37 / 315
成功
しおりを挟む
「むやみやたらと異性の身体に触れるものではありません」
「たかが尻尾と耳だ。肌とも言えない毛皮のな」
「いいえ、いけません」
「ちょっとだけ。ねえ、ダリウス?いいよね?ちょっとだけ。ふわふわで気持ちいいんだよ。ねぇ、だめ?お願い」
ヤンのすげない返答に矛先を変えて、他に仲間を作ろうとダリウスにねだり始めた。巻かれた褐色の腕に細い腕を二本絡めて下から顔を見上げていた。
中身が幼くても見かけは成熟した女性だ。
甘い声、美しい顏と魅力的な肢体。
子供っぽいおねだりにならず、紫の瞳が潤んで色っぽさが出ている。
初めて眉をしかめて、ちらっとダリウスはヤンへと視線を移す。
エヴの誘惑にダリウスの腕が緩んだ。
ラウルなら感情的にダメだと騒いだろう。
どうやら一番甘いのはダリウスらしい。
「好きなだけ触れ。そういう希望だっただろう」
腰かける椅子の前に進んで足元にどかっと胡座で座った。膝頭に額を乗せてやる。
「だめ?ヤン」
頭の側で手がうずうずと動いてる。
背中にヤンの怒気を感じるが、悔しかったら耳を生やせと内心舌を出す。
ぴこぴこと耳を揺らしてやると堪らなそうに呻いてる。
「ヤン、触りたいよぉ。だめぇ?触りたぁい」
柔らかく高い声音をあげてますます切なげに懇願する。
舌っ足らずの甘えた声でもじもじと体を揺らして、聞いてるだけであらぬ想像をして腹の下がずくずくとむず痒くなった。
私の名前と寝台の上でないことが残念だ。
だが、いずれ手に入る。
その為に手段は選ばん。
恥も外聞も捨てる。
「エヴ様、甘えませんよ」
「うう、」
ヤンの咎める声にエヴ嬢が怯む。
ここで引いたら負けだな。
そう何度も同じ餌を使えない。
一度ダメだと学習してしまったらもう食いつかない。
するっとエヴ嬢の膝に腕を乗せて抱き締めて、ゆったりと振り替える。
「いいじゃないか、ヤン。これは私への罰だ。ただの躾。そう思えばいい」
「躾など品のない物言いはお止めください。ご自身の立場をお忘れですか?しかもご令嬢にそんな接し方を。あり得ない」
驚きと苛立ちの混じった声にニヤニヤと笑った。
今までにないくらい顔を歪めている。
ここひと月近く共にいるが、初めて見た。
行儀の悪さを叱るが、目に嫉妬が見える。
「いいじゃないか。お前の主のご所望だぞ?それに番犬が増えるんだ。喜べ」
「人狼の、王都団団長ともあろう方が番犬などと。プライドはどうされたんです?」
「ふふ、番には従順な犬になるようだ。私もここまでとは知らなかった」
どんなに呆れられても好かれるためなら何でもする。
まずはこのお気に入り三人の中に潜り込んでやる。
そのためにもヤンの許しがいる。
こいつが三人のボスだから。
「ヤン、もうすぐ新月だ。私が役に立つと思わないか?なあ、エヴ嬢。あの色魔の撃退を一人でやったのをどう思ったか?」
「えー?アモルのこと?すごいと思いましたよぉ」
間延びした言葉で答え、つんつんと耳をつついて遊んでいる。喜ぶようにパタパタ揺らすと追いかけてくる。
本当に子供だ。
男が膝に抱きついてるのに、大きな獣耳にしか興味がない。
「そうか、うれしいな」
膝に抱きついたまま顔を見上げて好きなだけ触れ、と言うと目が輝き、そしてすぐにちらっとヤンの顔色を伺う。
「だめぇ?…ヤン」
「困ったな。なかなかヤンが許してくれない。エヴ嬢、どうしようか?」
内心もっとねだれと煽りつつ試すような物言いをしてエヴ嬢と同様に顔を向けて様子を伺えば、ヤンはため息をついて頷いた。
