると遠泳を繰り返した二人は向こう岸で何か会話をしている。
「さすがオーガ。ダリウスさんの体力すごいっす。スミス先輩の方がへばってます」
ぱっと見た限りではどちらも平気そうだった。
「そうか?」
「そうっすよ。スミス先輩、さっきから泳ぐの遅くなってるっす。マジでかなり。団長が煽るからヤン達と一気に差をつけようと必死なんでしょ。さっき陸に上がるのもふらついてました」
「よく見てる」
「人間、溺れる時って静かなんすよ。見とかないとヤバいっす。スミス先輩、完璧主義で自分も他人も追い込むタイプだからこっちが気を付けないと無茶します」
そうかと納得して二人を呼ぶ。
確かに遅い。
あちらの岸から二人泳ぐとダリウスに置いてかれている。
「スミスと組ませたいんだが」
リーグのサポートがあればもっと動けると考えた。
「ういっす」
詰まってた鼻からすっと息が抜けた。
話が本当だと分かるが、微かに走った緊張感から漏れ聞いたこと以外にリーグへ漏らした奴がいると察した。
私としては天幕越しだろうと、口のひとつもつぐめない不用心さは処分してもいいが、こいつは不要と判断したなら名を言う。庇うのなら信用して放ってもいい。
一見、一匹狼を気取っているが、特定の人間関係を築かないだけで交流の幅はかなり広く人当たりのいい態度と固い口で色んな奴らと関わり、信用から他人の秘密を拾ってくる。
この耳の早さはエドやスミスからは得られない。
その器用さを気に入っているからこそ、こいつのことを許している。
もとい私が聞き出そうと捕まえる。
「ふ、」
それにここまで言い当てられると清々しい。
リーグのずけずけした物言いに笑いが出る。
「リーグ、番を手に入れたいのに障害が多くて困ってる。助けてくれ」
こちらも軽く返せば硬化した態度が緩んだ。
「どうすかね。日を跨いで強化をかけれるから実質、国内最強っすもんね。本人をメロメロにしなきゃ。あ、その顔。オレに押し付けないでくださいよ?あの三人に睨まれたらまた倒れそうっす」
人間関係を嫌うわりに回りを見て理解している。
今もどう使おうか考えていたのに先に注意されて、この調子じゃやらせても手を抜くだろうと諦めた。
どうでもいい軽口と適当な人当たりで繕った態度より鋭い観察眼でポンポンと忌憚なく喋るこいつは私としては便利なんだが、いかんせん本人にやる気がない。
「お前が番に無害なだけで充分役に立つ」
「立ちませんからね?オレは嫌っすよ?無理っすよ?相手はチビッ子なんだから優しく可愛がれば勝手に好きになってくれますって。毛皮を餌に今まで通り甘やかしまくればいいんすよ?」
楽観的なエドと思い込みの激しいスミスより現状を把握してる。
戦場の経験を積めば同じように応用できるだろう。
切れ味のよさに機嫌が良くなる。
「くく、わかった。他には何かあるか?変わったこととか気になったことだ」
「そうっすねー。最近の話題はエルフのラウルが人気とかですかね。背が低くて華奢だし。このまま禁欲が続くと揉める奴らが出そうっす」
「スミス以外にもいるのか」
「いますよー。残りの二人も似たようなもんです。モテモテっすよ。ぱっと見た限りスミス先輩の同類と下半身の半々っすね。最初は妬みやら反感やらあったけど、今はあの見た目と実力であの四人はアイドル扱いっす」
「うちの団だけか?」
「あー、あっちは神様扱いっすね。黒獅子と大型スタンビートを治めた英雄様っす。それにクレイン領で男色は流行ってないっす。お互いのかきっこくらいで、尻のやり方は知らねぇし考えたこともない感じでした。表向き忌避感を見せたけど、一部隠れてうちの団の奴らと遊び始めたっぽいっすよ。昨日、あっちの奴らとうちのが混じって数合わせに誘われたけど話し半分で切り上げました。無理強いって感じはないけど、目の色が違っててあんまり良くない感じっす。味占めて猿になるかも。うちのせいでクレイン領団に猿が増えたら困りませんか?」
「それは困るなぁ」
慣れてない奴らが本格的にすると怪我や病気の元だ。
拗れて暴力沙汰も困る。
だいたいうちがそういうのを広めたとなると外聞が悪い。
へテロのエドは興味がないのでそういう話は拾ってこないし、欲の溜まった下っぱがこそこそ隠れて始めたんだろうと察した。
事が大きくなる前に動きたい。
最短での対策を考える。
「中途半端な平和と禁欲で団が爛れそうっす。ぶっちゃけエヴ嬢の緩さと、団長とのイチャイチャに当てられて野郎共の下半身が元気なんすよ。どうにかしてください」
「わかった。宛はある」
「え、あるんすか?」
「近日中に避難していた住民が戻るそうだ。それ以外に討伐した魔獣の解体や資源の販売に専門の人手が増やす計画がある。以前より街が活気づく。ジェラルド伯に娼館の誘致を頼めばいい。元の店もあるだろうし、新しく開業の打診が来てるはずだ。確認次第、通達を出そう」
発散できれば落ち着くだろうと言えばリーグも納得して首肯した。
「今夜から風紀の取り締まりをさせる。当面はそれでよかろう」
「そうっすね。先に口が軽い奴らに話広めときます。少しは抑制になるし。てか、そろそろスミス先輩を上げないとヤバそうっす。団長、呼んでください」
立ち上がって湯とタオルの支度を始めた。
見ると遠泳を繰り返した二人は向こう岸で何か会話をしている。
「さすがオーガ。ダリウスさんの体力すごいっす。スミス先輩の方がへばってます」
ぱっと見た限りではどちらも平気そうだった。
「そうか?」
「そうっすよ。スミス先輩、さっきから泳ぐの遅くなってるっす。マジでかなり。団長が煽るからヤン達と一気に差をつけようと必死なんでしょ。さっき陸に上がるのもふらついてました」
「よく見てる」
「人間、溺れる時って静かなんすよ。見とかないとヤバいっす。スミス先輩、完璧主義で自分も他人も追い込むタイプだからこっちが気を付けないと無茶します」
そうかと納得して二人を呼ぶ。
確かに遅い。
あちらの岸から二人泳ぐとダリウスに置いてかれている。
「スミスと組ませたいんだが」
リーグのサポートがあればもっと動けると考えた。
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