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色ボケ

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「私よりも若い術師なのに」

「スミスさんもすぐに会得しますよ?オレ、教えますから」
「ああ、なんでも教えてくれ。なんでも知りたい」

がっと両手を掴んでギラギラと熱意が溢れていた。

「君についてももっと詳しく知りたい」

「え?オレですか?いやー、オレは大したことないですよ?ただ術式について知る機会が多かっただけです。ただの若造です」

分かりやすい愛想笑いで応えるとスミスがぐいぐいと距離を縮めていく。

「本当に、なんて謙虚なんだ。心の狭かった私は愚かな言動を繰り返していたと言うのに。そんな私に優しくて広い度量で受け入れてくれた。君は素晴らしい。尊敬に値する。笑顔もかわいい」

「ちょ、ちょっとスミスさん?そういうのいらないんで。なんか圧が強いですよっ」

「団長への問診の的確さ、好奇心から輝く瞳も素敵だった。本当に君はすごい」

「見すぎだし!手を離してください!近い、近いぃ!」

とうとうスミスの圧に仰け反って悲鳴をあげた。スミスはちょっと思い込みの激しいところがあるからラウルの良さを知って神のように讃えてる。

「…あーあ、アモル二号だ。ラウル、がんばれー」

エヴ嬢の声は張りがあってよく通る。私の聴力が上がったせいかもしれないが、ポツリと呟いたそれもしっかり聞こえた。

「エド、アイツは男色だったか?潔癖症のナルシストだとは思っていたが」

「さあ?趣味については知りません。スミスはエルフ特有のあの見た目で何かとモテますが、恋人がいたとは聞いたことがありませんねぇ」

首をかしげて応えた。
スミスは多少気難しく思い込みの激しいところはあっても仕事は真面目で良い部下だ。
だった、と過去形になるかもしれない。

「へえ、あの人がラウルにねぇ。意外な組み合わせになったな」

物珍しげに呟くヤンの言葉にダリウスはクッと笑って二人とも静観の姿勢だ。

「手ぇ離してくださいってば!そういうの無理だ!」

「迷惑はかけない。無理強いしない。でも気持ちが押さえられない。話だけでも聞いてほしい」

「こわっ!エヴ様!オレ、エヴ様が一番好きなんです!あんたは無理!」

離せと叫びながら、手を叩き落としてエヴ嬢の後ろへ逃げた。
「えぇ?私もラウルが好きだよ?」

「ありがとうございます!そういうことなんで!オレ、人生を全て主人にかけてるんで!」

「忠誠心と愛情は別物だ。愛情がほしい」

「スミスさんっ、あんたオレのこと嫌ってたじゃないか!?変わり身が早すぎて気持ち悪いんだよ!」

「あれは反省してる。君の良さを知らなくて馬鹿なことをした、」

「よっ、と」

「いっ!」

話の途中、エヴ嬢は軽い掛け声で目の前のスミスの足を払って、転んだスミスを私達の足元に転がした。

「団長、スミスさんはお返します。学ぶ気のない…何だっけ。変態?…色ボケ?…とりあえず、こういう変な人はいりません」

「だろうな。すまなかった」

「…このバカ。…はぁ」

謝ってやる気はありますと、スミスが必死で土下座をするのでラウルが許してくれた。
術式を学びたいという意思は本物のようだ。
念のために一言でも口説いたら返品、と約束をした。
スミスを見て私も気を付けようと思った。
近寄ったら似たようなことをしそうで自分が怖い。
あの匂いは反則だ。
くらくらする。
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