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タイロンの復讐
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こいつの小屋。
昼寝に来てダラダラしていたら、あいつが花の苗を大量に抱えて戻ってきた。
「あー、マタ来てル。サボりダろ?」
へらへら笑いながら俺を暇人とからかう。
最近、言葉遣いと顔だけじゃなく覆面の位置も緩い。
傷が半分見えてる。
でもこいつはもう気にしてない。
「ばーか、夜勤だよ。死ね」
シーツを被せた藁の寝床に寝転んでる。
起きるのが面倒だから中指を立てて見せびらかした。
「自分の部屋で寝ろヨ?」
「ここが静かでいい」
外の草木の匂いと音が気持ちいい。
ほぼ毎日入り浸りだ。
「面白いじいさんだったな」
「貴族ダよ。その言い方ヤメロ」
「いいんじゃね?」
「良くナイ」
「はは、あのじいさんなら怒んねぇよ」
首をひねってそれ以上黙った。
納得してやがる。
そのまま視線は壁に掛けたキャンバスと絵姿に吸い込まれてその二つを眺めている。
はは、目を細めて幸せそうに笑ってやがる。
そうしていると、そのキャンバスの顔と似てるぞ。
ユニコーン娘は見る目ある。
こいつはデカくて厳つくなったが、笑うと良い顔するんだ。
静かなこの小屋も自然の微かな音や匂いも好きだ。
一番はキャンバスと絵姿を眺めるこいつがお気に入りだ。
無くしたもんを、なんか守れた気がする。
お前はそうやってへらへらしとけ。
この空気が心地よくてまた昼寝をした。
あのじいさんがもう帰ってひと月。
面白かった。
次の日は本当にお互い利益の出る新しい事業や経済効果の高い提案をバンバン出して皆の機嫌を取っていた。
メランプス王子は急な手のひら返しに怪しんで微妙な顔をしていたが、フィンレー王子は総合してかなりの利益が出ているのでよしとされた。
最後は王家に嫁いだ二人のご令嬢の安寧。
そして我が国への祝福と賛辞を述べて、この老体が役に立つのなら何を置いても必ずや駆けつけましょうと芝居口調。
国に利益をもたらした頼もしい御仁と多くの者が喜ぶが、人に寄っちゃ恐ろしい脅し。
ちらほら青ざめた奴がいたから分かりやすかった。
詰まらんことをしてる奴は片付けて帰るわいとじいさんが笑っていたし。
合間でじいさんと気さくに話すが、顔色悪いのぅと不摂生を叱られた。
「嫌なことはしないに限る」
具合悪くなるほどするなと言われた。
「我慢はよくない。体に悪いからな」
話ぶりからシモに思えた。
意外とスケベじじいなのかと驚くと見透かされて睨まれた。
「話をしてやる。昔、私はとあるご令嬢を守りそびれた」
渋く顔を歪める。
「それ以来、考えは改めた。虫は払うに限る。徹底的に。羽と足をむしって最後にはらわたを出す。我慢はよくない」
逆に無理だと思うなら止めとけと。
「へぇ、……そうですねぇ。自分は同感です」
にぃ、と口角をあげるとじいさんも目を細めて笑った。
「やはりお前は同類。逆に彼は人の良さそうな青年だからな」
お前より気に入ったと憎まれ口のじいさん。
俺もアンタよりあいつがいいと答えると満足げだ。
気が向けば国へ遊びに来いと誘われた。
そうなるとあちらへ行く際の護衛に選ばれそうだな。
昼寝に来てダラダラしていたら、あいつが花の苗を大量に抱えて戻ってきた。
「あー、マタ来てル。サボりダろ?」
へらへら笑いながら俺を暇人とからかう。
最近、言葉遣いと顔だけじゃなく覆面の位置も緩い。
傷が半分見えてる。
でもこいつはもう気にしてない。
「ばーか、夜勤だよ。死ね」
シーツを被せた藁の寝床に寝転んでる。
起きるのが面倒だから中指を立てて見せびらかした。
「自分の部屋で寝ろヨ?」
「ここが静かでいい」
外の草木の匂いと音が気持ちいい。
ほぼ毎日入り浸りだ。
「面白いじいさんだったな」
「貴族ダよ。その言い方ヤメロ」
「いいんじゃね?」
「良くナイ」
「はは、あのじいさんなら怒んねぇよ」
首をひねってそれ以上黙った。
納得してやがる。
そのまま視線は壁に掛けたキャンバスと絵姿に吸い込まれてその二つを眺めている。
はは、目を細めて幸せそうに笑ってやがる。
そうしていると、そのキャンバスの顔と似てるぞ。
ユニコーン娘は見る目ある。
こいつはデカくて厳つくなったが、笑うと良い顔するんだ。
静かなこの小屋も自然の微かな音や匂いも好きだ。
一番はキャンバスと絵姿を眺めるこいつがお気に入りだ。
無くしたもんを、なんか守れた気がする。
お前はそうやってへらへらしとけ。
この空気が心地よくてまた昼寝をした。
あのじいさんがもう帰ってひと月。
面白かった。
次の日は本当にお互い利益の出る新しい事業や経済効果の高い提案をバンバン出して皆の機嫌を取っていた。
メランプス王子は急な手のひら返しに怪しんで微妙な顔をしていたが、フィンレー王子は総合してかなりの利益が出ているのでよしとされた。
最後は王家に嫁いだ二人のご令嬢の安寧。
そして我が国への祝福と賛辞を述べて、この老体が役に立つのなら何を置いても必ずや駆けつけましょうと芝居口調。
国に利益をもたらした頼もしい御仁と多くの者が喜ぶが、人に寄っちゃ恐ろしい脅し。
ちらほら青ざめた奴がいたから分かりやすかった。
詰まらんことをしてる奴は片付けて帰るわいとじいさんが笑っていたし。
合間でじいさんと気さくに話すが、顔色悪いのぅと不摂生を叱られた。
「嫌なことはしないに限る」
具合悪くなるほどするなと言われた。
「我慢はよくない。体に悪いからな」
話ぶりからシモに思えた。
意外とスケベじじいなのかと驚くと見透かされて睨まれた。
「話をしてやる。昔、私はとあるご令嬢を守りそびれた」
渋く顔を歪める。
「それ以来、考えは改めた。虫は払うに限る。徹底的に。羽と足をむしって最後にはらわたを出す。我慢はよくない」
逆に無理だと思うなら止めとけと。
「へぇ、……そうですねぇ。自分は同感です」
にぃ、と口角をあげるとじいさんも目を細めて笑った。
「やはりお前は同類。逆に彼は人の良さそうな青年だからな」
お前より気に入ったと憎まれ口のじいさん。
俺もアンタよりあいつがいいと答えると満足げだ。
気が向けば国へ遊びに来いと誘われた。
そうなるとあちらへ行く際の護衛に選ばれそうだな。
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