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人狼
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グリーブスは人狼の家系だ。
豪腕と繁殖。
人族の何倍もの筋力と運動神経。
性欲が多くて絶倫。
私もその通りに人狼としての体力と魔力を持つし、絶倫だ。
今まで好きに遊んだ。
そして人狼族の最大の特徴は番だ。
人生で一度だけ愛する人と出会ったら獣化出来るようになる。
その相手しか愛せない。
だから情愛の人狼と呼ばれている。
私は今だに獣化したことがない。
いつか会えると期待していたが三十路を過ぎた今は諦めていた。
国内外を遠征で周り探したのに。
通常の人狼なら10才から20才の間で見つける。
ここまで遅い者はそうはいない。
ちらっとエヴ嬢へと視線を向けた。
エヴ嬢の姿形は美しい。
性格も明け透けで幼いが無邪気さは好ましい。
この豪腕も頼もしいと気に入っている。
だが、どんなに気に入っても人狼にとっての番とは違う。
性別も身分も関係ない。
どんな姿形だろうが性格が破綻していようが、一目見て番だと本能が言えば逆らえない存在なのだ。
獣化してその場で拐って食う。
それがグリーブスにとって当然のこと。
これほど自分から欲した相手は初めてだ。
だが、獣化しない。
その疑念が私の相手ではないのだと自制する。
欲しくてたまらないが病気で寝込んどるところを押し倒したいと考える自分の性欲にも呆れる。
間違いを起こしたくない。
嫌われたくない。
そう思ってエヴ嬢から目をそらした。
汁物を作ってエヴ嬢を起こす。
「食べられるか?」
エヴ嬢がゆっくり仰向けに寝転ぶ。
「無理です。ごめんなさい」
食べられないなら仕方ないと答えるとまた、すいませんとか細い声で謝る。
静かにポロポロ涙を流す。
「泣くな」
「すいません。何でか出ます。そんな泣くほどキツイ訳でもないのに」
マントで顔を拭っている。
「熱のせいだ。そういう時もある」
「はぁい。…ぐす、」
すんすんと小さく。
マントで顔を隠して泣いた。
額に手を乗せると変わらず熱い。
顔にかかった髪を後ろへと撫で付ける。
そうやったから熱が下がるわけでもないのにいつまでもしていた。
「団長」
「ん?なん、だ?」
少し下げたマントから紫の目と視線がかち合う。
目が合っただけなのに、ぞわっと総毛立ち全身が固まる。
何もないよう受け答えを返すが、声がうわずった。
「やっぱりキツイです。泣くほど」
「そうか」
「迷惑かけたこともごめんなさい」
「迷惑などない」
「…ありがとうございます」
しょぼんと悲しそうに眉が下がる。
「嘘じゃないからな。気を使った訳じゃない」
「本当に?」
「ああ、本当だ。気にしなくていいから寝なさい。もう少し熱が落ち着いたら食事も出来る」
「はい」
静かにまた目をつぶって横を向いた。
黒猫が鳴きながらエヴ嬢の首もとへ。
丸まってぐるぐると喉を鳴らした。
「ヒムド、きもちいい。ふわふわ」
マントから腕を出して猫を抱き寄せている。
白い肩と二の腕にまた見とれてしまい、慌てて目をそらした。
豪腕と繁殖。
人族の何倍もの筋力と運動神経。
性欲が多くて絶倫。
私もその通りに人狼としての体力と魔力を持つし、絶倫だ。
今まで好きに遊んだ。
そして人狼族の最大の特徴は番だ。
人生で一度だけ愛する人と出会ったら獣化出来るようになる。
その相手しか愛せない。
だから情愛の人狼と呼ばれている。
私は今だに獣化したことがない。
いつか会えると期待していたが三十路を過ぎた今は諦めていた。
国内外を遠征で周り探したのに。
通常の人狼なら10才から20才の間で見つける。
ここまで遅い者はそうはいない。
ちらっとエヴ嬢へと視線を向けた。
エヴ嬢の姿形は美しい。
性格も明け透けで幼いが無邪気さは好ましい。
この豪腕も頼もしいと気に入っている。
だが、どんなに気に入っても人狼にとっての番とは違う。
性別も身分も関係ない。
どんな姿形だろうが性格が破綻していようが、一目見て番だと本能が言えば逆らえない存在なのだ。
獣化してその場で拐って食う。
それがグリーブスにとって当然のこと。
これほど自分から欲した相手は初めてだ。
だが、獣化しない。
その疑念が私の相手ではないのだと自制する。
欲しくてたまらないが病気で寝込んどるところを押し倒したいと考える自分の性欲にも呆れる。
間違いを起こしたくない。
嫌われたくない。
そう思ってエヴ嬢から目をそらした。
汁物を作ってエヴ嬢を起こす。
「食べられるか?」
エヴ嬢がゆっくり仰向けに寝転ぶ。
「無理です。ごめんなさい」
食べられないなら仕方ないと答えるとまた、すいませんとか細い声で謝る。
静かにポロポロ涙を流す。
「泣くな」
「すいません。何でか出ます。そんな泣くほどキツイ訳でもないのに」
マントで顔を拭っている。
「熱のせいだ。そういう時もある」
「はぁい。…ぐす、」
すんすんと小さく。
マントで顔を隠して泣いた。
額に手を乗せると変わらず熱い。
顔にかかった髪を後ろへと撫で付ける。
そうやったから熱が下がるわけでもないのにいつまでもしていた。
「団長」
「ん?なん、だ?」
少し下げたマントから紫の目と視線がかち合う。
目が合っただけなのに、ぞわっと総毛立ち全身が固まる。
何もないよう受け答えを返すが、声がうわずった。
「やっぱりキツイです。泣くほど」
「そうか」
「迷惑かけたこともごめんなさい」
「迷惑などない」
「…ありがとうございます」
しょぼんと悲しそうに眉が下がる。
「嘘じゃないからな。気を使った訳じゃない」
「本当に?」
「ああ、本当だ。気にしなくていいから寝なさい。もう少し熱が落ち着いたら食事も出来る」
「はい」
静かにまた目をつぶって横を向いた。
黒猫が鳴きながらエヴ嬢の首もとへ。
丸まってぐるぐると喉を鳴らした。
「ヒムド、きもちいい。ふわふわ」
マントから腕を出して猫を抱き寄せている。
白い肩と二の腕にまた見とれてしまい、慌てて目をそらした。
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