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襲来
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クレイン辺境領にて上位魔人の襲来。
知らせが届いたのは襲来の早朝。
いくつも鳥が飛び交い、はっきりとした詳細が届いたのは三日たった頃だった。クレインから王宮に三日かけて早馬で届いた。
早馬の知らせから準備に三日かけて歩兵を含めた進軍には到着には五日かかる。鳥の知らせからもうすでに六日過ぎた。
その間にクレイン辺境領は上位魔人の蹂躙に苦しんでいるはずだ。
急がねばと騎馬隊のみの編成を率いて馬を駆ける。
鳥と早馬で知らされた魔人の特徴はウェーブのかかった長い黒髪と闇のような黒い肌。
金の瞳と頭頂に伸びる3本の角。
人よりも一回りも二回りも大きな体格と隆々とした筋肉。
その容姿の特徴は上位魔人の黒獅子だと予想され、圧倒的な暴力と破壊を好む災害と国内外から最も危険視される脅威の一つだった。
襲われたクレイン辺境領は死地へと変貌したと誰しもが絶望視していた。
私達が向かうのはその地だ。
戦うことが難しくとも一人でも多く救済せねばと駆け足でかの地を目指す。
そのために団の先頭を走る私は王都兵団の団長を勤めるカリッド・グリーブス。
鳥の知らせから六日目、やっと半ばまで来た。
小休止だと団員らの足を止めて馬と人間の休息を挟む。
先へ急がねばと思うが馬と人間を潰しては元も子もない。
そうしながら最低限の休みを挟みすぐに馬を走らせた。
途中、向こうからクレインの旗を掲げた早馬の使者が飛び込んで耳を疑うこと告げた。
魔人の討伐完了と。
喜びの涙に濡れる若い使者の顔を見れば到底嘘や間違いとは思えず。
クレイン辺境領にはそれほどの武力が備わっていたのかと驚きに詳細を尋ねると使者は高々と宣言した。
ジェラルド・クレイン辺境伯が娘のエヴ・クレイン嬢が討ち取ったのだと。
聞き間違いかと思いご子息かと尋ねるとご息女だと答える。
私達は開いた口が塞がらなかった。
「ご令嬢がか?一介の?」
ジェラルド・クレイン辺境伯と嫡男のご子息なら武勇に優れていることで有名だ。
ご息女については本当にいるかどうかも怪しいほど何の話も聞いたことがなかった。
「はい、お嬢様は尋常でないほどの魔力を持ち旦那様並みの身体強化術をお使いになります。それにより五日五晩の死闘を繰り広げ撃ち破るに至りました」
「お一人でか?」
「いえ、もちろん多くの犠牲はございました。詳しくは現地にてお尋ねください。申し訳ありませんが、自分は王宮へ詳細をお届けせねばなりません」
胸当てに手を添えて手紙の存在を示す。
「引き留めてすまない。先を急がれよ」
「それでは」
笑顔で馬を駆ける若者の背中を見送り、隣に控えていた副団長のエドが私を振り返る。
「今の話は一体、」
白髪の多くなった茶色い髪を片手でかきあげて信じられないとヘーゼルの瞳がこぼれそうなほど見開いていた。
エドの仕草につられて私もアッシュの髪を同じようにかく。
「さあな」
「黒獅子ではなかった、ということですか?」
「かもしれん。何にしろ犠牲者が出たと言うなら現地は混乱しているだろう。当初の予定通り救援に向かう。それに戦地へ向かえという王命のみ。帰れる条件の記載はない」
今の話が聞こえた団員らにもさざ波のような当惑が広がっている。
「行ってみればいい。それで真実が分かる」
先程、使命感から早かった足取りとは違ったが、急ぎ戦地とされた場所へと走った。
知らせが届いたのは襲来の早朝。
いくつも鳥が飛び交い、はっきりとした詳細が届いたのは三日たった頃だった。クレインから王宮に三日かけて早馬で届いた。
早馬の知らせから準備に三日かけて歩兵を含めた進軍には到着には五日かかる。鳥の知らせからもうすでに六日過ぎた。
その間にクレイン辺境領は上位魔人の蹂躙に苦しんでいるはずだ。
急がねばと騎馬隊のみの編成を率いて馬を駆ける。
鳥と早馬で知らされた魔人の特徴はウェーブのかかった長い黒髪と闇のような黒い肌。
金の瞳と頭頂に伸びる3本の角。
人よりも一回りも二回りも大きな体格と隆々とした筋肉。
その容姿の特徴は上位魔人の黒獅子だと予想され、圧倒的な暴力と破壊を好む災害と国内外から最も危険視される脅威の一つだった。
襲われたクレイン辺境領は死地へと変貌したと誰しもが絶望視していた。
私達が向かうのはその地だ。
戦うことが難しくとも一人でも多く救済せねばと駆け足でかの地を目指す。
そのために団の先頭を走る私は王都兵団の団長を勤めるカリッド・グリーブス。
鳥の知らせから六日目、やっと半ばまで来た。
小休止だと団員らの足を止めて馬と人間の休息を挟む。
先へ急がねばと思うが馬と人間を潰しては元も子もない。
そうしながら最低限の休みを挟みすぐに馬を走らせた。
途中、向こうからクレインの旗を掲げた早馬の使者が飛び込んで耳を疑うこと告げた。
魔人の討伐完了と。
喜びの涙に濡れる若い使者の顔を見れば到底嘘や間違いとは思えず。
クレイン辺境領にはそれほどの武力が備わっていたのかと驚きに詳細を尋ねると使者は高々と宣言した。
ジェラルド・クレイン辺境伯が娘のエヴ・クレイン嬢が討ち取ったのだと。
聞き間違いかと思いご子息かと尋ねるとご息女だと答える。
私達は開いた口が塞がらなかった。
「ご令嬢がか?一介の?」
ジェラルド・クレイン辺境伯と嫡男のご子息なら武勇に優れていることで有名だ。
ご息女については本当にいるかどうかも怪しいほど何の話も聞いたことがなかった。
「はい、お嬢様は尋常でないほどの魔力を持ち旦那様並みの身体強化術をお使いになります。それにより五日五晩の死闘を繰り広げ撃ち破るに至りました」
「お一人でか?」
「いえ、もちろん多くの犠牲はございました。詳しくは現地にてお尋ねください。申し訳ありませんが、自分は王宮へ詳細をお届けせねばなりません」
胸当てに手を添えて手紙の存在を示す。
「引き留めてすまない。先を急がれよ」
「それでは」
笑顔で馬を駆ける若者の背中を見送り、隣に控えていた副団長のエドが私を振り返る。
「今の話は一体、」
白髪の多くなった茶色い髪を片手でかきあげて信じられないとヘーゼルの瞳がこぼれそうなほど見開いていた。
エドの仕草につられて私もアッシュの髪を同じようにかく。
「さあな」
「黒獅子ではなかった、ということですか?」
「かもしれん。何にしろ犠牲者が出たと言うなら現地は混乱しているだろう。当初の予定通り救援に向かう。それに戦地へ向かえという王命のみ。帰れる条件の記載はない」
今の話が聞こえた団員らにもさざ波のような当惑が広がっている。
「行ってみればいい。それで真実が分かる」
先程、使命感から早かった足取りとは違ったが、急ぎ戦地とされた場所へと走った。
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