「…はぁ、なんて方だ。今回は負けました。次の新月はお世話になります」
次などと。
ずっとで構わないのに。
口にしたら、ヤンの機嫌を損ねると分かってるから黙って頷いて返す。
喜んで触るエヴ嬢を見て、ラウルが戻ったらうるさくなるとぼやく。
やはり感情的に口喧しいのはラウルか。
ヤンは躾に対して小言を言うだけで、結局はエヴの望みを優先する。
ダリウスは小言も何も言わない。
ただ黙って寄り添うだけだ。
エヴ嬢とヤンさえ許せばラウルは黙る。
ただいじけるだけ。
案の定会う度に睨み付けてくるが、こちらは笑って相手をした。
あれからエヴ嬢は好きな時に好きなだけ耳と尻尾を触るようになった。
団員らは目を白黒させていだが、番だからと言えば口をつぐむ。
「たかが尻尾と耳だ。肌とも言えない毛皮のな」
「いいえ、いけません」
「ちょっとだけ。ねえ、ダリウス?いいよね?ちょっとだけ。ふわふわで気持ちいいんだよ。ねぇ、だめ?お願い」
ヤンのすげない返答に矛先を変えて、他に仲間を作ろうとダリウスにねだり始めた。巻かれた褐色の腕に細い腕を二本絡めて下から顔を見上げていた。
中身が幼くても見かけは成熟した女性だ。
甘い声、美しい顏と魅力的な肢体。
子供っぽいおねだりにならず、紫の瞳が潤んで色っぽさが出ている。
初めて眉をしかめて、ちらっとダリウスはヤンへと視線を移す。
エヴの誘惑にダリウスの腕が緩んだ。
ラウルなら感情的にダメだと騒いだろう。
どうやら一番甘いのはダリウスらしい。
「好きなだけ触れ。そういう希望だっただろう」
腰かける椅子の前に進んで足元にどかっと胡座で座った。膝頭に額を乗せてやる。
「だめ?ヤン」
頭の側で手がうずうずと動いてる。
背中にヤンの怒気を感じるが、悔しかったら耳を生やせと内心舌を出す。
ぴこぴこと耳を揺らしてやると堪らなそうに呻いてる。
「ヤン、触りたいよぉ。だめぇ?触りたぁい」
柔らかく高い声音をあげてますます切なげに懇願する。
舌っ足らずの甘えた声でもじもじと体を揺らして、聞いてるだけであらぬ想像をして腹の下がずくずくとむず痒くなった。
私の名前と寝台の上でないことが残念だ。
だが、いずれ手に入る。
その為に手段は選ばん。
恥も外聞も捨てる。
「エヴ様、甘えませんよ」
「うう、」
ヤンの咎める声にエヴ嬢が怯む。
ここで引いたら負けだな。
そう何度も同じ餌を使えない。
一度ダメだと学習してしまったらもう食いつかない。
するっとエヴ嬢の膝に腕を乗せて抱き締めて、ゆったりと振り替える。
「いいじゃないか、ヤン。これは私への罰だ。ただの躾。そう思えばいい」
「躾など品のない物言いはお止めください。ご自身の立場をお忘れですか?しかもご令嬢にそんな接し方を。あり得ない」
驚きと苛立ちの混じった声にニヤニヤと笑った。
今までにないくらい顔を歪めている。
ここひと月近く共にいるが、初めて見た。
行儀の悪さを叱るが、目に嫉妬が見える。
「いいじゃないか。お前の主のご所望だぞ?それに番犬が増えるんだ。喜べ」
「人狼の、王都団団長ともあろう方が番犬などと。プライドはどうされたんです?」
「ふふ、番には従順な犬になるようだ。私もここまでとは知らなかった」
どんなに呆れられても好かれるためなら何でもする。
まずはこのお気に入り三人の中に潜り込んでやる。
そのためにもヤンの許しがいる。
こいつが三人のボスだから。
「ヤン、もうすぐ新月だ。私が役に立つと思わないか?なあ、エヴ嬢。あの色魔の撃退を一人でやったのをどう思ったか?」
「えー?アモルのこと?すごいと思いましたよぉ」
