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第一章 rose.
【 rose.04 】
しおりを挟む「――え? サン ヴァロンタン?」
あまりの寒さに体を震わせながら、あてどもなくブラブラしていたジャンだったが、とある花屋で立ち止まっていた。
花を睨むようにずっと見つめる、十代前半くらいの少年が気になったからだ。
一度は通り過ぎてみはしたがやはり気になり、数歩バックすれば少年が真っ赤な花を睨んでいるのがわかる。
「ねぇ君、その花に何か恨みでもあんの?」
軽い気持ちで声をかければ。まるで母親に悪いことでも見付かったみたいな顔をして逃げるように走り出したからジャンは思わず追いかけた。
「おーい少年、なんで逃げんだよー?」
「うっわ! なんだよアンタ! なんでついてくんだよ!」
「え? なんでだろ?」
「知るかよ!」
なんの身にもならない言い合いをしながら街中を走り続け先に息が切れたのは少年だった。
肩で息をしながらゆっくり歩き出すと一度深呼吸し後ろのジャンを睨む。
「……にーちゃん、なんでそんなピンピンしてんだよ」
あれだけ走ったと言うのに疲れた様子も見せずジャンは飄々としていた。
「んん? そう? これでも腹が減って死にそーなんだけど?」
と言って腹を押さえるジャン、すると確かにグゥ~なんて言う間抜けな腹の音がなった。
その様子に深いため息をついて少年はめんどくさそうに見上げる。
「そんなに気になる?」
「気になるね。あの花になんか恨みでもあんの?」
それを聞いて「なんでそうなるかな」と言いながら少年は歩き出した。
「どこ行くんだよ?」
その少年に、やはりジャンはついていく。
「いいから来なよ。ちゃんと見ればなんでかわかるから」
そう言われて最初の花屋に戻っては来たがその真っ赤な花をちゃんと見てもジャンにはピンとこなかった。
「まさかとは思うけど……今日なんの日か知らないの?」
ついこの間まで浮き世から離れていたジャンには今日の日付さえサッパリわからないので、と言うか気にしてさえもいなかったので首をかしげるのも当然だった。
そしてそれを見て少年が更に深い溜め息をつくのも当然の反応だと言える。
「あのねぇ……今日は」
そして冒頭のあの言葉だ。
「え? サン ヴァロンタン?」
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