間延びした言葉で答え、つんつんと耳をつついて遊んでいる。喜ぶようにパタパタ揺らすと追いかけてくる。
本当に子供だ。
男が膝に抱きついてるのに、大きな獣耳にしか興味がない。
「そうか、うれしいな」
膝に抱きついたまま顔を見上げて好きなだけ触れ、と言うと目が輝き、そしてすぐにちらっとヤンの顔色を伺う。
「だめぇ?…ヤン」
「困ったな。なかなかヤンが許してくれない。エヴ嬢、どうしようか?」
内心もっとねだれと煽りつつ試すような物言いをしてエヴ嬢と同様に顔を向けて様子を伺えば、ヤンはため息をついて頷いた。
「…はぁ、なんて方だ。今回は負けました。次の新月はお世話になります」
次などと。
ずっとで構わないのに。
口にしたら、ヤンの機嫌を損ねると分かってるから黙って頷いて返す。
喜んで触るエヴ嬢を見て、ラウルが戻ったらうるさくなるとぼやく。
やはり感情的に口喧しいのはラウルか。
ヤンは躾に対して小言を言うだけで、結局はエヴの望みを優先する。
ダリウスは小言も何も言わない。
ただ黙って寄り添うだけだ。
エヴ嬢とヤンさえ許せばラウルは黙る。
ただいじけるだけ。
案の定会う度に睨み付けてくるが、こちらは笑って相手をした。
あれからエヴ嬢は好きな時に好きなだけ耳と尻尾を触るようになった。
団員らは目を白黒させていだが、番だからと言えば口をつぐむ。
0
お気に入りに追加
110
あなたにおすすめの小説
【R18】悪役令嬢を犯して罪を償わせ性奴隷にしたが、それは冤罪でヒロインが黒幕なので犯して改心させることにした。
白濁壺
恋愛
悪役令嬢であるベラロルカの数々の悪行の罪を償わせようとロミリオは単身公爵家にむかう。警備の目を潜り抜け、寝室に入ったロミリオはベラロルカを犯すが……。
【R18】貧しいメイドは、身も心も天才教授に支配される
さんかく ひかる
恋愛
王立大学のメイド、レナは、毎晩、天才教授、アーキス・トレボーの教授室に、コーヒーを届ける。
そして毎晩、教授からレッスンを受けるのであった……誰にも知られてはいけないレッスンを。
神の教えに背く、禁断のレッスンを。
R18です。長編『僕は彼女としたいだけ』のヒロインが書いた異世界恋愛小説を抜き出しました。
独立しているので、この話だけでも楽しめます。
前世変態学生が転生し美麗令嬢に~4人の王族兄弟に淫乱メス化させられる
KUMA
恋愛
変態学生の立花律は交通事故にあい気付くと幼女になっていた。
城からは逃げ出せず次々と自分の事が好きだと言う王太子と王子達の4人兄弟に襲われ続け次第に男だった律は女の子の快感にはまる。
伯爵令嬢のユリアは時間停止の魔法で凌辱される。【完結】
ちゃむにい
恋愛
その時ユリアは、ただ教室で座っていただけのはずだった。
「……っ!!?」
気がついた時には制服の着衣は乱れ、股から白い粘液がこぼれ落ち、体の奥に鈍く感じる違和感があった。
※ムーンライトノベルズにも投稿しています。
【完結】竿師、娼婦に堕ちる月の夜
Lynx🐈⬛
恋愛
首輪をされた女が幌ぐらい部屋のベッドの上で、裸にされていた。その女を囲む上半身裸の男達。
誰が閑静な洋館の1部屋で、この様な事が行われるのか、外からは思いもよらなかった。何故なら、この女は新しくメイドとしてやって来た女だったからだ。
主人の身の回りの世話や家事等の求人情報を紹介され来ただけである。
時は大正、西洋文化に侵食され始めた恋物語―。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる